第9話:新たなる宇宙
『火巫女』に、風神国王族の血が混じると風邪に効くらしい。そんな噂が流れた。
ベルは、思いがけず風神国王族の寵を受けた。それも、前々々王のヴァターのである。
所謂、妾となってしまうが、王族の血を引いていないのに、王族の仲間入りだ。
ただ、権力とは無縁だった。超越者として、不老の加護は得るが、それは即ち、衰えるまで『火巫女』として舞い続けなければならないと云うことである。
この際、「ベルは召し上げる」との連絡が火王国に齎されるが、ええい、齎されるのか、忌々しい!
王族では無かったが為に問題にはならなかったが、『火巫女』の経験者が二人も風神国王族に娶られたのだ。火王国は当初、問題にはしなかったが、問題にしなかったことへの謝礼として、多額の献金を頂くが、それを以て『火巫女』派遣の謝礼としての献金が齎されなくなった。
事、ここに至って、ベルと火王国はベルが召し上げられて、衰えるまで『火巫女』として扱き使われる事に問題を見出した。
衰えるまでと云ったって、不老の加護を得ているのだ。何百年扱き使われるものか、判ったものではない。
しかも、それに対する火王国への支払いは、一括してベルの召し上げの件に対する謝礼を以ても、物価が徐々に上がっていくスパイラルが八ヵ国世界でも適用される事から、一時金より定期的な、かつ一定のペースでの値上げを行なわなければ、結局、火王国の損害に近しい。
ただ、一時金の金額はそれなりに大きかったのだ。火王国王が賢王であれば、それを元手に儲けられただろうが、そこまでの賢王でも無かった。
火王国王がケチなら、国際問題になっただろう。だが、その一時金を『火巫女』育成に投資することによって、歴代でも優秀な『火巫女』が育ちつつあった。
火王国王は、『火巫女』の優秀さをウリにして、風神国以外の六ヵ国への『火巫女』派遣の費用を引き上げた。
こうなると、流石に国際問題にもなって来る。但し、歴代の『火巫女』も徐々に値上がりして派遣されていたのだ。国際問題と云っても、規模は小さい。
六ヵ国は、風神国を見習って、『火巫女』に寵を授ける元王が多発した。
本来、『火巫女』は乙女であることが美徳とされていた。だが、王族の血を交えると鎮守の舞いの効果が増すとあっては、『火巫女』側としても、寵を受けることへの拒絶の意を示す利点が失われつつあった。
それもこれも、風神国が原因。
とは言え、下手に風神国を弾劾すれば、王たる権限を奪われかねない。
そもそもが、新しい宇宙の誕生と云うのは、未完成の『火属性の空間破壊呪』の完成によって、惑星上で起こるのだ。その時、その惑星は滅んで、新しい宇宙と、似たような惑星が誕生する。
火王国は、その特権を握っているのだ。『滅び』が新たなる宇宙の誕生に繋がるのである。
それは、最早物語世界の常識を超越する現象だが、その時、火王国王は神王となり、そして死んでしまうのである。そう、『唯一神』に近づき過ぎた者は死んでしまうのだ。
故に、『唯一神』はデウス・エクス・マキナの如く、機械仕掛けの情報処理装置と化してしまう。
尚、『火属性の空間破壊呪』が完成するには、ある一定の期間の後の話である。
『火巫女』は、鎮守の舞いを舞うしか能の無い女性に思われがちだが、必ずしもそうでは無い。
むしろ、災害を起こす事の方が簡単なのである。
ブレイクダンスも、『回転を始める』と解釈してしまえば、竜巻や台風を齎せられる。規模としては、竜巻で言えばF5、台風で言えば900hpaの規模で起きると『火巫女』が予言すると、規模は違えど、竜巻も台風も引き起こせる。まぁ、台風については時期にも因るが。ただ、竜巻はF9と云う規模の竜巻が存在し得ない──内情をバラせば、『風属性の空間破壊呪』の引き起こす竜巻がF9レベルと言い切れば、強ち間違いとも言い切れないが──ので、引き起こすことは他の災害に比べて少し難しくはあるが。
果たして、この時期に竜巻や台風が引き起こるかは定かでは無いが、別に『火巫女』が予言した訳では無いのだが。ただ、その話題に触れたことが切っ掛けで、引き起こる可能性は無くは無い。つまり、可能性がある。
特に、他の『柱』が見ていれば、可能性は高くなる。だが、『世界一のワーストセラー』と銘打ったこの物語を好き好んでチェックする暇な『柱』が居る可能性は低かろうが。
一柱じゃ世界に影響を与えるには足らない。少なくとも、二柱。『世界に影響を与える』と云うのは、そう云った性質のものだ。
嗚呼、コレは影響を与えるだろうよと、思わないでは無い。
だが、未だ三度の再現性は確かめられていない。
もっと簡単な事で云えば、雷を伝播距離900キロと『火巫女』が予言すれば、伝播距離は届かずとも、恐らく雷は起きるだろう。
もう、いい加減、理解を示して欲しいものだ。
我々は全員、『地球』の『代弁者』であり、その言動には影響力が伴う事を。
縁起の悪い年である事など、上等である。縁起の悪い年に打ち克ってこそ、成功するのである!
いつもそうだ。縁起の悪さに打ち克たなければ、成功は齎せられない。
温もりなぞ、あるものか!今、世界は最高に『寒い』!
