表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八国史〜『新約魔書』世界一のワーストセラー〜  作者: 月詠 夜光
~光の章~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/96

第8話:不満

 光朝国が『豊かな国』になることで、面白くない思いをする者も居た。


 アーベントデメルングがその代表だった。


 彼は、王室付き魔導士として、かつては『光属性の空間破壊呪』と云う『禁呪』の完成を目指して、試し打ちを命じられていた。


 だが、光朝国が豊かになることで、彼は『禁呪』の試し打ちを禁じられた。それも、かなり厳しく言い渡されて。


 一方が勲一等で、もう一方が厳命であっては、彼の不満も溜まるのも仕方のない話と言えた。


 そこで、彼はその厳命を、『闇の刻』に背いて試し打ちをした。


 結果は、『闇夜国』からの厳しい非難の声。当然、犯人は一人しか居ない。


 アーベントデメルングは、魔法を封じられた上で、牢に放り込まれた。


 食事もロクに与えられない。暗に、『餓死しろ』と言われているようなものだ。


 光朝国に尽くしたのに、光朝国の繁栄に甘い汁を吸えなかった。


 まぁ確かに、光朝国の繁栄に実績を挙げられなかった。


 仕方のないことだろう。彼に与えられた使命は一つなのだから。


 だが、捨てる神あれば拾う神あり。彼は、闇夜国に助け出され、闇夜国に仕える事を依頼された。勿論、アーベントデメルングはその話に乗った。


 ココに居たら、そのまま死んでしまう。だからと云って、逃げれば助かるとも限らない。


 アーベントデメルングは賢明にも逃げた。闇夜国へ。


 与えられた役目は、最低限の光を齎すこと。闇夜国と云えど、完全な闇の中では活動出来ないのだ。


 但し、最低限の基準が厳しかった。どれだけ弱い光にしようとも、「未だ明る過ぎる」と言われるのだ。


 ヤケクソニなったアーベントデメルングは、遂に『オーロラ』の魔法を行使した。


「莫迦な……不可能な筈だ……」


 赤道直下のこの国。オーロラは、極付近で観られる現象の筈だった。


 だが、アーベントデメルングは『オーロラ』の魔法を行使出来た。


 偏に、『禁呪』の研究の成果である。


 彼は、闇夜国に歓迎された。


 一方で、光朝国では大問題となっていた。


 (まが)りなりにも、優秀な魔導士だったからだ。


 犯人は、判り切っている。夜に脱走したのだから、闇夜国の責任だ。


 一人の優秀な光魔導士が、闇魔導士になる。コレは、思った以上の問題だった。


 ──光と闇のバランスが崩れる。


 闇は、病みに通ずる。即ち、病人が多発した。それも、大半が精神の病をだ。


 コレには、光朝王は闇夜王に対して厳しく責めた。


 だが、捨てたものを拾ったのだから、闇夜王には責められる理由が無かった。


 むしろ、闇夜王は光朝王に感謝の贈り物をした。──塩だ。


 それにより、光朝王が崩御した。


 直ぐに継ぐ光朝王が立ったが、数年で崩御した。


 ──継ぐ光朝王は、未だ幼かった。


 結果、宰相と元帥が立てられ、光朝王は傀儡と化した。


 それでも、光朝国は豊かであった。


 豊かであったが故に、光朝王の現状を問題視する者が少なかった。


 進む汚職。だが、光朝王が成人になるに従い、徹底的な汚職の排除が為された。


 宰相と元帥は、その座を奪われた。


 代わりは、立てられなかった。光朝王がその役目を担った。


 政治と軍事を整えるまでにかかった期間が、約10年。


 それは即ち、国の膿を排除する為に必要だった期間だった。


 清廉潔白で嫌われがちだが、潔癖な宰相と元帥を据えたのが、光朝王の妙手。


 本来ならば、『世界統一国家』の樹立を目指して国を一つに纏めるのが良いのだが、この八ヵ国世界の場合、それを行なってしまうと各属性の魔導士の血筋が絶えてしまう。


 だが、コレを各国を州とした、『合衆国』とすればどうだろう?


 その為には、纏める為の国家が必要だ。別に合衆国で無くとも、『連邦』とか『共和国』でも構わない。


 巨大国家と、それに伴う巨大な権力。それが、どうしても必要だ。


 『国境』の無い世界。それは、果てしなき夢なのかも知れないが、その礎を築く事には、大いなる意味があるだろう。


 飢えの無い世界。それだけで、大いなる意味はあると断言出来よう。


 その為には、『禁呪』を本当に禁止する事で、世界の荒廃を止める必要がある。


 光朝国が証明したのだ。特産品を作る事で、豊かな食糧を得ることが可能である事を。


 実を言えば、風神国の農産物には、まだまだたっぷりの余裕があった。


 だから、風神国から輸入すれば、豊かになれる国は他にもある。


 次ぐのは、恐らく『水帝国』か。


 彼の国には、魔空船がある。そのトレードで上手くやれば、儲けを出せることは明らかだった。


 何なら、光朝国も魔空船のトレードの依頼もしている。


 ただ、代価として最大限の譲歩として、『黄金芋』や『黄金南瓜』等を提供することを示唆しているのだが、水帝国にとって、それは莫迦にされたと見做せる事態だった。


 試食は、勿論させている。


 だが、毒見の済んだ『黄金芋』や『黄金南瓜』は、冷めていて既に黄金色を放っていない。


 故に、その真価を評価されなかった。


 水帝国は、そこまでに慎重だった。万が一、風神国が暴走した時の、敵対属性としての役目を果たすが為に。


 コレが、風神国や天星国を通してなら、要求は通っていたかも知れないが、水帝国の名産品を他国から輸入する、と云うのは水帝国を莫迦にする行為だと見做されかねない。


 光朝国は、聖獣が『黄龍』であるから、水の『アルフェリオン結晶』であるミスリル銀を入手すれば、『龍血魔法文字命令』のノウハウを研究すれば、氷皇国に依頼すれば、造れなくはない。


 アーベントデメルングが居れば、その為の『龍血魔法文字命令』も容易かったろう。


 だが、闇夜国に奪われてしまった。


 思えば、その辺りから運命の針は、何処か狂っていたのかも知れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