表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八国史  作者: 月詠 夜光
〜風の章〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/55

第8話:必要なもの

 うーん……少し短いのですが、下手に引き延ばすより良いかと判断し、掲載致します。

 何だ、結局頑張れば掲載出来るじゃないか。

 迷宮では、やはりハプニングがあった。──ヴァイスが脇腹を魔犬に噛まれ、仮死状態になった。

 シュヴァルツ曰く、百年〜千年の(とき)を掛けて回復し、復活するのだと云う。

 ヴァイスはシュヴァルツが背負って迷宮を出て、次の方針が問題となった。


「回復させるとしたら、『龍血魔法文字命令』を用いた、『龍の血』をポーション化した薬が必要だ」


 ヴィジーは寡聞(かぶん)にして聞き齧りの情報だが、と断りを入れてからそう言った。

 一行にしてみれば、それに頼るしか無い。


「だが、その為には『鳳凰』の羽を用いた羽ペンが必要になる」


「鳳凰……『火王国』の聖獣じゃないか!

 大陸の反対側じゃないですか!」


「故に、『光朝国』及び『闇夜国』を突っ切るのが最短ルートになる」


 そして、光朝国でミアイと合流すれば、と云うのがヴィジーの目論見だった。最初から、氷皇国での合流は悪手だとミアイに宛てた手紙に記してある。


「幸い、儂は『天龍』に頼んで血を分けて貰うと云う手が取れる」


 天龍は天星国の聖獣だ。アイヲエルもそれは知っている。竜人なら兎も角、ちゃんとした龍は、感覚が鈍いので、多少傷付けられても気にしない。


「ポーション瓶に、『龍血魔法文字命令』を龍の血で書いてポーション化するんだ。

 シュヴァルツ、出来るか?儂が代わっても──」


「出来るのだす!」


 シュヴァルツは力強く言い放った。


「難しい術式だぞ?」


「千年は学んだのだす!」


「失敗したら、儂が代わると云う事で構わないか?」


「絶対成功させるのだす!」


「──良し!」


 ヴィジーは念の為、カード占いをした。


「『甲午(きのえうま)』に『庚午(かのえうま)』、『壬午(みずのえうま)』まで揃っておる!中々この上ないぞ!」


 そうと決まれば、後は馬車の調達だった。

 人伝(ひとずて)に馬車を借りる場所を聞くと、丁度、ココに来る時に借りた馬車とその馭者が揃っていた。勿論、頼る事にする。


「光朝国・闇夜国を突っ切って、火王国まで。頼めるだろうか?」


「料金は、前回と同じで構いませんか?」


「すまない。助かる!

 一度、光朝国で待ちたいが、構わないだろうか?」


「支払いさえして貰えれば、何処へでも!」


「有り難い!」


 そうして、しばらくの馬車での旅となった。


「アイヲエル、光朝国に着いたら、(あさひ)の昇る瞬間を眺めると良い」


 どうやら、それもまた、絶景らしかった。

 アイヲエルはふぅん、とその発言を流す。

 どちらにせよ、アイヲエルは外の風景を眺めて過ごすのだ。


 奴隷二人娘はヴィジーと共にカードを遊ぶのだが、アイヲエルが参加しないことに、自分が遊んで良いものか気にしていた。結果、あまり盛り上がらずにカードを遊んで、時間を潰した。

 食事の時以外はそんな様子で過ごし、食事は馬車の外で料理をして食べる。夜は休んで、アイヲエルとヴィジーが交代で見張りをする。

 そして、何日目かの夕方に、光朝国へと入った。

 宿を取り、そして、日が沈む瞬間。アイヲエルはその瞬間を宿の窓から眺めていた。──日が紅く空を染めて、沈み切った瞬間、街が一瞬、紫に染まった。その後に、徐々に暗くなって来る。闇夜国に変化したのだ。


「外には出ない方が良かろう。

 儂一人なら、遊びに出るのじゃがのぅ……」


「皆で出掛ければ大丈夫じゃないですか?」


「アイヲエル。お主に闇夜国での遊びはまだ早い。

 せめて、神王を務め終えて引退した後ならのぅ……」


「俺はもう成人(おとな)です!」


「ミアイ嬢に怒られる遊びは止めておけ」


 ここで何故ミアイの話が出てくるのかは解らない。


「それとも、キレーなオネーサンの接待を受けたいか?」


「いいえ、とんでもない!」


 アイヲエルはようやくこの闇夜国での遊びと云うものを理解した。


「まぁ、明日の旭の昇る瞬間を待つ為に、早めに休んでおけ」


「そうですか……。そんなに見せたいものなので?」


「光朝国に来て、あの光景を観ないのは、ココに観光に来た甲斐が無い」


 そう言われて、夕飯も早めに食べてしまい、アイヲエルはサッサと眠ってしまった。ヴァイスはベッドに横たえ、シュヴァルツとフラウも早々に眠る。ヴィジーも、部屋の鍵に魔法の鍵を重ねて、意識を保ちながら身体を休める。そして、真夜中を少し過ぎた時間に、アイヲエルを起こす。アイヲエルは、折角だからと、シュヴァルツとフラウも起こしてカードで時間を潰した。ヴィジーは夜明けが近付くまで、西側の窓の外を眺める。そして、白じんで来た頃合いで皆を呼ぶ。


「いいか、日の昇った一瞬の景色だ。見逃すな!」


 やがて、空が朝焼けて来て、ほんの一瞬だった。

 旭が差した一瞬、街の屋根や壁が、七色に輝いた。まるで、虹を(ちりば)めたような光景だった。

 だが、ほんの一瞬の輝きで、キラキラと旭の日の欠片をほんの僅かの時に散らして、朝の明るい光景が広がるのみとなった。


「はぁー、凄かった!予想以上に」


 そして、風神国の方角から、一台の馬車が駆け抜けてくるのだ。


 その馬車は、異様だった。それもその筈、その馬車を()くのは、八本足の馬(スレイプニル)なのだから。空も駆けるとまで言われる馬。風神国の軍用の馬だった。


 ヴィジーにはそれに乗っている者が判ったが、()えて秘しておいた。


 その馬車の中では、衝撃吸収作用のある構造の馬車でもかなり揺れて、一人の女性がこう叫んで光朝国を目指しているのであった。


「待ってなさいよー、アイヲエル〜!!逃がしませんわよ〜」


 その姿は、化粧もドレスも見事でありながら、確かに田舎者の姫様の姿だった。

 鬼嫁。そんな言葉が良く似合っているのかも知れなかった。


 ヴィジーは『ようやく、だが、予想より早い!』と思っていた。

 一方でアイヲエルは、皆を率いて朝食を摂りに食堂へ降りてゆくのだった。


 雷の落ちる、30分前のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