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八国史  作者: 月詠 夜光
~地の章~

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第15話:レース中盤

 スミマセン、第13話の時刻の設定、時差の計算を忘れていたので計算し直して修正を加えております!

 大変申し訳ございませんでした。

 レース開始1時間が経過。

 スターは、最初の中団より前に、三位を競い合っていた。

 だが、フライトカーの規格として、真っ直ぐに疾走る速度の限界は、時速1000キロが限界。つまり、つかず離れず、三位を競い合っている相手との相対速度は変わらず、又、後方に迫る最初の中団も、近づいては来ない。唯一、ミヲエルの愛機だけが、『キロコア』と云う限界を上回るコアを積んでいる。

 だが、スターの愛機も、三位を競い合っている風神国の補欠の受ける、『風の加護』による追い風を受けていた。

 とは言っても、疾走る速度が速度だ。多少の追い風なぞ、関係の無いレベルで競い合ってはいたのだ。


 それでも、最初の中団は追い風が遅いのか、極僅かずつ、スターと風神国の補欠から、遅れだしていた。


 風神国の補欠機とて、『風の加護』の範囲内にスターの愛機が居るのは判っているが、『風の加護』を切り放せば、後続との距離が離せない事も判っている。

 よって、スターは辛うじて、『風の加護』を受ける範囲内に入っていた。


 前方は、100メートルは離れて二位の機体があり、その更に1000メートル近く前方にミヲエルの機体が疾走っている。


 こんなにも違うのか……と、スターは感心して前方の二機を眺めていた。

 そして、機体のポケットから取り出した、簡易携帯食を一つ、マスクのスロットルに差してレース開始から初めての食事を摂る。


 ──しばらくは、このレース展開が続くのかな……。と、スターは動きが無いことを不気味に思っていた。


 三位との距離は、僅か数メートル。実は、最大7Gの秘策でも、0.708秒で実に200メートル近いリードが引き出せる計算になる。

 スターは、暫くはその秘策を隠すのが展開として重要かな、と思っていた。


 実際には、三位の機体が秘策を実行できる余地があるものか、甚だ疑問だったのだ。

 真似された場合、どう云うことになるものか、展開が予測出来ない。逆に、秘策を絶妙なタイミングで実行した場合、大きなリードを保てる可能性がある。

 しかも、ヘタをすれば二位の機体を追い越すことすら、可能かも知れない。


 三位の機体が動きを見せたらすぐに……。そんな思いで、スターは秘策を秘めていた。


 実際には、三位の機体も今は食事中であり、今すぐ秘策を実行されたら、致命的な遅れを取るのだが、両者とも、そんな事情までは判らない。テレパシーで相手の心理まで読める訳ではないのだ。ただ、念話としてのテレパシーは、今現在でも実行可能だ。


 ──ここは我慢の時間……。そうスターは思い、秘策のメソッドの実行まであと少し手が届かない。


 ──剛毅な者は睡眠を取る。そんな、ミヲエルの言葉がスターの記憶に引っ掛かる。


 ならば、夜を待って秘策の実行を試せばいいのかも知れない。そう思い、意識レベルを確認する。レベル8。ちょっと、高いかも知れない。もしもこの先、コレが上がるのならば、スターは夜に睡眠を取れない。尤も、前日の夜は早めに眠って快眠快食だったのだが。


