あなたに出会って 1
今回の主人公は、ご存じ、サエの弟、真壁秀です。
これから秀編が何話か続きます。
俺には、本当に愛した人が2人いる。
1人は副島美穂という、健人兄さんの妹で俺の幼馴染。そしてもう1人は、今俺の隣に、純白のウェディングドレスを着て、微笑んでいる人だ…
俺が地方大学に進学を決めたのは他でもない、剣道だ。
剣道を小中高とやってきている俺は、全国レベルとまでは言わないまでも、地方大会なら上位に食い込めるレベルへとなってきていた。
このまま大学でも続けて、もっと剣道を極めたい。そのためには、剣道が強い大学に行って、全国の猛者たちと稽古を積むべきだ。
そういう理由から、高3の夏に、俺は、彼女だった美穂ちゃんが都心の大学に進学を望んでいることを知りながらも、地方大学への進学を決意した。
もちろん、離れるのは嫌だ。美穂ちゃんのことは大好きだ。いつも一緒にいたい。
だけども、俺も健人兄さんみたいに、自分を厳しい環境に置きたい。
俺は、いつも、姉貴の幼馴染兼彼氏である健人兄さんを目標にして、やってきた。
大学でもサッカーを続けている健人兄さんの場合は、それが大学サッカーの強豪として知られる都内の某私立大学サッカー部であり、兄さんが大学3年のころには全国から集まったサッカー自慢の部員内での熾烈な競争を勝ち抜くまでにレベルも上がり、徐々に試合に出させてもらうようにもなっていた。
俺も、そんな風になりたい。
だから俺が決めた進学先は、剣道の強豪で知られる地方大学だったのだ。
幸いにも美穂ちゃんは俺のそんな想いを理解してくれており、『秀くんならできるよ!』と背中を押してくれた。
そして、春になり、俺と美穂ちゃんは別々の大学に進学した。
最初は、『離れていても気持ちはつながっている』と、2人で頻繁にメールしたり電話したりしたものだ。
それも、お互いが新たな環境での大学生活に慣れてくると、だんだんと無くなってきて、一年もたつと連絡さえも取らなくなっていた。
美穂ちゃんは、俺が言うのも何なんだけどカワイイから、やっぱり男たちの人気を集めるだろう。
そしてきっと、新たな彼氏を作って楽しんでいるだろう。
そんな俺はというと、剣道部に所属して学業と剣道の両立を図っている…といえば聞こえはいいが、やっぱり俺も同じように、いろんな女性と関係を持っていた。
もちろん、剣道も真剣にやっているつもりだ。
しかし、剣道部のマネージャーや、同じクラスの子や、キャンパス内で声をかけてきた子、いろんな女性とそれなりに遊んでいたりもしていたのは事実だ。
自分でいうのも何なんだが、健人兄さんが自覚していないのとは違い、俺はモテると自覚している。
顔もそれなりだし、性格も明るい方だし、話も盛り上がるし、そんなこんなで、寄ってきた女性は拒まず受け入れ、それなりに遊んでいた。
そのせいもあり、一応稽古には出ていたので剣道の腕前が維持されることはあっても、上達することはなく、試合でも大した成績を残せないまま、俺は大学を卒業しようとしていた。




