断章―“父”と“息子”―
トーヤ出てきません
この話は飛ばしても、大丈夫です
トーヤが帰る背を見送った後、フィアは一人医務室に入った。
「セフィ、大事ないか?」
フィアの言葉にセフィルは無言でうなずいた。
「はい。おかげさまで」
「お前が、自分の魔力の制御ができなくなるなんて……なにかあったのか?」
「いえ、……でも、心当たりはあります。」
「心当たり、とは?」
フィアは顔をしかめる
だが、セフィルはかまわず、フィアに問う
「トーヤをどう思いましたか?」
「どうって、まっすぐな子だな。素直に好感が持てた」
「そうですか、やっぱり……」
つぶやき、セフィルは考え込むようにうつむいた。
「おいおい、セフィ、いったい何なんだ? 私にもわかるように話してほしいのだが。」
「フィアさん、トーヤは火の民ですよ。」
「それはわかっている。あのアークの弟なのだから。」
「……では、何故“好感が持てた”のです?」
「……!」
フィアははっとした。
セフィルは続ける。
「フィアさんは氷の魔女の末裔。その性質から、火を操る魔獣―――フェニックスと相性の良い火の民とは相性が悪い。 初対面の時から、お互いにあまりいい印象を持っていなかったでしょう?大戦中でも貴方方は毎日のように衝突していた。」
「だが、例外があってもいいのではないか?」
「……ですが、僕の力の暴走のことを踏まえると、トーヤには火の民の……炎の力と共に、何か別の力があると考えることが妥当です。」
「そう、か。」
「明日、調べてみます。」
「無理はするなよ」
クシャリとフィアはセフィルの頭をなでる。
「子供扱いしないでください。」
「幼いお前を拾ってここまで育てた私からすれば、お前はまだまだ子供だよ」
そう笑んで部屋を後にするフィアの背を、じっとセフィルは見つめていた。