第082話 ついでに儲かった!
坂を下り終え、造船場までやってきたのでそこら中に水たまりができており、びちゃびちゃだった。
「雨の影響か」
「冠水してたからな。今頃、皆、その後始末ってところだ」
「お前はしなくてもいいのか?」
「軍の要請が優先だよ。お得意様だからな」
それもそうか。
俺達はカルロの案内で右に曲がり、通りを歩いていく。
すると、森に行くための東門と同様に門が見えてきた。
門の周りには西門の倍以上の兵士の姿が見える。
「ちょっと俺が話してくるから待っててくれ」
カルロがそう言って、門の方に向かったので俺達はこの場で待つことにした。
すると、兵士と話をし始めたカルロがすぐに手招きをしてきたので向かう。
「この者達か?」
兵士が俺達を見て、カルロに聞く。
「ああ。ニーナは知ってるだろ? 妹だ」
「もちろん知っている。よく薬を卸してくれるからな。それでこの2人は?」
兵士が俺とエルシィを見る。
「友人だ。魔法学校の同級生なんだ。こっちが俺の同級生でこっちがニーナの同級生になる。結婚したらしくて新婚旅行中なんだと」
カルロが俺達を指差しながら紹介した。
「それは羨ましいな。確か君達はイラドに留学してたか?」
「そうそう。だからこの2人はイラドの人間になる。優秀な錬金術師なんだぜ」
今さらながら外国の人間がこの仕事を受けてもいいのかね?
軍って機密が多いよな?
「ほう……それは期待できるな」
「そういうわけで俺達4人が今回の仕事をすることになる」
「ふむ……よかろう。では、軽く説明をするから中に入ってくれ」
兵士が門近くにある3階建ての建物を見る。
「わかった」
俺達は兵士に促され、中に入る。
建物の中は簡単なテーブルと椅子があるだけの質素な部屋だった。
「かけてくれ」
俺達が並んで席につくと、対面に兵士が座る。
「まずは自己紹介をしよう。カルロとニーナは知っていると思うが、ターリー海軍のエルディア支部で少佐を務めるアルバーノだ」
少佐ってかなり偉いな。
見た目が30代くらいなのにすごいわ。
「イラドから来たレスター・ハートフィールドだ」
「妻のエルシィ・ハートフィールドです」
「ウェンディでーす」
自己紹介をし、頷いていたアルバーノがウェンディを見て、固まった。
そして、目をこする。
「あ、使い魔なんです。人形っぽいですけど、使い魔です」
「使い魔でーす」
「そ、そうか……珍しい使い魔だな……いや、失礼。御二人はイラドから来たとのこと。はるばるようこそ。やはり観光かな?」
さすがに探りは入れてくるか。
「新婚旅行中にヤークの町でニーナに会ったんだ。それで同級生だったカルロもいるし、有名な観光地だったから寄っただけだ」
「ふむ……」
少佐がニーナを見る。
「卒業以来だったからびっくり。なんかお店を開くためにお金集めをしているらしいよ」
「ほう。それでこの仕事か。イラドで稼ごうと思わなかったのか?」
少佐が聞いてくる。
「最初は新婚旅行がメインだったんだ。でも、国を出ると、食事の質に圧倒的な差があることに気付いた」
ちょっと嘘。
「ああ……なるほど」
少佐も知っているらしい。
「俺達は孤児で家族がいないし、イラドで生まれ育ったが、別にイラドに思い入れがあるわけでもない。だったら自分達が住みやすい地で店を開いて、そこに永住するのも良いかもなって思ったんだ」
ここに嘘はなし。
「それは悪くないな。確かにちょっと憧れる」
「少佐、そういうわけで報酬には色を付けてやってくれよ」
カルロ、良い奴。
「まあ、わかった。仕事というのは無人島にある船の修理だ。できるか?」
「俺はそれ専門の職人だぜ? この3人も優秀な錬金術師だし、ウチの親戚の店で船の部材制作の仕事もしていた。問題ない」
「サッキーニ資材店か。なら大丈夫だな」
やっぱり地元だけあって知り合い同士だし、詳しく知っているんだな。
「すぐに直してやるぜ」
「うむ。それとニーナ、薬を少々、分けてもらえんか? これから無人島に行くのだが、薬が足りていないらしい。それに予備もいるし、発注したい」
「いいけど……レスター先輩達が作ってなかったですっけ?」
あるな。
「売ってもいいか?」
「ウチで買い取るより軍に直接卸した方が高値になりますからどうぞ」
ニーナ、良い奴。
「少佐、実はポーションならストックがかなりある。この数日の雨で外に出られなかったからニーナの店で売ろうかと思って作っていたんだ」
「ほう! 見せてくれ」
テーブルにポーションとハイポーションを出す。
「同じようなものが15個ずつある」
「ほう……」
少佐はポーションを手に取り、じっくり見だした。
「そんなにじっくり見なくてもAランクってわかるだろ」
「うん。どう見てもAランクの回復ポーションだよ」
さすがはカルロとニーナだ。
ぱっと見でランクがわかる。
「確かにかなりの質だな。これが15個ずつか……」
「レスターはめちゃくちゃ優秀な錬金術師だからな」
「エルシィもね。エリート夫婦」
この兄妹、ホント良い奴。
「素晴らしいな。これならポーションを5000ゼル、ハイポーションを1万5000ゼルで買い取ろうじゃないか」
高いんだが、ポードの時のことを考えると、随分と安く感じてしまう。
とはいえ、念のため、ニーナを見たが、深く頷いたので十分なのだろう。
「わかった。じゃあ、買い取ってくれ」
魔法のカバンから残りのポーションを出していく。
「感謝する……すまん! 誰か手伝ってくれー!」
少佐が窓を開け、声をかけると、数人の兵士が入ってきた。
「どうしました?」
「このポーションを例の船に乗せてくれ。それと30万ゼルを持ってきてくれ」
「はっ!」
兵士達は部屋の隅にあった木箱にポーションを入れていく。
そして、ポーションが入った木箱を外に持ち出し、しばらく待っていると、1人の兵士が戻ってきて、封筒をテーブルに置いた。
「確認してくれ」
少佐に促されたので封筒の中身を確認すると、確かに30万ゼルが入っていた。
「確かに」
「うむ。感謝する。では、そろそろ参ろうか。ついてきてくれ」
少佐がそう言って立ち上がったので俺達も立ち上がる。
そして、建物を出ると、西門を抜けた。
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