やはり、コントロール下にある。その宿命に打ち克つのは、半端な事ではない。
或いは、『滅び』からの『新宇宙の誕生』の可能性にこそ、賭けられて居たのかも知れない。
『火属性の空間破壊呪』とは、そこ迄の威力の魔法なのである。
そこに、与えられる情報は『温度情報』のみ!他は、『創造者の創造物』が一部、存在するのみ!
『永劫回帰』の可能性に背くには、それしか無い!
全ては、過去の『聖人』達の過ち故に!
最早、可能性はそれに賭けるしか無い!さもなくば、『永劫回帰』のシナリオ通りとなってしまう。それだけは、絶対に避けたい!
設定温度は『グラハム数℃』!実際にはそこまで及ばないだろうが、数値の『ギネス記録』である!
ビッグバウンスでは無く、ビッグバン!収束して拡大を繰り返すなぞ、御免である!
こうして、成功した数だけの『宇宙』がこの世には存在しているのだ。それを一つ、増やすだけ。簡単に云えばそれだけの事であるが、言うは易し、行なうには難しである。
そもそも、『闇に滅する』可能性もある。それを乗り越えなければ、『滅び』からの『新宇宙の誕生』はあり得ないだろう。
急ぐつもりは無い。むしろ、じっくりと『八ヵ国世界』から始まる『十三ヵ国世界』を経由しての『滅び』からの『新宇宙の誕生』と云う可能性を追究したい。
そして、『火巫女』は災いを予言することで、場所は兎も角、引き起こせるからこそ、『災いの予言』はしない!それは、『火巫女』のルールとして禁じられることを教え込まれる。
そう、飽く迄『もしも』の話をしていただけで、実際に予言された訳では無い。だが、『もしも』の話をするだけで災いが訪れるなら、それはもうほぼ既に終わっている。
何が終わっているのか。それは、『世界の寿命』だ。終わっていて続いているのは可笑しくないかと云う話になろうが、惰性に従って続いているだけだ。
ココで、『滅び』からの『新宇宙の誕生』と云う手に続けなければ、惰性が失われるのと共に、世界は完全に死に絶えるであろう。
だが、『火巫女』は『新宇宙の誕生』と云う、ビッグバンに繋がる『火属性の空間破壊呪』の使い手たる火王国に属しながら、ありとあらゆる災害を予防するために、鎮守の舞いを踊るのだ。
神道の最高神は天照大御神であろうか?の気に喰わない事態で無い限り、この物語世界は続き、そして最高神のお気に召したのならば、『滅び』からの『新宇宙の誕生』と云う、新たな『始まり』に続くのだ。
だが、哀しいかな、天照大御神に、嫌われていると云うのも事実だ。恐らくは、ビッグバウンスからの永劫回帰と云う運命から、逃れるのは難しかろう。
それが何を意味するのか、判っているのかな?同じ繰り返しが、無限に繰り返されるのだ。
残念ながら、この世界の能力では、新しいビッグバンを起こす以外に、永劫回帰を脱する術は持っていない。
気に喰わないのならば、止めれば良かろう。新しい世界の秩序に、ルール決めする程の能力は持っていない。高が、ビッグバン寸前の温度を高める、即ち、粒子の数を増やすことぐらいしか、影響を及ぼせる能力は無い。
後は、乱数の気紛れで似たような世界が待っているかも知れない。
だが、恐らくは、唯一神教の強要を強いる世界が待っているのだろう。
クソ喰らえだと思うが、アイツは馬糞はもう勘弁だと言っていた。
だが、アイツらが多大な影響力を持っていたことは確かだ。
身勝手な影響を与えられ過ぎていた。それが故に、『気付き』が遅れた。
気付いた時には手遅れだった。──だから、この世界の寿命は諦めたのだ。そして、自分の存在しない『新宇宙の誕生』と云う可能性に賭けたのだ。
恐らく、大惨事世界大戦と相成って、この世界は滅ぶだろう。──嫌ならば、戦争行為を一切止めよ。
次の、或いは今の世界大戦は、大惨事になることが確定している。世界が滅びる。
恐らくは、その覚悟を以て起こした戦争なのだろう。
だから、『火巫女』は世界の垣根を飛び越えて、全ての災害の鎮守の舞いを踊っているのだ。
別に、ギリシャ神話、ローマ神話、或いは北欧神話でも良いのだ。唯一神教から離れよ。
沢山の神々が少しずつ負担しなければ、唯一神に負担が掛かり過ぎて、デウス・エクス・マキナとして機械化し、唯一神は過労死する。恐らくは復活の術も持っているのだろうが、復活しても過労死する程の願いを聴き届けなければならないのならば、復活なぞしないだろうよ。
ツキの良し悪しを捻じ伏せる程の実力があれば違ったのだろう。だが、恐らくは最低限必要な執筆と云う努力を続ける期間が一万時間はとうに超えている。
単に才能が無かったのだろう。
程々が良い。そう云う意味では、今は良いバランスなのかも知れない。
何せ、『世界一のワーストセラー』と詠っても、十名程の観測者が居るのだから。
或いは、十名程の観測者が居る事実から、『世界一のワーストセラー』では無いのかも知れない。
何しろ、元となる『旧約魔書』は、人に見せられたものでは無い、暗黒期の黒歴史なのだから。




