第19話:スターの優勝
キクマルが色々学んでいる頃、スターはフライトカーレースで一度は優勝してみたいなと思っていた。
だが、キクマルを見れば分かるように、スターは未だ学びが足りない。
だが、優勝は狙える。ミヲエルに、ちょっとだけ無茶なメソッドを組んで貰えば。
メソッドは今度、キクマルを参考に、仰角を1度から始めて、高度501メートルで仰角45度に到達し、スタートダッシュは最初の1秒で4Gは変えないものの、1G/sで5秒後に9Gまで加速し、サッサと時速1000キロに到達してしまう。
そして、ミヲエルはキクマルに秘策を隠してくれた。
この条件ならば、勝てる!……かも知れない。
9Gまでの秘策を、今回は7回も許して貰えた。
ただ、スターはミヲエルの本当の秘策を知らずにいた。
ミヲエルは、ソレの説明をしない。ただ、キロコアを搭載したなら、可能にはなっている。
ミヲエルには、『光速の貴公子』と云う二つ名があった。
それは、音速を超えることに由来する二つ名だった。
ミヲエルには、スターの秘策は必要ない。己自身の秘策である、『キロコア』の運用によって、二位と大差をつけてゴールする。
果たして、スターが気付くか?とミヲエルは様子見していたが、スターは遂に、『キロコア』の運用におけるメソッドの組み立てをミヲエルに依頼して来た。
スター曰く、瞬間的に12Gまでの加速を、して欲しいらしい。時速1000キロの状態から。
「危ないから、今度もレースで3度しか使えない秘策にしておくよ?」
正直、音速を突破する競い合いはミヲエルはしたくなかった。お互いの機体にどのような影響が起こるか判らないからだ。
だが、機体そのものの性能は、音速に耐え、50Gに耐え、ソニックブームにも耐える設計が為されていた。
スターにも、その性能を備えた機体が用意されていた。
音速を超える競い合い。
中々、スリリングな響きの言葉だった。
そりゃ、後続車に1時間ものリードを保てると云うものだ。
更にスターは、キクマルを見習って、仰角1度から、高度501メートルで仰角45度に達し、高度1001メートルで仰角を0度に、高度750メートルで俯角45度、高度499メートルで仰角1度まで上げるまでを、ミヲエルにメソッドを組んで貰った。
「タイミングの計算は、今回は敢えて行わないよ」
ミヲエルにそう宣言されてしまったが、別に構わないだろう。
空気抵抗その他で、実レースではどう展開するものか、判らないのだから。
計算する下地となる条件を付けて苦労して数値を出しても、誰も喜ばないのだから。
そして、スターは念の為、まとまったお金を確保しておくために、今回のレースは優勝を狙っていた。
メソッドも、ミヲエルにより高速で惑星半周するレースの秘策やその耐久トレーニングやらを施されていたが、何よりも、『キロコア』の扱いに慣れる事が出来なければ、二位にも入れない。
スターは、トレーニングを頑張り、レースを頑張り、そして神頼みまでする始末だった。
結果を言えば、スターは優勝した。
齢を比べればスターの方が一つ年上だが、お互いにとって適齢期に婚約を結び、そして結ばれた。更には結婚一年後には男児を一人、産んだ。
風神国にも利があり、直系の王族に男児を産んでくれたスターは、立派にその勤めを果たしたと言える。
そうしてスターは、風神国王族ОGとして、不老長寿の宿命を受けて、約20年の王妃の座に就き、引退後はミヲエルと共にフライトカーレーサーとして活躍するのだった。




