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2人が見守る、2人。(後編)

後編です。


最後のシメがちょっと分からない…って方はあとがきをご覧ください。

俺が坂上への気持ちに気づいてからあっという間に時は過ぎ、早いもので高3へと進級していた。

クラス替えが気になったが、俺も坂上も、もちろん副島・真壁とも同じ。

で、未だ、坂上との距離は縮まってない。

最近は坂上がよく副島と喋ってるのを目にして、嫉妬みたいなのを感じてしまって…

真壁はちょいちょい相談に乗ってくれたりしてくれているのだが、今回に限って俺の勇気が出ない。

女の子には慣れているはずの俺だが、坂上は別というか、これまで一緒にいた『友達』だから言い出しにくいのか…

『いつものように告白しちゃえばいいじゃん!』『それがさ、なんか勇気が…ってオイ、いつものようにってどんなようにだよ!?』『え?だって緑君、ケンから聞くけど、試合会場でかわいい女の子がいた時、試合で得点した後すぐに…』『あーっそれ以上は言うな言うな言うなー!!!』

クソっ、今日の朝の真壁に相談した時の会話が記憶に甦ってくる。

副島のヤロー、いろいろバラしやがって… というか、女の子を呼ぶために副島を使っているから憎めないんですけどね…


…副島?

ヤツに相談してみるっていう手も、あるっちゃあるのか…

真壁が悪いわけじゃないんだが、このまま真壁だけに頼っていても解決策が見つけられなさそうだし…

『お前の勇気のなさだよ』とツッコまれたら何も言えないんですが…

んー、まー、機会を見つけて副島にでも相談してみるかなー。











高3に進級したけど、私と緑の関係は変わらないまま。

そして最近はなんだか緑が冴っちと仲が良いみたいで、ちょっぴり嫉妬しちゃう。

相変わらず副島には相談に乗ってもらったりしたのだが、告白の勇気が出ない。

春休みには副島主導で私・緑・副島・冴っちで遊園地へ、いわばWデートを決行し、副島も要所要所で私と緑を2人きりにしてくれるなど気を遣ってくれたのだが…

う~ん、もどかしいっ!いつもの私みたいに、『好き!付き合って!』っていえば済むことなのよ!

だけどもそれができないから困ってるのよ!うーっ…

…そろそろ、冴っちにも相談してみようかなぁ。

冴っちにも相談して、何か女の子視点からのアドバイスをもらったりもしてみようかな…











「「なんかさー、」」

2人での下校時、チャリを押しながらの俺と隣を歩くサエの声がダブった。

お先どうぞ、いやいやケンから、いやいやいやサエから、いやいや男らしくどうぞ、いやいやレディーファーストだから、なんて無為なやり取りをしたのち、サエが話し始める。

「最近、真理っちと緑君って、お互いになんか変じゃない?」

「あー分かるー。ってか、俺もそのこと言おうとしてたし。」

「やっぱりケンも思ってた?」

「うん。なんか余所余所しいっていうかさ… ったく、俺は坂上から頼まれて緑とくっつけようとしてるのに…」

と言ってから、気づいた。

言っちまった。

「えっ?」

幼馴染のサエは些細なことでも聞き漏らすはずもなく、「そ、そうなの?」と聞かれる。

「あー、えっとー、まー、そういうことだな。」

ゴメン坂上、バラしちゃった、と心の中で謝ると、サエから思いがけない言葉が。

「実はさ、私も、緑君から相談うけたりしてるんだよね…」

「えっ?緑から?」

話を聞くと、俺が坂上から相談を受けているように、サエも緑から相談を受けているそうだ。

つまり、この話を総合すると…

「「2人は両想い!」」

こうと決まれば面白くないわけがない。俺とサエは、互いに『相手にはもう一方の気持ちをバラさない』『進展があったら随時連絡』『積極的干渉は避ける』の3か条を確認、やつらをサポートしていくことにした。









「俺さ、」

部活のシュート練習中。一列に並んで自分の順番を待っているとき、後ろの副島に声をかける。

「どうした?」

「俺さ、…好きなヤツ出来たんだ。」

「ほぉ、緑にしては普通の報告だな。テンション除きで。」

まぁ確かに、いつも副島に報告するときには『俺彼女できたんだぜー!』という事後報告か、『なぁ、あの子可愛くない?どうよ?ねぇ?』と明るい感じであっけらかんだったので、こんなに坂上のことで悩んでいるテンションではなかった。

