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八国史  作者: 月詠 夜光
〜風の章〜

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34/58

第34話:地底国

 一行はフライトカーレースの開催まで至るまで、必要と思われる世界各国を巡っていた。

 最終的に、ゴール地点となる水帝国に居た。その、海岸線沿いに。


 ヴィジーは天星国に賭けて、ミアイは光朝国に賭けた。そして、勝ったアイヲエルに言うのだ。「ズルい〜!」と。


 そもそも、レーサーの素養から違うのだ。上端では、光朝国・氷皇国の二カ国は九十度方向転換するのに、風神国・天星国は百二十度もの方向転換をするのだ。掛かる(加速圧)が全然違う。なのに、耐え切ったのだ。最早、ソレだけでも素養だろう。

 ただ、距離を考えた時に、より良い選択をした光朝国・氷皇国は、嘆く他にやりようが無い。まして、ソレでも角度を付け過ぎていたと言われては。

 結果論、高度超過が敗因だ。ソレも、凄まじいGに耐えての結果なのだから、国の威信が掛かっていたとは云え、責める訳にもいかない。自分達は、ツラいのを想像は出来るものの、実際に体感していた訳では無いのだ。

 想像を超えるGに、半分意識を持って行かれながら角度変更したのだ。

 又、惑星(8th・アース)の半周レースであったが為に、最短コースは複数あったが、果たして最短ルートを正しく選択していたのかは、かなり怪しくはある。


 ただ、レースが終わった今、何を言っても通じない。結果のみが、燦然(さんぜん)と輝くのみだ。


 結果から逆算して、光朝国・氷皇国が最短コースを通ったかは検証され、結果、最短コースでは無かったと云う説が有力となった。

 逆に、風神国・天星国は間違い無く最短コースであったそうだ。

 ただ、高度を計算に入れると、この説は逆転する。

 高度を計算に入れると、光朝国・氷皇国が通ったコースは風神国・天星国より最短コースに近かった。ただ、その差は僅差だ。

 故に、風に乗った風神国が優勝したのだ。


 意識さえ飛ばなければ。高度計をもっと確り見ていれば。光朝国・氷皇国にも勝ち目があったのだ。


 そんな話を聞かされても、二人とも納得する訳が無かった。

 少なくとも光朝国・氷皇国が高度計にアラーム機能を持たせていれば、結果は全く違った筈だ。

 そう云う意味では、ヴィジーの言い分には筋の通らない点がある。


 兎も角、各国はテンコア・システムと云う新しい機体の建造を始める。水帝国・闇夜国も参入して来る。

 だが、水帝国にはスポンサーの当てが無かった。

 そこで、両者にとって渋々、風神国のスポンサーが水帝国の支援をする事になった。

 だが、やはりスポンサーの数は少ない。

 現在(いま)、水帝国は『禁呪』の『不可能論文』の作成から、国の根本からの建て直しを図っていた。

 フライトカーレースは、正に渡りに船だった。


 水帝国も、魔空船を単独で作製出来る事には流石に気付いていた。だが、フライトカーは特許が取られたばかりだった。作製を依頼するか、特許権使用料を支払う必要がある。

 どちらも、かなりの金額を要する案件だった。

 水帝国は、単独で作製出来る利点を活かす為、後者を選んだ。

 結果、天星国は更なる利益を得た。序でに、設計図を持ち出して、水帝国・氷皇国の両国に見積もりを出して貰い、結果、より安い金額を提示した水帝国に作製を依頼する事となった。

 ただ、魔空船のノウハウはあるものの、フライトカーはレース用となるとスピードが違う。当然、違うノウハウも必要となって来る。例えば、機体の気密性であるとかだ。


 問題は、最早、アイヲエルの旅とは、関係無くなった事だった。

 故に、フライトカーレースの件は、手が離れたと言っても良い。

 勿論、アイヲエルの旅の中にはフライトカーレースに関わる件も出て来るだろう。が、ソレはソレで別の話だ。


 アイヲエルの今の興味は、未だ行ったことが無い地底国にあった。

 果たして、どの様な国なのか……。興味津々だった。


 少なくとも、光朝国・闇夜国の地下にある事は確かだった。

 アイヲエル一行は、アイヲエルが「行ってみたい」と言い出した、ソレだけの理由で地底国行きを決定付けられた。


 地底に住む国……、それだけで、アイヲエルには興味を(そそ)られる国だ。

 果たして、採光はどうなっているのか……。特にその一点が気になっていた。

 ただ、ヴィジーの言う話に拠れば、各国からの入口がそのまま採光口になっていると云う話だ。


 そして、水帝国からの地底国への入口だけを見て、八割方、予想がついた。──異常に入口が大きかったのだ。

 それならば、採光口としても問題無かろう。

 ただ、採光出来る時間が限られていると云う話だ。


 それも当然だった。光朝国・闇夜国からの入口にも、採光機能を持たせているほどだ。

 と云うのも、農産物を育てる為に、光がどうしても必要だからだった。

 光無しで育つ植物もあるが、ソレは当然、採光出来ない地点で育てている。独活(うど)とか、モヤシとか、アスパラとかだ。


 そして、迷宮(ラビリンス)は地底国には無く、地下牢(ダンジョン)がそこにはあった。

 曰く、地下牢は迷宮の五割増で厳しい場所だった。


 だが、アイヲエルは地下牢に興味は無かった。

 単に自らの身を危険に晒し、味方の犠牲者を出す事が怖かった。

 ヴァイスの件、再びは無いものと願いたかった。


 最悪は、ミアイやアイヲエル自身の犠牲だ。ソレは避けたかった。

 故に、地下牢で無双〜♪とかの夢は見ていなかった。


 と云うか、何故、王族が牢に入らねばならぬのか?

 そんな必要なぞ無いに違いない。


 少なくとも、アイヲエル自身が悪い事をした自覚は無かった。その支配者ならば兎も角。


 得る嫁も、ミアイ一人で充分。……フラウの責任は取らねばならぬかも知れないが。

 だが、未だ手は出していない。責任を取る必要も無い筈だ。


 何なら、フラウの夫となる男の奴隷を買っても良い。旅が終わった後ならば。

 旅の途中はダメだ。ミアイに何かあったら、アイヲエルにも責任を負いきれない。


 故に、アイヲエルはミアイに向けられる視線にも注意していた。だが、美しいには美しいが、その……肉付きがイマイチなのだ。

 だから視線は惹いても、心までは惹かない。

 ただ、アイヲエルの子を宿した後に、肉付きの豊かさを期待していた。ミアイならば多少の肉付きが良くなっても、子供を産んだ後ならば、ダイエットには力を注ぐだろうが。

 子供を産む時は仕方が無い。ソレこそが王妃の役目なのだから。

 ただ、アイヲエルの嗜好が細過ぎるよりは少しぽっちゃりの方が好みなのは知っている。ただ、その加減が難しいのだ。太り過ぎは論外なのも知っている。

 なので、子を産んだ直後ぐらいが互いにとって丁度良いのだ。

 それを承知の上で、ミアイはスタイルを維持しているのだから。

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