表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八国史〜『新約魔書』世界一のワーストセラー〜  作者: 月詠 夜光
~光の章~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/96

第5話:黄金シリーズ

 光朝国中で、『黄金南瓜』の生産が進んだ。


 それは、種芋を十分に確保出来ない『黄金芋』用の畑を、『黄金南瓜』の生産に使うことで、農作地を遊ばせておく必要が無くなったが故だ。


 光朝国は、以前より大分マシになったとは言え、未だ貧しい。


 そんな人の為を思って作られたのが、『黄金南瓜』なのだ。


 だが哀しいかな、その色と味、そしてポタージュにした時の上品さ故に、輸出品目の上位に位置付けられた。


 だがそれでも、生産農家に限っては、量は少なくても口には入る。一個の大きさが充分に大きいが故に、一個でも手を付けられれば、美味しい『黄金南瓜のポタージュ』を食べる事が出来た。ポタージュの料理法は王家の秘密だが、試行錯誤で一度カルが再現してしまえば、『黄金南瓜』農家の全てに情報が渡る。

 実は、このルートで光朝国の名産品の加工法を調べられたら、アッサリとそのノウハウが知られてしまうのだが、そこは詮索しない、と云う条件で輸出入が認められている。

 一度詮索すれば、アッサリと調理法が判っても、素材の方が手に入らなくなる。


 何しろ、光朝国の全農家を救うような作物だ。一つ割ってしまえば、その一個は生産農家が必然的に食べる事が出来る。

 コレに因り、全農家の子供が、栄養不足から助かった。

 そして、子供とは言え手伝いが出来れば、生産量は上がる。


 こんな、良いこと尽くめの作物であるが、未だ足りない。


 そんな中、カルはしくじった。偶発的に、『黄金人参』を作ってしまったのだ。

 勿論、記録には残っているから、今後は必然的に生産出来るが、はて、『黄金人参』にそこまで大した調理法はあるだろうか?


 そう思ったカルが見つけた資料は、『黄金人参』の薬としての効能だった。


 つまり、『薬』として高値で売れる。

 それも、量産が可能な一方、一度に処方される『黄金人参』はほんの僅か。


 総合健康食品としての利用、と云うトレード方法が考えられた。


 本来は、『白金玉葱』の方が先に作る予定だったのだが、出来たのは『黄金人参』が先。


 誤算にしても、コレは酷い。その効能を考えれば、本当に半分ぐらいの重さの『金』とトレードするレベルの作物だった。


 勿論、身体に良いのは喜ばしいことだ。だが、薬は量を間違えれば必ず毒になる。


 カル個人は、『黄金人参』の量産を諦めた。だが、国の方針は違う。


 薬にするにしても、総合健康食品にするにしても、他の作物とは根本的な価値が違う。


 結果、『黄金人参』は他七ヵ国全てに対する主要輸出品目と化した。


 その量産も、国から命令が下される。


 辛うじて、カルは王族傍系と云う事情で命令とはならなかったが、家庭の健康の為に、試験用の畑の半分を『黄金人参』の生産に該てた。


 そして、その三割が税として持っていかれる。


 金銭での支払いでは済まなかった。むしろ、国からの比較的高額での買い取りの要求も来たが、カルはその立場を利用して跳ね返した。


 カルも、家族の健康は大切だった。


 だが、こうなると、『黄金』シリーズの作物のノウハウも、カルの蓄積したデータで、見えつつあった。


 手始めに作ったのが、『黄金苺』。これが黄金色に輝いて、美しかったのだ。


 「最後の晩餐には『黄金苺』に練乳を!」とまで言われるに至る。


 その初期生産分は、カルの一家と、王家に僅かばかり届けられたのみだ。


 冗談じゃなく、同じ重さの金と同価値としてトレードされた。


 それが、光朝国での増産が進むまで、輸出には更なる付加価値を付けて扱われた。


 結果、買えたのは天星国のみだった。


 風神国ですら、「食べ物にその価格はあり得ない」と、トレードを断る始末。だが、王妃が召し上がる為だけに僅かな分量のみ、トレードされた。


 コレが増産されて、価格がグッとお安くなると、天星国・風神国共に頻繁にトレードが行なわれる。


 兎に角、その酸味が絶妙な美味しさだったのだ。甘いだけでは、既に当たり前過ぎたが故に、高価格でトレードされた。


 高が食品、されど食品である。消え物であるから、その価値も水物であったが、極一部の者しか食べられぬ珍味とされた。


 コレがまた、練乳と合うのだ。


 故に、一過性の流行りで、練乳が高騰し、市場から消えた。王家が買い占めたのだ。


 一方で、五ヵ国は『黄金苺』の存在を、噂でしか知らない。そんなものを買う余裕があったら、もっと安価な食糧を買うと云うものだった。


 だが、王家としては、一度も食べていないと云うのは悔しい。結果、『御勤(おつと)め品』となった『黄金苺』が売れる。

 壮絶な、『御勤め品』の苺の獲得競争が始まった。


 ココに来てカルは、『黄金』シリーズの生産のノウハウを放出した。


 だが、他の品目の『黄金』シリーズは、中々生産されなかった。せいぜいが、栗農家が『黄金栗』を作ったのがやっとだった。


 カルからしてみれば、他にもアイディアの出しようはある筈であった。そう、例えば『黄金ピーマン』とか。


 ただ、冷静になってみれば判る。ピーマンは、人気の無い野菜の代表格だ。例え、『黄金色』をしていたとしても。


 パプリカならば良いのか。だが、完熟したピーマンとパプリカには、大きな差が無かった。


 ならば、ニラならばどうだろう?──否、ニラは既に伝説の白ニラが、地底国の名産品としてあった。例え出来たとしても、市場を二分するに違いなく、地底国と敵対する。得策ではない。


 では、ネギならばどうか。だが、残念ながら、試験用の畑は『黄金人参』と『黄金苺』の生産で二分され、カルが試すことは無かった。


 だが、カルはその案を親戚の農家に持ち掛けた。だが、生産には成功するものの、イマイチパッとした売り上げに繋がらない。


 今日もカルは、名産品となる『黄金』シリーズのアイディアに、頭を巡らせながらも、作物の世話を焼いていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