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巻き込まれる時間

「ここか?」


夕方の病院の前。


振り返ると 藤堂隼人 が立っていた。


「ほんとに毎日来てたんだな」


俺はため息をつく。


「来なくていいって言っただろ」


「友達の見舞いだろ?」


隼人は笑う。


「一回くらい顔出すよ」


病院の自動ドアが開く。


消毒液の匂い。


隼人は周りを見回した。


「こういうとこ来るとさ」


「なんか静かすぎて落ち着かねえな」


「普通だろ」


「いや」


隼人は笑った。


「お前は慣れすぎ」


俺たちはエレベーターに乗る。


三階。


扉が開く。


廊下を歩くと、看護師の 神崎 がいた。


「あれ?今日は二人?」


神崎は少し驚いた顔をした。


「友達です」


俺が言うと、隼人が頭を下げた。


「どうも」


神崎は笑った。


「優しいね」


「友達のお見舞い?」


隼人は言う。


「はい」


「こいつが毎日来てるって聞いて」


神崎は少し嬉しそうだった。


「そうなんだ」


「きっと喜ぶよ」


俺は少しだけ気まずくなる。


喜ぶ。


本当は——


凛は眠ったままだ。


病室の前に着く。


「ここ?」


隼人が聞く。


「ああ」


ドアを開ける。


白石凛は、今日も眠っていた。


静かな呼吸。


白いシーツ。


そして頭の上の数字。


残り362日。


隼人はベッドを見る。


「……」


そして言った。


「綺麗な人だな」


俺は驚いた。


「お前、普通に言うな」


「いや」


隼人は肩をすくめる。


「だってそうだろ」


「目覚めたらモテそう」


俺は凛を見る。


もし目を覚ましたら。


そのとき。


隼人が言った。


「でもさ」


「なんでお前この子のとこ来てるの?」


俺は答えられない。


すると隼人は笑った。


「まあいいや」


「お前が誰か助けたいって思ってるなら」


「それだけで十分だろ」


その言葉に少し驚く。


隼人はベッドの横に座った。


「藤堂隼人です」


「こいつの友達」


「早く起きろよ」


「こいつ最近元気ないから」


俺は苦笑した。


そのとき。


ガラッ。


ドアが開く。


白衣の男。


黒崎医師。


「今日は賑やかですね」


隼人が立ち上がる。


「どうも」


黒崎は隼人を見る。


「友達ですか」


「はい」


隼人は笑う。


「こいつが毎日来てるって聞いて」


黒崎は少しだけ考えた。


「なるほど」


「ちょうどいい」


「え?」


隼人が首をかしげる。


黒崎は机から装置を取り出した。


金属のリング。


寿命移動装置。


隼人が言う。


「何それ」


黒崎は答える。


「研究機器です」


隼人は笑う。


「なんの研究?」


黒崎は少しだけ間を置いた。


そして言う。


「時間の研究」


隼人は冗談だと思ったのか笑った。


「SFじゃん」


黒崎は真顔だった。


そのとき。


廊下から足音。


俺は振り向く。


昨日のスーツの男。


時間管理局の男だ。


病室の前で立ち止まる。


そしてこちらを見る。


一瞬だけ。


目が合った。


冷たい目だった。


男は静かに言った。


「研究は順調ですか」


黒崎は笑う。


「ええ」


「まだ初期段階ですが」


男は凛を見る。


そして言った。


「国家としては」


「この研究の安全性を確認する必要があります」


隼人が小声で聞く。


「誰あれ」


俺も小声で答える。


「政府の人らしい」


男は続けた。


「近いうちに」


「実験の報告を提出してください」


黒崎はうなずく。


男は去っていった。


隼人が言う。


「なんか怖いな」


黒崎は装置を見る。


そして言った。


「ちょうどいい機会です」


「簡単な適性検査をしましょう」


「適性?」


隼人が聞く。


黒崎は装置を持ち上げる。


「寿命を見る力がある人間は」


「ごく少数です」


「もし」


「君にもその力があれば」


隼人は笑った。


「俺?」


「無理無理」


黒崎は静かに言う。


「試すだけです」


隼人は肩をすくめる。


「まあいいけど」


俺はなぜか胸がざわついた。


嫌な予感がする。


黒崎は装置を起動する。


小さな光が灯る。


そして言った。


「手を出してください」


隼人は軽い気持ちで手を出す。


その瞬間。


装置の光が強くなった。


黒崎の顔が変わる。


「……まさか」


俺が聞く。


「どうしたんですか」


黒崎は装置の表示を見る。


そして小さく言った。


「適性がある」


「しかも……非常に強い」


隼人が笑う。


「マジ?」


その笑顔を見て、


なぜか背筋が冷たくなった。

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