第一四幕 ―光の祠―
「その力、伸ばしてみる気にはならないか?」
セフィルの言葉にトーヤは首をかしげた。
一体何故こうなったのか。
トーヤとセフィルは、うす暗い森の中を歩いていた。
「セフィルさーん、一体どこに行くの?」
「すぐにわかる。」
きっぱりと言ったセフィルはどうやら答える気はないらしい。
とりあえず彼についていけばどうにかなるだろうと、トーヤは黙ってセフィルの背を追った。
ついた場所は薄暗い森のおくの、なにやらおどろおどろしい雰囲気を放つ祠。
「ここだ。」
セフィルの言葉にトーヤは改めて祠を見る。
「なんか怪しい祠だね。」
「事実怪しい祠だ。」
「え、えぇーー! そ、そんなところいくの?」
「……なら、何故僕たちはここまで来たんだ?」
「……俺の力を伸ばす。だっけ?」
トーヤの言葉にセフィルは頷いた。
「そうだ」
「……で、何でこんな怪しい祠に?」
「それは……」
セフィルが理由を言おうとしたそのとき。
『ちょっと! 怪しいなんて失礼ね!』
どこからか若い女の声が聞こえた。
「………でた。」
セフィルが顔をしかめる。
『あら、あなたはセフィルじゃない!』
久しぶり!とどこか上機嫌な声とともに、一人の女性が姿を現した。
長い金色の髪に、ところどころ金の装飾の施された真っ白なドレス。シンプルなドレスだが、そのシンプルさが彼女の美しさを引き立てていた。
『元気? “フルム”はどう? げんきしてた??』
「相変わらずだよ。 それより、こいつに適正があるか調べてみてはくれないだろうか?」
『ああ、もう一人いたわね。 顔をよく見せて」
女性はトーヤの近くに寄ってきてやがて、目を丸くした。
『アークがちっさくなった……?』
「馬鹿をいうな!」
女性のつぶやきに、間髪要れずにセフィルが突っ込む。
「えっと、アークは俺の兄だけど……」
『へぇ、あんたあいつの弟なの? 道理で』
女性はやっと合点がいったというように微笑み、本当に似ているわねとトーヤの顔をぶしつけに見つめていた。
ときおり、少し子供っぽいとか、よくみたら弟君のほうが、とかつぶやいている。
どうやら、脳内でトーヤとアークの間違い探しを繰り広げているらしい
すっかり当初の目的を忘れている女性を見てセフィルは深くため息をついた。
「アークと比べてみるのはかまわないが、その前にそいつに適正があるのか調べてほしいんだが?」
『ああ、ごめんなさい。忘れていたわ』
女性は改めてトーヤに向き直ると自己紹介をした。
『私はミハル。ここの祠を守る精霊よ。』
「精霊!?」
今度はトーヤが女性をまじまじと見る番だった。
『あら? 私の美しさに見とれた?』
「あ、いや、精霊っていっても人とまったく変わらないなと思って」
『……そこはうそでも、はいって答えることころよ」
おだてる、ということをしないトーヤにミハルは不満げに口をとがらした。
『まあ、子供だし仕方ないか。 今日だけは特別に、許して……ア・ゲ・ル」
語尾にハートマークをつけて、ミハルはトーヤにいったが……
「……ああ、はい?どうも??」
色気は通じなかった。