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八国史〜『新約魔書』世界一のワーストセラー〜  作者: 月詠 昼光
~光の章~

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第1話:黄金芋量産計画

 掲載時刻を、少々変更してみました

 『光朝国の芋娘』。その逸話により、国際的に美味として評判になった、光朝国の名産品、『黄金芋』


 だが、その真価は、焼き方にこそあった。ある特定の焼き方をすると、『黄金芋』はその身を金色に輝かせ、ねっとりとしっとりの中間位の程良い焼き加減になり、大変な美味であった。


 だからこそ、『光朝国の芋娘』ことミアイは、食事の殆どを弟妹に分け与えながらも、自分に割り当てられた『黄金芋』だけは決して譲らなかった。勿論、身体の健康を保つ程度には他の食事も少しずつ食べていたが、基本、弟妹に分け与えるものが殆どであった。


 『黄金芋』の真骨頂は、ミアイのアイヲエルとの結婚式の時にも、一人一口程度とは言え、給仕された。そして、とんでもない高値で『黄金芋』は風神国に輸出され、焼き方だけは光朝国の機密事項として、焼き方を知っている料理人がレンタルされたに留まった。尚、その料理人も、人の目に付くところでは決して『黄金芋』を焼かなかったと云う。


 光朝国は『黄金芋』の輸出で得た資金の殆どを、風神国からの食糧の輸入に使った。お陰で、王族だけは裕福と言え、庶民にも以前よりは大分マシな食糧が食べられるようになった。


 そんな折であった。光朝国王族傍系の『黄金芋』農家、カルトッフェル・ライトことカルは、ある危惧を抱えていた。


「まさか、『黄金芋』の量産に乗り出すなんて暴挙に、王家が出たりはしないよな……?」


 その危惧は、正に的を射ていた。


「『黄金芋』の量産の為に、光の支配する時間を伸ばそうではないか」


 当時の光朝国王は、そう言ったと言われる。

 兎も角、『黄金芋』の量産は国家事業となった。


 その為に、古代の神器(アーティファクト)である『光の羅針盤』が持ち出された。


 曰く、イザと云う時のみに使うべし。『光』が『闇』に侵略された時のみ、この神器を使うべし等と、その使用を制限する言葉と共に語り継がれてきた神器であった。


 『黄金芋』研究の第一人者たる、ベアトリクス・ライトも、黄金芋のこれ以上の量産には神器を使う他無いと豪語していた。その言葉に、光朝王家は乗った。


 ベアトリクスの計算では、実に1割もの増産が見込めるとの試算を出していた。それが、どれだけ意味の無い試算であるのかも知らずに。


 カルは、光朝王家の動きを傍系とは言え王家の血筋によるネットワークを用いて、その情報を入手していた。


「こうしちゃいられない……」


 カルからしてみれば、光朝国存亡の危機であった。故に、彼一人のみ、『黄金芋』農家で光朝王家の施策に対策を打っていた。


 『光』による『闇』への侵略。それは、順調に進んでいた。


 神器は、一日一秒ずつとは言え、確実に『闇』へと『光』による侵略を成していた。


 その、余りに短い時間の侵略により、決して闇夜国には知られずにオペレーションは進められていた。


 そして、『光』による侵略が10秒に届いた頃、最初の収穫の情報が齎された。


 僅か、1%。僅かとは言えど、確実に収穫量は上がっていた。


 だが、コレに因る僅かな変化に、光朝国は知らずに居た。


 そう、『黄金芋』の真骨頂たる、ねっとりとしっとりの中間位の黄金色の焼き色の『黄金芋』の焼き芋の品質に、僅かな陰りが出ていた事に。


 それは、『光』による侵略が50秒に届いた時だった。収穫量も、当初の5%増しの生産量を誇っていた。


 だが、だがだ。しかし、『黄金芋』の焼き芋は、決して『金色の輝き』を見せてはくれなかった。


「莫迦な!これでは『黄金芋』では無く、ただのありふれた芋ではないか!」


 光朝王は激怒したと云う。自らの判断による責任であることにも気付かずに。


 だが、だがしかしだ。収穫量の僅か1%程の『黄金芋』は、確かに『黄金色』に焼けていた。


 光朝王は命じた。


「この、『黄金色』に焼けた『黄金芋』農家の所在を突き止めよ!」


 だが、カルは王族傍系と云う事もあって、調査の手から逃れていた。調査が入ろうとしても、立場を盾に利かせて決して『黄金色』に焼ける『黄金芋』の秘密を明かすことはなかった。


 それどころか、カルは自分の絶対に信頼の置ける取引先以外に、『黄金芋』の流通を止めた。


 コレに因り、『黄金芋』絶滅説が流れるが、カルと親しい光朝王族傍系の中に、未だに『黄金色』の『黄金芋』を食べている者がいた。


 そして、それは輸出にも大きな影を落とし、風神国からクレームが付けられたことで、光朝国の主要輸出品目から、『黄金芋』が消えかけようとしていた。


 実は、カルはミアイと親しかった。関係性も、従姉弟に該る。カルだけは、『黄金芋』を『黄金芋』として、正しく輸出し、数量としては少ないものの、風神国からは、カルからの『黄金芋』の輸入で満足していた。元々、嗜好品なのだ。多少高かろうが、美味ければ売れる。道理であった。


 一方で、光朝国では、決して『黄金色』に焼けない芋の在庫を大量に抱えて、悲鳴を上げそうになっていた。


 そんな折、ベアトリクスが偶然、カルの栽培する『黄金芋』を食する。


 ベアトリクスは、その仕入れ先を徹底的に追窮した。だが、仕入れ先はまず第一声に、『仕入れ先を報せない』と云う条件で仕入れたことを言い訳に、中々調査は進まなかった。


 ところで、『黄金芋』の生産量の1%を担っていたカルは、ベアトリクスの研究の一環としての生産を担っていた側面があった。


 判明すれば、その『黄金色』に焼ける『黄金芋』の秘密を、全て暴露してくれる筈なのだが、偶に献上される『黄金芋』の他は、面識の一つもありはしなかった。


 カルは、芋の特性を良く知っていた。と云うか、ベアトリクスも良く知っている筈だった。何しろ、自らの研究の成果なのだから。


 芋は、夜の寒い間に糖度を高め、蓄積していく。ソレの究極形が『黄金芋』だった。


 よって、カルは芋に、早朝、光を避ける為に黒いシートで芋を葉っぱごと覆ってしまっていただけの話だ。


 光も浴びなければ、糖度を高める為の栄誉分も蓄えられない為、タイミングが実に重要で、カルは従来の二倍近い手間を掛けて、『黄金芋』を生産していたのであった。


 だが、カルはベアトリクスの研究の一環として『黄金芋』を作っていた以上、報告代わりに一部の生産品をベアトリクスに献上する必要があった。


 そして、ベアトリクスもまた、自分の治める畑の一部が、早朝、黒いシートで覆われていると云う報告自体は上がっていた。と云うか、自分の目で見て、疑問に思っていた。


 彼女はただ、それも研究の一環かと、軽く流してしまったが故に、話はややこしいことになってゆくのだった。

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