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A SISTER SHOWS UP!!

新編です。

副島美穂(ケンの3つ下の妹)が主人公となっています。

時間軸はケン・サエが大学4年生、美穂が大学1年生のときです。

同棲しているなどの前提条件は『登場人物紹介』でご確認いただくか、『2人はきっと。』の後半のお話を御読みいただければ幸いです。


感想や評価御待ちしております!

こんにちは。

私は副島美穂、都内の国立大学の一年生、この前19歳になりました。

そんな私は、現在大ピンチです。

始まりは数日前の夕食時の父と母の一言でした。


「美穂、今度の土曜日から、私とお父さん、一週間2人で旅行してくるわね。」

「あぁ。だから、1人になるけど、うまく留守番しててくれ。」


はいはいはいはい…ってえぇーーーー!と思わず大声を出してしまいました。

何故かって?


…私には、壊滅的に家事のスキルがないのです。


料理はダメ、洗濯もダメ、掃除もダメ、正直何もできません。

『あんたは勉強はできるしスポーツもできるけど1人では生きていけないわね』、と高校生のときに母に言われた一言がすべてを物語っています。

というわけで今日はその土曜日、先ほど、お父さんとお母さんは大きなスーツケースを引いて2人で旅行へ出かけました。行き先は確かヨーロッパだかです。

でもそんなことは私がこの一週間どう生きていくかの何の助けにもなりません。本当にどうしよう。冗談抜きで死ぬ。

誰かにいろいろ手伝ってもらわなきゃ、マジでヤバい。

助けてくれそうな身内はいないわけではないのです。私には健人という兄がいるのですが、そのお兄ちゃんは幼馴染で彼女の冴子さんと一緒に同棲しているので、この家にはいないのです。


…ん?お兄ちゃん?彼女と同棲?てことはマンションで生活をしているってこと?

「これは頼るしか無いっ!」


決めました。その2人が同棲しているマンションに一週間転がり込みます。

そうと決まれば善は急げです。

大きなカバンを取り出し、着替えや化粧品類を詰め、後期がこの前始まったばかりなので大学の授業に必要な教材や筆記用具もカバンにいれ、トートには買ってもらったばっかりのパソコンやスマホの充電器などを入れ、他に必要そうなものも見繕ってカバンやトートの空きスペースに詰めて、財布や鍵を持ち、いざ出発!

2人が同棲しているマンションは、2人の大学(私の通っているところとは違う大学です)に電車一本で通える場所にあるということなので、この家からは電車で30分ほど離れたところにあるとのこと。何か急に必要なものができたら取りに帰ってくることもできる距離です。

何も怖いものはありません。これで一週間生きていける目処が立ちました。

土曜日の空は青くて気持ちいいです。






ファストフード店で遅めのお昼ご飯をすませてから、お兄ちゃんの家へ向かいます。

引っ越しの手伝いとかで何回かは行ったことあるので、周辺の土地勘はバッチリです。どこにコンビニがあるとかスーパーがあるとか本屋があるとか、大抵のことは頭に入ってます。

で、お兄ちゃんのマンションに着いたのですが、インターホンを鳴らしても誰も出てきません。2人とも外出中なのでしょうか?

でも、ここで引き下がる訳には行きません。だって私の生存がかかっているのですから。

というわけでマンションの入り口の植え込みのところに腰を下ろし、持ってきた文庫本を取り出して読みながらお兄ちゃんか冴子お姉ちゃんが戻ってくるのを待ちます。

10月の初めということで外にいる分には寒くはないのです。ちょうどいい天候かもね。

そんなこんなで目の前を通るマンションの住人たちに『?』という視線を向けられていることを感じつつ文庫本を読み進めること一時間弱、ふと道路の方を見ると、お兄ちゃんが歩いてきました。今日はサッカー部の練習があったのでしょうか、ジャージ姿です。

お兄ちゃんは私の姿を見ると驚いたように目を見開いて、こちらへ歩いてきました。そしてこう言います。


「なんでお前、ここにいんの?」


ひどいですお兄ちゃん、可愛い妹に向かっての一言目が辛辣すぎる言葉です。

なので私は、


「てへぺろ〜☆」


と舌を出してごまかしてみました。

…ありゃ、失敗です。お兄ちゃんは私を一瞥してから何事も無かったかのようにマンションのエントランスへと歩いていってしまいます。

私はあわてて文庫本をしまい、よいしょというかけ声とともに荷物を持って、後を追いかけます。


「ちょっと待ってよ〜!」

「だから何でここにいるんだよ…」


荷物、重いです。

ちょっとの距離でも荷物のせいでゼェハァした私の問いかけに、エントランスのドアを開けながらお兄ちゃんが再度聞きます。

ということで私は両親が旅行に行き、私が1人で生きていかざるを得なくなったがご存知の通りあなたの妹の生活スキルは低い、なのでこの家に一週間ほど居候させてほしい、という事情を話しました。

お兄ちゃんは、はぁ、とため息をつき、とりあえずウチに上がれ、と、私が家にお邪魔することを許してくれました。

と思ったのもつかの間、エントランスのドアをくぐりながら、お兄ちゃんはこういいます。


「いや、別に、お前がここ泊まるってことを許した訳じゃないから。サエが帰ってきてから、3人で話さなきゃ。」


なんと…

ドイヒーです。

妹のピンチは無条件で兄が助けなきゃいけないのに、なんという仕打ちなのでしょう。

なので私は「お兄ちゃんそれはない!ひどい!」と文句を言いつつ、お兄ちゃんについていきます。

…まぁ、冴子お姉ちゃんは、私が泊まることに理解を示してくれるでしょう!お兄ちゃんと違って優しいし!お兄ちゃんと違って!






「そういう事情だったのね、もちろん泊まってっていいわよ。」

「やったー!ありがとう冴子お姉ちゃん!」

「えー…」


上から、冴子お姉ちゃん、私、お兄ちゃんの発言です。

私が家に上がった後10分しないうちにお姉ちゃんが大学から帰ってきました。卒論のための資料を図書館で集めてたとのことです。

なので3人でコーヒーを飲みつつお姉ちゃんに事情を説明したところ、OKという反応をいただきました!

お兄ちゃんが不服そうなのはなんかアレですが、置いときます。

今も実際、不服そうな態度を示したことに対して冴子お姉ちゃんにお説教されてますし。


「いいじゃない。だいたい自分の妹のピンチなんだから、兄がどうかしようとかいうのはないの?」

「いや、でもさ、そしたら、」


お兄ちゃんはそう言葉を濁すと、冴子お姉ちゃんに耳を貸すように言って、私には聞こえないようごにょごにょと何かをささやきます。

すると、冴子お姉ちゃんの顔が瞬間的に真っ赤になりました。

どうせこう言ったんでしょう、『俺とサエの夜の営みはどうするんだよ』的なことでしょう。

本当に見ててラブラブですからね、あきれるくらいラブラブです。


「そ、それはそうだけど…で、でも、それとこれとは別物です!美穂ちゃんに泊まってもらいます!」


冴子お姉ちゃんは顔を真っ赤にしながらそう宣言。

お兄ちゃんは口では「えー」といいながらも、笑っています。冴子お姉ちゃんをからかって遊んでいるのです。

私はそんな2人の光景を見ながら、2人の夜の邪魔はしない、と心に固く誓ってコーヒーを飲み干したのでした。

ちくしょー、目の前でいちゃいちゃするんじゃねー。

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