「でさ、それで…「おっと、お前の番だぞ。」

副島に言われて自分の番だと気づく。ボールを持ってDFの近くまでドリブルし、右にいるコーチとワンツーパスした後ダイレクトでペナルティーエリア外からシュート。

しかしボールは俺の不安な心情を反映するかのように、ポストに嫌われる。

「緑、集中して行けよー!」FWのレギュラーを持っている俺だが、2週間後に控えた大会を前にここまで不調だとさすがにコーチも心配そうだ。

「大丈夫です!」そう返事をしてもう一回列に戻り、副島のプレーを見る。

ヤツはどうやら絶好調で、シュートもGKが反応できない隅に突き刺した。

ギャラリーに笑顔で対応して列へと戻ってくる副島。ってか、ギャラリーいたのね。いつもの俺ならすぐ気付いてサービス精神が働くのに、そんなことさえ気づかなかった…

「で?好きなヤツがどうしたの?」

「あぁ、で、今度の試合でゴール決めたら、そいつに告白しようと思うんだよね…」

「どうした、いつもの緑らしくない。いつもの緑だったら速攻で『付き合って!』だろ?」

「んー、まぁ、ちょっとな…」

そう言葉を濁すと、副島はすべてを見透かすかのような目で俺を見ると、

「分かった。任せとけよ。今度の試合でパス出しまくってやるから。」

「おっ、頼もしいな!」

副島の言葉が冗談かもしれないが、きっとヤツは俺にパスを出してくれるだろう。そんなやり取りでココロが軽くなった俺は、次のシュートをきっちりとネットに突き刺し、ギャラリーの歓声に応える。












「ねぇ、冴っち。」

「んー?」

放課後の教室で、冴っちが休んでいた時のノートを私が貸してあげて、冴っちがそれを写しているとき。

することがない私は窓の外から見えるサッカー部の練習をぼーっと眺めていた。

だけども、目の良さが幸いしたのかどうなのか分からないが、ユニフォームの背中の背番号が『9』の男を見つけた時はドキッとして、そして冴っちに相談してみようかななんて思っていたことを思い出した。

「私さー、…好きな人、出来たんだ。」

「えっ、ホント!?」

ノートから顔を上げて反応する冴っち。

「んー、だけど、真理っち、なんかお悩みでもあるの?」

「へ?私?」

「うん。だって、いつもなら『冴っち!あの人カッコいい!』とか『新しく好きな人出来たの!』って明るく言ってくれるのに…」

今日はなんだかしんみりした感じだよ、と冴っちは付け加えた。

確かにそうだ。

これまで一緒にはしゃいでいて楽しい仲良しぐらいにしか思ってなかった緑のことを好きになっちゃうなんて、結構男慣れしている私だが、なんだかまだ認識できてないのだ。

ドキッともするし好きなんだろうなぁとも思うけど、『アイツは友達でしょ!』とストップをかける自分もまだいる、みたいな感じかな。

なんて思っていると、私の顔を冴っちがじーっと覗き込んでいる。

「ど、どうしたの?」

「真理っち、その人のこと好きなんでしょ?素直に『好きだ!』って、いつもの真理っちみたいに伝えちゃいなよ!」

そうだよ。

副島にも言われたけど、緑が友達だとかそういうの関係なしに、私は緑が好きなんだ。

「…うん、私、頑張るよ!」

「頑張って!応援してるよ!」

いつか、緑に告白しよう。なんて決心しながら、グラウンドで背番号9がゴールネットを揺らすところを見て心がまたドキッとしたりして。











それから後のことは、俺とサエが語るまでもないだろう。

俺が試合の日に緑に素晴らしいパスをしてやって、緑がゴールを決めて、

試合後にどうやら付き合うようになったみたいで、それから何だかんだあって夫婦となった2人。

本当にお似合いのカップルで明るい家庭を気づいているのだなということが雰囲気から伝わってくる。






…にしても、俺の家で、緑夫婦とサエが酔いつぶれているのは何故だ?

そんなことを思いだした、サエにプロポーズした日の深夜、帰宅時。

本編をお読みになっていただければ分かるのですが、

第7話あたり、試合で健人のパスを受けた朋樹がゴールを決め、宣言通り真理に告白するシーンがあるんですね。

で、OKをもらって付き合い始めます。


そんな緑夫婦との思い出を、健人が冴子にプロポーズした日の深夜、

取材などを終え家に帰ると優勝記念パーティーを家でおこなって酔いつぶれたであろう3人組を発見した健人が思い出した、ってことです。

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