第071話 しらー
加工した木材に防腐剤とオイルを錬成する。
すると、ベージュ色だった木材が濃くなり、表面に艶や深みが出てきた。
「良い感じだな……ニーナ! 完成したから魔法のカバンに入れてくれー!」
作業を終えたので森の方で腰を下ろしていたニーナを呼ぶ。
「はーい!」
返事をしたニーナが立ち上がり、こちらにやってきた。
「おー! 良い感じの色合いですね。これなら買い取りに期待しても良いかもしれませんよ」
ニーナはそう言いながら魔法のカバンに木材を収納していく。
「せんぱーい、いい時間だし、ご飯にしませんかー?」
エルシィがそう提案しながらウェンディと共にこちらにやってきた。
「そうするか」
ニーナが木材を収納し終えたので敷物を敷き、女将さんが作ってくれた昼ご飯を食べる。
メニューはサンドイッチであり、ハムや卵、さらには鶏肉などの様々な具材が挟まった色んな種類があり、どれも美味しい。
「こうやって外で食べるのも良いものですね」
ウェンディがサンドイッチを食べながら嬉しそうに言う。
「まあ、そうだな」
「良いですよねー。先輩、午後からですけど、どうします?」
うーん……
「魔力はどうだ?」
「私はもう1本くらいならできるとは思いますね。それでギブですけど」
「私はもう無理です。レスター先輩やエルシィほど魔力が高くないんで」
ニーナはもうダメか。
まあ、俺達だけでやってもいいが……
「午後からは採取の方をちょっとやって帰ろう。無理することでもない」
初日だし、まずはいくらで売れるかの確認だけでもいい。
「そうしますか。本当に良い品質の薬草が生えていますし、そっちにしましょう」
「そうするか」
俺達はその後、食事を終えると、森で採取を始めた。
そして、1、2時間ほど採取をし、品質の良い薬草や毒消し草を採取し終えると、帰路につく。
「良い木材が採れるし、薬草なんかも良い品質ですし、良い森でしたね」
「確かにな。土壌が良いのかもしれん」
大農業地帯らしいし。
「レスター先輩、採取した薬草なんかはどうします? ウチで買い取っても良いですし、旅をされているわけですし、ポーションなんかにして持っておくでも良いと思います」
エリクサーがあるからなぁ……
「作ったポーションやキュアポーションを買い取れんか?」
「もちろん、買い取りますよ。ポーションの需要がなくなることなんてないですし、軍がいくらでも買い取ってくれますからね」
ポーションはそうだろうな。
「じゃあ、ポーションにするからそっちを買い取ってくれ。材料を売るよりは良いんだろ?」
「もちろんです。品質の良いのを頼みますよ。軍は品質が高いポーションをより高く買い取ってくれる傾向にありますから」
命を懸けて戦う連中だからな。
俺達は話をしながら歩いていくと、町に戻り、西門をくぐった。
そして、行きと同じようにニーナが兵士達と軽口を叩き、造船場に戻ってくると、坂を登っていく。
「最後の最後にこの坂か」
「ちょっときついですね……」
「外で動いた後のこれに関してはさすがに地元の私も思うことはありますね」
森に行った帰りにこれだからな。
俺達はぐちぐち言いながら坂を登っていくと、ニーナのはとこのおじさんの店に入る。
「「あー、疲れた」」
俺とエルシィが口を揃える。
「夕方まで時間があるし、宿屋で少し休んでください……おじさーん、ただいまー」
ニーナが受付にいる店主に声をかける。
「おかえり。どうだった?」
「やっぱり先輩達は違うね。すごく良い木材ができたよ」
「ほう? じゃあ、ちょっと裏で確認するか」
「うん……すみませんが、ちょっと待ってもらえますか? さすがにここでは出せないんで」
ニーナが謝ってくるが、受付しかない狭いこの場所であの数メートルはある木材は出せないだろう。
「ああ。待ってる」
頷くと、2人が奥の部屋に入っていったのでそのまましばらく待つ。
すると、10分程度で戻ってきた。
「待たせたな。確かに見事だった」
店主が満足そうに頷く。
すると、対おじさんに定評のあるエルシィが前に出た。
「いくらですかぁ?」
エルシィの甘い声を聞いたニーナがちょっと眉をひそめる。
「うーん、そうだな……まず大きい方の部材は25……いや、30万ゼルで買い取ろう」
5万上がったぞ。
「やったぁ!」
エルシィが満面の笑みで喜んだ。
腕の中にいるウェンディも両手を上げて喜んでいる。
以前、あざといエルシィのことを見て、自分のことを凛々しい女性と評した姿はまったくない。
代わりにニーナが白い目で店主を見ている。
「それで小さい方の2つなんだが……」
「どうですかぁ? 私とぉ、ニーナちゃんが頑張って作ったんですぅ」
「ああ、とても良かったな。20……これは25万ゼルで買い取ろう」
店主はチラッとニーナの方を見て、値段を変えた。
1つはニーナの分だから俺達の儲けは55万ゼルか。
かなりの儲けだ。
「わぁ! ありがとうございまーす!」
「おじさん、ありがと……」
ニーナはいまだにちょっと白い目でおじさんを見ている。
「気にするな。それで今後はどうするんだ? また納品するか?」
そうだな……
「ちょっと聞きたいんだが、これは規格が決まっている舩の部品か?」
「そうなるな。だからじゃんじゃん作ってくれればいい。いくらでも買い取る」
午前中だけで55万ゼルの儲けだった。
2回目はもっと早いだろうし、これはかなり儲けられるかもしれんな。
「ニーナはどうする?」
「さすがに明日は店の手伝いかな?」
となると、俺達だけか。
まあ、魔物や獣が出る気配はなかったし、出ても雑魚らしいからどうとでもなるか。
「できたら店の人間を呼べばいいんだっけ?」
ちょっと面倒だな。
「そうだね……おじさん、魔法のカバンを貸してもいい?」
ニーナが店主に確認する。
「大丈夫か?」
「友達だから大丈夫。めちゃくちゃ真面目な2人だし」
「ふーん……まあ、お前がそう言うならいいか」
魔法のカバンを貸してくれるらしい。
「エルシィ、どうする?」
「私は良いと思いますよ。せっかく防腐剤やら何やらを作りましたし、もうちょっと作りましょう」
それもそうだな。
「店主、明日、また森の方に行って、もうちょっと作ってくる」
「頼むわ。これだけの質なら大歓迎だ。ほらよ」
店主はそう言って代金をくれたのでニーナと分け、店をあとにした。
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