第九幕 ―ラメド―
「おい!お前らさっさと起きろ!」
琳―――セフィルの声で起こされたコウハは始めてみた彼の軍服姿に、小さく目を見開く。
「……長い髪の毛はヅラじゃないのか?」
その言葉にセフィルは顔をしかめた。
そう。セフィルはやや青みがかった、長い黒髪を高い位置で一纏めにして、青いリボンで結んでいた。
「悪かったな。」
「……切れば、女の子に間違えられる可能性は低くなるのに。」
トーヤの言葉にキッとセフィルは彼をにらみつけた。
「願をかけているんだ! 放っておけ!!」
セフィルに案内され、三人は広間へ向かった。
するとそこには……
「ようこそ、帝都へ。」
笑顔で手を差し出し、握手をしようとするフィアール。
うしろにはラメドメンバー全員がそろっていた。
「フィアやセフィルから、ある程度の事は聞いた。 とりあえず、自己紹介を使用じゃないか。」
そういったのは昨日会った黒髪の青年レント。
「昨日も言ったが、レント=サフィラン。一応29だ。」
彼の年齢に三人は驚いた。二十歳くらいだと思っていたからだ。
そんな彼らには眼もくれず、レントは他のメンバーに目配せした。
「じゃあ、まずはワシから……ワシはラメドの古参、ジーモン=ベッカートだ。 今年で66じゃが、まだ若い者には負けんぞ。」
そう言ったのは威厳のありそうな初老の男。厳しい外見とは裏腹に話しやすそうな人物のようだ。
「私はサラ=フロンよ。27歳よろしくね。」
笑顔で手を差出してきたのは、この中で唯一の女性だ。
薄桃色の髪を綺麗に結い上げた彼女に、コウハは一目散に反応した。
「よろしくお願いします! コウハって言います。 良かったらこの後お茶でも……って、ぐわ!」
バキッと彼の頭を撲ったのはセフィルだ。
「サラ将軍に手を出すな……一応旦那持ちだぞ」
後半は小声でセフィルは言った。
「うっそ~ん。」
コウハはその言葉を聞くとうなだれた。
「えっと、ぼくはフォンル=リクロード。 25だよ。 周りからはフォンって呼ばれている。」
そう言って優しく笑むは、淡い栗色の髪の青年。
その物腰の柔らかさに、三人はとても好感を持てた。
「オレはクルト = ファヴァレット。 28ね。」
なかなかの美形な金髪の男がそういうと、彼―――クルトはルナの手をとった。
「なかなか美しいお嬢さんだ。後十年後が楽しみ……」
だな、と続くはずだった言葉はそこで途切れた。
「フィ、フィアールさ~ん……どうしてオレの首筋に剣をつきたてているのかナァ~?」
「何でって? それは不純分子を排除するためだよ。 クルト将軍?」
ニコニコと、背負っていた薄青色の大剣をクルトの首筋に突きつけながら、フィアールは言った。
「ふ、不純分子??」
「未成年を口説くなんて、半道徳的だろう?」
やはり顔はニコニコとした笑顔で、さらに剣をつきたてた。
「ひ、ヒィ! オイ!!セフィル、コイツお前の師匠だろ。何とかしろ。」
「師の不始末は弟子の片付けるものですが……。生憎、僕はこれを不始末と取れないので。」
サッとセフィルはクルトから視線をそらす。
「フォン!お前は……!?お前コイツの弟だろ!この物騒な兄をどうにかしろぉ!」
「え? 何?何なの?? なんだか急にクルトの声が聞こえなくなっちゃった。」
「う、裏切り者ーーー!!」
「さあ、腐った根性を叩きなおしてやる! 表へでろぉーーー!!」
そう言って二人は外へ出て行った。
「あの銀髪の男がフィアール=リクロード。 フォンルの兄でラメドのリーダーじゃ。 一応。」
呆れたようにジーモンは言った。
大きくはあ~と、ラメドのメンバー5人はため息をはいた。
「……改めて、僕はセフィル=アスターだ。ようこそ帝都へ。 特訓は楽じゃないぞ?」
ついてこれるか?
眼で3人を促す。
トーヤは大きく頷いた。
「はい! 辛い修行にも、オレ……ついていきます!」
大きく頭を下げる。
「おねがいします。」
彼のその様子にラメドメンバーは笑みを深くした