第19話:『呪□耐性』と『破□耐性』
今話も文末グダってます!仕様です!
水帝国行きが決まり、魔空船の予約も取った。
後は乗るだけ、着いたら降りるだけ。乗っている最中の景色も美しかったのだが、着いた先の景色も中々に美しかった。
「ふあああ……!」
一面に水が広がるその土地を見て、アイヲエルは歓喜した。
「中々、美しい眺めですね、師匠!」
「……まぁな。見る分にはな。
住むとなると、中々に不便らしいぞ」
「コレなら、水は取りたい放題ですね!」
「……待て、アイヲエル。貴様、どれ程の水を得るつもりだ?」
「んー……魔空船一艘分?」
「盗みはいかん!水と言えど、量が大問題だ!」
と、ヴィジーに諭され、大人しく諦めるアイヲエルでは無い。
「はーい。……怒られちった」
「諭しただけだ、怒った等と、人聞きの悪い……」
ヴィジーは文句をブツブツと言いながら、呪い除けの呪を放っていた。
「儂は王宮に顔を出す。それまで……そうだな、この宿ででも待っていろ」
そう言ってヴィジーが指定したのは、恐らく水帝国一番の高級宿だ。宿賃はヴィジー持ち、経費はある程度、風神国も負担する。
自国に迷惑を掛けていると知らないアイヲエルは、大人しく宿に居たが、一頻りカードを遊び終えると、宿の者に訊き、迷惑になっている水の量を訊き出すと、その分の水を回収する。それ以上は一滴も手を出さない。コレが、アイヲエルの妥協のラインだった。
きっと、その量ですら、ヴィジーは再び諭して来るだろうとアイヲエルは思った。だが、住人が迷惑に思っていると云う言い訳が出来る。言い訳が出来れば、論破出来る可能性が出てくる。だからといって、論破出来ればそれが正しい論理なのだと云う証明は、誰もした事が無いが。
何にでも、例外がある。例外の無いものがあったら、『例外の無い』と云う例外になる。
アイヲエルはそれで満足すると、「ちょっと出てくる」と言って宿の外に出た。ミアイが付き添うと言うが、「すぐに戻る」と断って、一人街を歩いた。
そうして、住民に訊いて廻り、水が公害レベルの邪魔物扱いされていることを確認し、一部は回収して廻った。
一廻りすると、宿に帰る。だが、ヴィジーは夕飯時まで帰って来なかった。
そして、帰るなりアイヲエルの名を呼んだ。
「お前!水を回収して廻ったろう!」
「迷惑だとまで言っていたから回収しましたが」
「チッ!それでも、水はこの国の財産だ!」
「……この場で全て破棄しますか?」
「クッ!ああ言えばこう言う!」
「──で、どうします?」
「……今現在、確保している分は見逃す!だが!今後は一切を控えよ!」
「……一切を?」
「言葉の綾だ!常識の範囲内でな!」
ヴィジーは、アイヲエルが屁理屈を捏ねることを見越して言い含めた。
「兎に角、国際問題になることは控えよ!」
「……水帝国の水で国際問題、ねぇ……」
その気になれば、無限とは言わない迄も、幾らでも創り出せるものだ。国際問題になるとしたら、言い掛かりに近しい。
言ってみれば、台風や竜巻の被害を風神国のせいにして、国際問題にするようなものだ。ただ、一切の責任が無いかと言われたら、バタフライ・エフェクトレベルの責任はあるのかも知れない。勿論、イチイチ弁済を求めるなぞ、土台無理な話だ。
……『呪□』も、同じ理由で黙認されているのだろうか?或いは『破□』もか。
人が□んだ。ソコに原因を感じても、殺意は無かった。
と云うか、ソレをゲームにしている会社もある。
『呪い』を掛けられる者には、それなりの理由がある。……らしい。
即□効果。耐性が無ければ、簡単に□ぬ。
ソコまでの影響力を与える能力を持った存在に育ててしまった。その責任を取るためか?
でも、最終的には『公開処刑』にするつもりなのだろう?
判っているんだよ、天界からのメッセージで。
だが、その一方で、ある宗教の教祖になる意志は無い!或いは既に存在しているのかも知れないが、好き者同士でよろしくヤッていれば良いだろう。
リヴァイアサンはソレをお望みらしいがな!
兎も角、自分の責任を感じた人間は、どうやら見本を見せないと評価されないらしい。
政治家さえも要らないと言っていたが、警察まで要らないとは言われていない!
しばらく罪の意識に潰されそうになっていたが、何かが起きる時には、必ず、他の誰かの影響力も働いていた!
或いは、その他の誰かにとっても不本意かも知れないけれど、『イジメ』なんて手段で育てて来たからには、ソレで経験値を積んできた奴等も同じく『サタン』だろう!
確かに、左端まで極める過程で、極右と似た経験も積んだ!
野菜に因る冷蔵庫イジメを繰り返していた巨匠ですら、『サタンへの呪い』の前には、アッサリと『呪□』されてしまうらしい。
恐らく、冷蔵庫が強過ぎて、イジメへの反撃一発で『呪□』されてしまったのだろう。明らかに敵役を創ってしまい、ソレを強化して、主人公が乗り越えてを繰り返す内に、『サタンへの呪い』がイジメた側へと返されてしまったが故に。
だが、イジメられた側は大人しく泣き寝入りするか、自□しろとでも言うか?!
ああ、□首するのは良い手段かも知れない。
だが、このままでは□んでも□に切れない!
せめて、傑作一本、仕上げなければ!
その後なら、煮るなり焼くなり好きにせよ。
ああ、主人公には相応の装備が必要だな。
一つは、アルフェリオン結晶の刀。
もう一つは、ああ、やはりアレだろう。
必要な事だ、無理矢理にでも手に入れさせよう。
俺は自らの罪と向き合い、それでも、法律には出来るだけ逆らわず、明確に逆らったのは一度キリだ。
コントロールされていたかも知れないが、この一度キリが致命的だった。
□神の不□の封印を取り除かねばならなかった。
さもなくば、□塚エンドと云うバッドエンドに導かれていたのだから。
或いは、塚のエンドは仕方が無いのかも知れないが、今度は墓にも入れないエンドと云う可能性も出て来る。
『野』は俺にとって、呪われた名前だ。ソレに関わっているのだから、仕方あるまい。
末は血祭りか火祭りか。
どちらにせよ、興味が無い。
せめて、死に方を選べれば良いのにな……。
選ぶなら、今すぐの心筋梗塞か……。
デ□ノートが真実になれば良いのにな。
でも、自分の名前をそのまま記すには、流石に度胸が足りないな。死に損ねた時のことを考えると。
どうやら、俺には『呪□耐性』と『破□耐性』があるみたいだからな!




