寿命が見える世界
俺——朝霧 悠斗も、それを見ることができる。
いや、正確に言えば
「見えるけど見ないようにしている」。
理由は簡単だ。
寿命なんて、見ても意味がないからだ。
昔、母の寿命を見たことがある。
母の頭の上には
「残り45年」
と表示されていた。
でもその次の日、
母は交通事故で死んだ。
それ以来、俺は思っている。
寿命なんて、ただの数字だ。
未来を保証してくれるわけでもない。
だから俺は、人の寿命をあまり見ないようにしている。
——今日までは。
放課後、俺は病院に来ていた。
学校の友達のお見舞いだ。
学校の帰り道にあるから、たまに寄るだけだ。
エントランスを抜けて、廊下を歩く。
消毒液の匂い。
静かな足音。
白い壁。
病院は、いつも少しだけ時間が止まっているみたいだ。
俺はふと、ある病室の前で足を止めた。
扉が少しだけ開いている。
中をのぞくと、
そこには一人の少女が眠っていた。
白いベッドの上。
点滴。
静かな呼吸。
事故で意識が戻らないらしい。
そんな噂を、前に聞いたことがある。
俺は何となく、少女を見た。
そして——
反射的に、寿命を見てしまった。
少女の頭の上に、数字が浮かんでいる。
俺はその数字を見て、
思わず息を止めた。
そこに表示されていたのは——
「残り365日」
一年。
あと一年で、この少女は死ぬ。
俺はしばらく、その数字を見つめていた。
そして、ふと思った。
もし本当に一年しかないなら——
この子は、
どんな人生を生きるんだろう。
……いや。
そもそも。
目を覚まさないまま、
一年が終わったら。
それは——
生きているって言えるのか?
そのときだった。
ピッ……
心電図の音が、わずかに揺れた。
俺ははっとして少女を見る。
もちろん、目は閉じたままだ。
何も変わらない。
でもなぜか、俺は思った。
もし。
もし、この子が目を覚ましたら。
俺はきっと——
この子に言うだろう。
「君に、生きるを渡そう。」
そのとき、まだ俺は知らなかった。
この少女の存在が、
俺の人生を、
そしてこの世界の寿命さえも——
変えてしまうことを。
はじめまして。 夜守れんです
この作品を読んでくださりありがとうございます。
この物語は、「もしこの世界のすべてに寿命が見えたら?」という考えから生まれました。
人も、物も、建物も、すべてに終わりがあります。
そんな世界で「生きること」や「時間の価値」を考える物語にしたいと思っています。
まだ拙い部分も多いですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
別作品・https://ncode.syosetu.com/n6626lx/
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