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八国史  作者: 月詠 夜光
〜風の章〜

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第12話:王の権限

 オチが支離滅裂ですが、仕様です。

 グラハムを置き去りに、アイヲエル一行は謁見へと立ち向かった。

 この際、ヴァイスの状態を報せる為、奴隷娘達も一緒である。


「ほぅ……それで、奴隷を玉座の間に入れたと?」


 火王国王は、どうやら不満気な様子である。

 恐らくは、国の玉座の間を奴隷に(けが)された、と云う辺りが理由であるようだ。


「はい。単刀直入に申し上げて、『鳳凰』の羽を一枚、頂ければ幸いです」


「……何故に?」


「竜人の奴隷の仮死状態を解除する為にでございます」


「奴隷なぞ、買い替えれば良いではないか」


「死んではいないのです!それに、竜人の奴隷と云うのは、大変珍しく──」


「断る!貴様の言動には大義が無い!」


 アイヲエルは拳を握り込んだ。別に、殴り掛かる為ではない。


「故に引き下がれ。今回の件は聞かなかったことにしてやる」


「貴方はそれでも国王か!」


 アイヲエルは、火国王に食って掛かった。


「国王ともあろうものが、救える生命一つ見捨てると言うか!

 ならば、貴方に王の資格は無い!」


 大変な事を発言した。ヴィジーはソレに気付いたものの、放たれた言葉は取り返しがつかない。


「アイヲエル!失礼を申すな!」


「しかし!師匠!」


 急速に、火国王の王気が喪われてゆく。超越者としての権限を取り上げられた結果だ。

 ヴィジーは大変な事になったぞ、と事態の深刻さを把握し、先の方針を立てる。


「良いか、アイヲエル。風神国は、仮にも『神』の名を冠しているだけあって、例え神子と言えど、他国の王の座を引き落とす権限を握っておる。先に教えておけば良かったな。

 問題は二つ。跡継(あとつ)ぎがグラハムであることとソレを任命する義理がお前にはあること。もう一つが、グラハムは国際的に問題発言を放っていて、(とつ)ぐであろう王族が、恐らく居ないであろう事だ」


「ソレの、何処に重大な問題が……?」


「火王国の王族の血が途絶える……」


 アイヲエルが、ようやく事態の深刻さに頭が回る。


「まさか……この世から、火の属性が喪われる……?」


 ヴィジーが(うなず)く。


「そんな……あんな奴でも、嫁の一人ぐらいは……」


「……最悪、お前の妹の一人が人身御供(ひとみごくう)だ」


「そんなもの、断られるに決まってるじゃないですか!」


「だからこそ、重大な問題なんだ……」


 ヴィジーは次善策を考える。


「儂の子孫の一人を説得しようか……」


「嫌がるのでは?」


「それでも、公式の場で断っていない以上、グラハムには断る選択肢が無い」


 ヴィジーの子孫は、説得次第と云うことだろう。


「この際、多少年季の入っている、()き遅れでも文句は言わせぬ!」


「文句を言ったら……?」


「王になれぬだけよ!」


「うわぁ、可哀想……」


 ヴィジーの子孫の女性で、嫁き遅れと云うと、『騎士姫』として有名な娘が居る。鍛えて引き締まった身体と云うだけで、顔は美人なのだ。しかも天星国には(しっか)りとした化粧の技術がある。グラハムに文句は無いだろうが、尻に敷かれるのは目に見えている。

 まぁ、夫婦の関係の良し悪しなど、尻に敷かれていても悪いとは断言出来ぬものだ。人それぞれ。ただ、グラハムには選択肢が他に無いだけの話だ。

 そして、天星国の天体物理学の知識を以てすれば、火属性の空間破壊呪の不可能論文を書き上げる事など、どうということではあるまい。グラハムを犠牲に国が豊かになるのなら、それが国益だ。例え王が犠牲になろうが、民が豊かになれば民は国に感謝をするものだ。


 『騎士姫』であれば、火王国でも歓迎されるだろう。

 問題は、跡継ぎを産めるかどうかの問題だが……。


「フム、その路線で問題無かろう。

 まぁ、グラハムが王妃に国民からの人気で負ける事態は想定し得るが、ソレは奴の努力次第じゃ」


 身体を鍛えている為、出産の体力もあるだろうとの判断だった。

 前火王は、超越者たる能力の喪失に狼狽えるばかりだし、次手の策も立てた。後はソレを遂行するのみだ。


 幸い、グラハムはまだ事態に気付いていない。


 となると、次に向かうは天星国だ。

 やれやれ、忙しいことだとアイヲエルは他人事のように思っていた。


 通例、王座の譲渡は王自ら()り行なうが、前火王は既に王の資格が無い。

 不老の超越者権限も持たず、ただ王たる資格を喪った。

 これで、アイヲエルの言い分に間違いがあればこんなことにはならなかったのだが、前火王は人一人の生命を軽んじた。故にアイヲエルが王の資格を奪う権限を持った。

 自業自得である。

 世の中、自業自得と云う運命は避け難い。

 だが、だからこそ、自分の手柄で自らの得を得る者が多いのだ。

 犯罪をして奪ったものは、真の意味で得られることは無い。判明した段階で返さねばならない。

 それなのに、奪う者の何と多いことか。


 恐らくは、犯罪では無い形で悪い事をして奪う者もまた、多いからであろう。

 違うのだ。悪くても、悪いなりのルールがあるのだ。それが法律と云うものだ。

 法に背かなければ何をしても良い?違うだろう。自らの信念に反する事は、してはならぬだろう。

 だからこそ、『悪役』を押し付けられたら何もかもの言動が悪事に繋がる事が、自らの信念に反していて、悔いる事になるのだから。

 『バッドエンド』を喜んで、その運命に導かれるべく、努力を放棄した者が、『バッドエンド』を回避するべく努力している者を嘲笑うのが、よく判る。


 ああ、信念一つも持たない者が多過ぎるからか。

 その信念を形にしているのが、クリエイターだ。

 でも、寄って集って『悪役』を押し付けて来る奴の多さから、俺は悪役になってしまったのだ。

 お陰で、言動一つで人は死ぬし大震災だって起きたりする。全く、信念に反している。

 『不殺』の封印を解いた奴が居るんだ。

 ソイツに責任は無いのか?!殺意だって向けて来たのに。

 全く、世の中は不条理に出来ている。

 それもこれも、メガ悪いせいかよ!

 まさか、俺がオメガなのか?

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