第3話:研究室長の危機
『光』による『闇』への侵略は、神器を止めて尚、3年間続いた。
その間に、カルの手柄が割れようとしていた。
──即ち、カルによる助言の結果の、本物の『黄金芋』の確保が為された事が、ほぼほぼ判明していた。
だが、それは意外な形で収拾した。──『助言者』と名乗り出る、手柄横取りの研究者の告発によって。
カルの手柄は、その研究者に奪われた。だが、「何故、本物の『黄金芋』の生産を維持出来ていた?」の質問に、彼は答えられなかった。
誰かが、その答えを知っている。それは判った。だが、カルが名乗り出ない事によって、その『誰か』が全く判明する様子を見せなかった。
何故ならば、カルは助言することを『明かさない』と云う条件で、本物の『黄金芋』の生産を維持出来る方法を伝えていたからだ。
勿論、他の研究者の手柄を、本人が言い出さないのに、わざわざ約束を破って口を割る訳も無い。口封じされた者が、口封じされた事実すら明かすことが無かったのだ。
この辺は、カルがイチ研究者として『黄金芋』を研究する要素として、人に邪魔されない為の対策が打たれていた訳だ。
そのうち、カルは『黄金芋』を育成しない期間を利用して、『黄金南瓜』の生産に成功した。
こればかりは、カルが報告しない訳にはいかない。
憂鬱な気持ちを抱えながら、『黄金南瓜』も抱えてベアトリクスに直に報告に行った。
「ベアトリクス様、新作の作物、『黄金南瓜』をお持ち致しました」
「ウム、その辺に置いておいてくれ」
カルは、報告がスムーズに終わった事に、ホッと一安心した。ベアトリクスにとって、カルは顔も名前も覚えていない、末端のイチ生産・研究者だったのだ。
「お嬢様、此方の南瓜、『黄金芋』と同等の処理をして料理してよろしいでしょうか?」
その『黄金南瓜』に興味を持ったメイドが、それとなく進言した。
「ああ、宜しく頼む」
無意識にベアトリクスはそう返事していた。
そして、仕上がったのは、『黄金南瓜のポタージュ』。光り輝くポタージュと云うのも、珍しいだろう。そう思ってシェフがベアトリクスの食卓に上げたのだが。
「何だ、このポタージュは!?」
今更、ベアトリクスが驚くが、頭を悩ませる本物の『黄金芋』生産を維持した人物の特定の他に、厄介事が転がって来た気がしてならない。
結果、成り行きを見守っていたメイドを問い詰めて、『黄金南瓜』の生産者の特定と、王家に献上する分の『黄金南瓜』の確保に動いたベアトリクス。
『黄金南瓜』の確保には成功した。一年間、貯蔵・熟成した『黄金南瓜』の幾つかを確保し、王家に献上した。
評判は、絶賛の嵐だった。だが、ここでもベアトリクスは一つのミスを犯す。──即ち、カルの手柄の報告を、匿名で、と云う条件で名前を伏せられて『黄金南瓜』が齎されたのだ。
だが、直ぐに動けば、未だカルしか『黄金南瓜』は生産していなかった。『黄金芋』の件を後回しにして、『黄金南瓜』の件を追究すれば、『黄金芋』の件も片付く筈だった。ベアトリクスは、そうしなかったのだ。
結果、『黄金南瓜』の件を後回しにすることで、『黄金南瓜』の生産者が増えると云う事態に陥った。
こうなれば最後だ。誰もが、『黄金南瓜』の手柄を口封じされていて、逆に自分の手柄だと云う者が続出するが、そのノウハウの詳細については、闇に葬られた。
カルにしてみれば、手柄は立てたいが、目立ちたくない。結果、『黄金南瓜』も名産品となるが、誰が最初にソレを作ったのかは、明らかになることは無かった。
王家にしてみれば、「今更、カボチャなんかに『黄金南瓜』と名付けたからと云って」と当初は宛てにしなかったものの、それを加工した『黄金南瓜のポタージュ』は絶品であった。
それが故に、ベアトリクスは再度、王家に呼び出される。
「『黄金南瓜』、見事である。──して、最初の生産者は割り出しているのだろうな?」
「いえ、それが──『黄金芋』の件が片付いておりませぬ故に、放置した結果、『最初の生産者』の割り出しはほぼ不可能となってしまいまして──」
「奇妙な事を言い出すものだな。自らの部下の手柄を、自分の手柄にしてしまえば、貴様は表彰程度はされてもおかしくないレベルの功績だぞ?
現に、幾つか風神国に輸出したところ、纏まった数の確保を急ぐよう、急使が参った次第だ。
貴様は『黄金芋』の件にリソースを裂き過ぎて、問題の本質を見抜けていないのではないか?」
「──は?」
光朝王は溜息を吐いた。
「貴様、手柄は自らのものとして良い!だが、優秀な生産・研究者を埋もれさせるのならば、その『研究室長』の座を他の者に譲り渡して貰うぞ?
最早、優秀な人材が無駄に功績を立てていると言わざるを得ない!」
飴と鞭と云う言葉がある。
だが、手柄を立てているのに飴を与えず、鞭で打って使役する上司なぞ、誰も望まないであろう。
ベアトリクスはココに来て遂に、自分の立場の怪しさに気が付いた。
「はっ!必ずや、優秀な人材の割り出しに、全力を尽くします故──」
「否、全力を尽くし過ぎるのが問題だと言っている!」
「──は?」
理解を示さない配下に、光朝王は頭を痛める。
「もう良い!貴様は研究の他には役に立たないポンコツだと判った!
『研究室長』の座はそのままに、『監査官』を入れる事で、優秀な人材の手柄を割り出すことをココに決定する!」
ガンッ!
裁判官のガベルが如く、光朝王は木槌を鳴らした。政策決定。その、合図である。
「誰ぞ、手の空いた優秀な人材を見繕え!」
だがこれは、時既に遅しと云う話である。果たして『黄金芋』と『黄金南瓜』の両方を生産して、更に第三の優秀な作物を作れる程の逸材が、在野しているのかと云うと──中々に、厳しい課題をクリアできねば果たせそうにない事案であるし、こうなれば、光朝王の指示する命令は一つである。
「口封じした、何者かが居る!『黄金南瓜』の生産農家から該って、その口封じをした、恐らく優秀な人材を割り出せ!」
何の因果か、ソレに該る人材は、アンナの他に、適当な人材は他に居ないのであった。
PV数見て絶望したので、今作、早めに仕上げて、『〜闇の章〜』にて完結、滅亡エンドにしようと思います
m(_ _)m




