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八国史〜『新約魔書』世界一のワーストセラー〜  作者: 月詠 夜光
~光の章~

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第10話:『芋王』

 『上王』制度の成立。それは、八ヵ国世界改め八ヵ州世界にとって、一大ニュースだった。


 だが、特段の変化は、当初、見られなかった。


 それでも、凶作に悩まされた国には、対価と引き換えに風神州・天星州・光朝州から食糧が齎された。コレは、八ヵ州会議により、決定された事項だった。


 少しずつ、少しずつ、貧民層に最低限の食糧が行き渡り始める。


 地底州も、少しずつ食糧の増産が見込まれた。


 他の州は、まだまだこれからであった。


 カルは、名誉王族になったことで、今更乍(いまさらなが)ら他の王族の嫁を貰う機会を得た。


 カルは、今までの家庭を大事にしたかった。その為、当初は断っていた。


 だが、名誉王族とは言え、キチンとした正室を迎える事は、半ば義務だった。


 それでも、結婚相手の選別には手間取った。


 結果、齎されたのが風神国の姫だった。


 それはそれは盛大に、結婚式は執り行われた。


 問題は、初夜である。


 カルとしても、風神国の姫に恥を掻かせる訳にはいかなかった。


 結果、カルの子としては次女が産まれた。


 男児が産まれなくて良かった……と、カルは思ったものの、正室は男児を産む義務に近いものがあった。


 よって、何度も繰り返される閨。


 結果、カルの子としては三男が産まれた。


 この際、側室の意見は無視されるものの、カル自身は無視しなかった。


 そして、正室との子を、全て政略結婚の種にする事を決意した。


 農家としての後継ぎは、飽く迄も長男と次男。


 三男は、王族傍系の貴族として育てる。その方針だった。


 正室も、それに文句は無かった。……筈だった。


 長男と次男は農家の後継ぎとしての農作業のノウハウを教え込まれた。


 一方で、三男には貴族としての生き方を教え込まれた。


 ……違うのだ。カルが名誉王族となったのは、農産物に対する報奨としてなのだ。だから、貴族としての生き方を教えられても、父・カルの功績には届かないのだ。


 それに反して、長男・次男は農家として育てられ、功績によっては名誉王族になる可能性もあったものの、カルの功績を超えると云うのが、途轍もなく難しい。


 遂に、カルを超える功績を挙げる事は無かったと、後の世で言われる。


 だが、自身の功績無しに貴族として育った三男は、針の筵だったと伝う。


 やろうと思えば、『黄金』『白金』『虹色』の各シリーズを作ろうと思えば作れたであろうが、既に畑はフル稼働で、『レインボーベリー』に関しては鉢植えで育てられていたのだ。これ以上は無茶と云うものだろう。


 尚、カルは密かに、『芋王』と呼ばれていたのだが、(あなど)られようが何だろうが、そもそもはイチ農家だったのである。名誉王族と云う待遇が特殊過ぎたのだ。


 だが、三男が『芋貴族』と呼ばれるのは可哀想だろうと、カルなりに釘を刺して廻った。……カルがと云うか、名誉王族としての配下が行なったのだが。


 カルは、ただ只管、父親の教えを守っただけなのだ。即ち、手加減するな、と。


 カルは子供全員に、その教えを説いた。


 ただ……カル自身は、新たな品種の開発に疲れてしまった。


 なので、最低限の農作業だけ頑張って、あとは全力で休んだ。


 よって、カルがこれ以降、新たな産物を生産するかは定かではない。


 何しろ、不老長寿の加護を得ているのだ。子供よりも長く生きる可能性は高かった。


 それでも、これ以上に優れた品種の作物を作る事は困難だったのだ。


 ただ、いつの日にか、光朝国が真に豊かな国になって、花に価値が認められた場合。


 カルは、一つの花を作ろうと考えていた。


 だが、それがいつの日になるのかは判らない。


 ただ、『八ヵ州国』の全てが豊かにならなければ、そんな事態にはならないだろうと予想していた。


 故に、カルの活躍は、一度ココで終わるのだった。


 これにて、『~光の章~』は閉幕。続いて、『~水の章~』に移る事とする。


 『~水の章~』。それは、魔空船やフライトカーの開発に関する物語となる。


 暫し、お待ち願おう。

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