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八国史  作者: 月詠 夜光
〜風の章〜

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33/58

第33話:フライトカーレース

 各車、パイロットが搭乗し、合図を待つ。

 笛が、ピー、ピー、ピーッと三度鳴らされて、準備のサインが出された。

 間もなくピーッと笛が鳴って、スタートの合図と共に、各車、一斉に疾走(はし)り出す。


 風神国と天星国は六十度の角度で、光朝国と氷皇国は四十五度の角度で上空へ向けて疾走る。

 この時点で、差が付いた。

 音速にも近い速度で疾走る車体は、風神国と天星国は間もなく上空千メートルへと到達した。追随して光朝国と氷皇国も到達し、風神国と天星国は六十度の角度で、光朝国と氷皇国は四十五度の角度で上空五百メートルを目指して疾走る。


 ココで、風神国が降下する角度を少し和らげた。天星国は、上空五百メートルまで角度を維持する。


 上空五百メートル。風神国が一歩リードし、そのまま角度を水平に保って疾走る。天星国は上空五百メートルを通過してから、大体二十度ぐらいの角度で高度を少し上げる。


 光朝国と氷皇国は一歩遅れを取る。後は、ほぼ直線にゴールを目指すのみだ。


 天星国は、高度五百メートルに到達すると、一度程度に高度を下げ(なが)ら、惑星(8th・アース)の弧に沿って飛行して行く。他のチームは、僅かに上昇していることに、遅れて気付き、軌道修正をする。


 ただ、風の抵抗は、風神国のパイロットの能力に因って、追い風を受けていて、最も有利だった。

 結局は、それが勝敗を分けた。

 最後の直線、不思議なぐらい、風神国のフライトカーは伸びを見せた。

 何せ、亜音速で疾走る上、風が追い風か向かい風かの差は、空気抵抗に於いて倍以上の差を見せ付けた。


 チートだ、ズルいぞと言われながらも、アイヲエルの弟は堂々と優勝トロフィーを受け取った。

 アイヲエルの掛け金は大した事は無かったとは云え、勝ったと云う事実に価値がある。


 もしかしたら、他の国が勝っていた可能性があった。角度が最適か否かは、結果だけからは解らない。

 ただ、天星国は一つミスをした。高度五百メートルを下回る迄は、下る角度を変えなかったのだ。

 疾走る距離は長い。昇る角度・下る角度・ソレラの変換点等に各国のチームは課題を見出した。

 高度計。ソレを頼りに課題高度をクリアしながら、どのくらいの加速をどの方向・どの角度に向けるのかは、各国、研究の余地ありだった。


 今回、風神国が優勝し、天星国が準優勝したのは、早めに課題高度をクリアして直線に近い加速に専念出来たからだ。

 その割には、光朝国・氷皇国のチームも進行速度には大差が無かった。

 もしかしたら、上下各三十度ぐらいで疾走っても、速かったかも知れなかった。

 光朝国・氷皇国の敗因。ソレは、機体にカスタマイズが出来なかったからに他ならない。角度としては、悪くなかった。むしろ、二カ国が先行していた可能性もあった。

 風神国の勝ち方は、完全にチート(ズルい)。パイロットが風を操るとか、他のチームは「聞いてません!」と主張するのも当然だった。だが、パイロットの能力で勝ってはいけないと云うルールもまた、無いのだった。


 後日、口論となるのだが、パイロットの能力を発揮するのはルール違反か?と云う議題になって、いや、パイロットの能力で勝つのは戦略として当然だろうと云う話になり、ルールとして認められた。


 尚、風神国をスタート地点にした以上、ゴールは水帝国で、水帝国からすれば、「一言も聞いてませんけど!」と云う苦情を訴える案件となった。

 大会主催側からは、「スポンサーを見付けて下さい」と云う話になり、水帝国は次回の開催に向けて必死でスポンサー探しをする羽目になった。

 尚、氷皇国がパイロットの腕前を上げつつも、テンコア・システムを搭載したフライトカーを製作し始めた件は、天星国の技師経由で各国に知られる事になり、氷皇国は単独での優位を築くことに失敗した。


 又、風神国のパイロットたるアイヲエルの弟は、公爵に任じられる事で王族に連なる超越者となり、その名誉は次なるパイロットの選出に大きく影響を与える事になる。


 尚、賭けの胴元が二割もの掛け金を手許に入れた件に関しては、強く責められる事になり、次回以降は七%程度が好ましいと判断されることとなった。

 その件に関しては、道理で倍率差が小さかった筈だと、今回賭けた者達全員から、(うら)みを買う事になった。

 なので、賭けの胴元は運営側が次回以降、受け持つことも決まった。


 やはり、神は何もかも知っているのだろうか?

 神子のアイヲエルが賭けに勝つ事で、そんな話が持ち上がった。

 勿論、アイヲエルは風魔法に因る音速に近い追い風と云うチートを予想済みで賭けたのであり、そう云う意味ではチートな勝ち方であった。

 ただ、疾走る角度については諸説挙がり、±二十七度が最適と云う説が有力視された。だが、実際には高度を到達してからの運転と云う側面があり、±三十度が最適と云う説が現実的だった。

 何しろ、高度計にアラーム機能を付けても、操作はソレに遅れるからだ。

 そもそも、高度計にアラームを仕込んだのが風神国と天星国の二カ国であり、光朝国と氷皇国はそんな事は報せられてもいなかったのだ。

 故に操縦に遅れを取ったと言われても、そんな事は知らない方が悪い。


 全く、酷いルールだとは思わないだろうか?『知らない方が悪い』と云うルールは。

 だが、情報を秘匿する事を美学のように思う者が居ることも事実である。


 何でもかんでも報せれば良いと云う話では無いと云う事実も解る。

 だが、流石に報せなさ過ぎでは無いだろうか?


 兎も角、フライトカーレースが盛況に終わって、何よりである。

 尚、闇夜国も表沙汰に出来ないスポンサーの支援を受けて、次回の参加を打診して来たが、車体には何の広告も無しでは人気が出る筈も無く、半分趣味としての参加を申し出た。

 成る程、今回の賭けの胴元は、闇夜国の者であった訳である。非合法スレスレの行為だったが、確保した金額が問題なのであって、賭け事そのものは、レースを盛り上げるのに一役買った訳である。ソレは、流石に責めるのは酷と云うものだ。

 但し、次回からは開催側が管理する。

 ソコに闇夜国が干渉する事そのものは、()して問題では無い。取り分を全額持って行くのでもない限り。

 闇夜国は、どうやら積極的にチートを狙うようであった。


 尚、全車体に高度計のアラーム機能の設置が義務付けられた事は、当然と言わざるを得まい。

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