 レースは未だ、動かない。中盤に差し掛かろうとしていた。


 スターは再び簡易携帯食を食べた。夕食の時間だ。


 ──風神国の人が眠ってくれると良いんだけど……。スターは、そう思っていた。


 時刻は夜10時。遂に、スターは切り札を切った。

 最大加速圧7Gで、降下してから上昇する。

 すると、三位の車体は100メートル以上の後方を疾走っていた。

 だが、その車両に動きは無い。


「よしっ!」


 スターは再び切り札のメソッドを繰り返した。

 何度も、何度も。

 やがて、二位の車体が見えて来た。


「……三位で充分なのよね」


 二位は目指してはならない。目指すなら一位だ。が、ミヲエルの機体は遥か前方で、機影すら見えない。


 夜間だが、車体に点いたライトで目の前は明るい。

 トップを諦める?一抹の不安と云う言葉もある。

 ヘタに一位を取らない方が良いだろう。ミヲエルがムキになって意識喪失なんて事態になったら、洒落にならないし。


 一位を目指さない。二位も狙わない。ならば、狙うは三位だろう。

 スターは、初回だしソレで良いと思っていた。


 三位は、神様の強さだ。一位は鬼の強さ、二位は変態の強さ、飛んで四位は女神の強さだ。


 神を目指すなと云う者も居るが、狙うはミヲエルのカミさんなのだから、神様の強さを目指して正解な筈だ。


 スターはその持論を信じて、ギリギリ三位をキープした。あと一回、切り札を切ったら二位を追い抜くぐらいまで。


 一位を狙って、鬼嫁を目指すか?否、優しい嫁でありたかった。それに、この切り札はミヲエルも知っている。

 ならば、三位で良い。無理に一位を狙うと、逆にミヲエルに嫌われるかも知れない。


 だが、スターは父親の教えを思い出した。──手加減するな。その一言を。


 しかし、これは果たして手加減だろうか?本気だからこそ、神の強さを目指す。だが、神の強さであると同時に、鬼のアラシの強さでもある。

 鬼を荒らすのである。きっと、鬼嫁にはなるまい。

 そして、一位は狂気のアラシで、二位は女神のアラシにして、サタンの強さでもある。

 サタンを目指して、呪いにでも掛かったら堪ったものではない。

 やはり、目指すは三位だ。

 でも、出来れば本気で競った結果、三位と云うのが理想だ。


 スターはパッシングしてみた。前方を疾走るフライトカーもパッシングし返してきた。

 二機は、ほぼ同時に降下し始めた。スターは最初、7Gまでの切り札を切っていたが、三回だけ使える9Gまでの切り札も、二回交えた。


 北西の方角へ向かっていた為、日が沈むのは早かった。

 ゴール時刻は、現地時刻にして午後2時頃になりそうだった。

 各国の代表が、ゴールを見守っている筈だ。──食糧は持ち込みで。

 三位は、充分に誇れる順位だろう。銅メダルが与えられる筈だ。

 二位が銀メダルなのは、銀が『金に(うしとら)』と云う、方角にすれば不吉な方角を示すからだ。

 そして、一位が金メダル。だが、実際には銀メダルに金メッキしたものだ。

 それに対して、銅メダルは全て銅で出来ている。『金に同じ』と書いて銅だ。


 ──うん。充分に誇れる。スターはそう考えた。

 それでも、一位のミヲエルを追うが、ミヲエルは『キロコア』の存在によって、一般のレース用フライトカーよりも最高時速が速い。

 故に、駆け引き抜きで、ブッチギリのトップを走れるのだ。


 実際には、『キロコア』はそれを扱う力量が充分と見做されなければ搭載が大会のルールで禁じられているものであり、今現在、ミヲエル一人にしか扱えないコアだった。

 よって、二位を競い合っているスターも、小細工をしても追い付けないのだ。

 それ程までに、『キロコア』の存在は大きい。最大で1000倍もの出力差もあるのだから、そのくらいの性能があってくれないと、開発者が困るのだが。


 だが、ミヲエル一人にしか扱えないコアを、大会ルールで禁じないとおかしいとは、スターは思っていた。

 実際には、『キロコア』の使い手を募集しているのであり、試験走行に成功すれば、誰もが積めるコアなのだ。

 この条件下で、ミヲエルを責めるのは酷と云うものであろう。

 スターは、次回参加時までに『キロコア』の搭載を目指そうと思っていたが、果たして次回参加時がいつになるものか、全く予想が出来ないのであった。


 恐らく、レース終了後、両者の合意を(もっ)て、婚約が成立し、直ぐにでも結婚へと至るだろう。

 スターには、男児の出産が求められるだろう。

 そうして、スターが男児を無事に出産したら、ミヲエルは風神王の座を継ぐのだ。


 そうやって、王座は継がれていく。

 それは、この八ヵ国世界の摂理(せつり)にも等しかった。

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