第058話 ウチの旦那!
翌日、この日はニーナが朝から来ていた。
「ニーナちゃん、昼過ぎに着くって言ってたけど、そろそろじゃない?」
時刻はすでに11時過ぎだ。
「陸地は見えてる?」
「見えてる。大きな山があるよー」
確かにエルシィとウェンディが張り付いている窓の方を見ると、かなり標高の高そうな山が見える。
「じゃあ、もうすぐね。お昼を食べたらすぐに着くと思う」
「一緒に食べるー?」
「いや、ちょっと準備をしないといけない。着替えとか散らかっているからね。昼ご飯を食べたら来るから一緒に降りましょう」
ニーナがそう言って立ち上がった。
「わかったー。また後でねー」
「うん。昼食ぐらいでエルディアの町並みが見えだすと思うからせっかくだから見てよ」
ニーナは笑顔でそう言うと、部屋を出ていった。
「先輩、先輩、すごい山ですよ」
エルシィが手招きしてきたので立ち上がって窓の方に行く。
そして、外を見ようとしたのだが、エルシィとウェンディがいるのでよく見えない。
すると、エルシィが窓に張り付いているウェンディを抱え、見えるようにしてくれた。
「ああ……そういうことか」
ニーナが優しいと言った意味がわかった。
俺が2人に譲っていたからだ。
「ん? どうしました?」
「いや、でかい山だな」
窓から見てみると、かなり大きい。
富士山よりも大きいように見える。
「登山とか良いんじゃないですか? 私、あの頂上まで行きたいです」
ウェンディがとんでもないことを言いだした。
「無理」
とてもではないが、あんなところまで登れない。
「ウェンディちゃんは登山しないじゃん」
ウェンディは抱えられているか、飛んでいるかだからな。
まず歩かない。
「飛んで行けますかね?」
「やめとけ。風が強いと思うから飛ばされるぞ。山は遠くから見るもんだ」
疲れるし、何よりもあんな高い山を研究職でロクに運動ができない素人が登ってはいけない。
前世でも登山というのは普通に死者が出るくらいに危険なものなのだ。
というか、あれ、火山じゃないか?
「ですかー」
「それよりもイルカとクジラは見えたか?」
多分、反応的に見てないだろうけど。
「いないです。たまに跳ねる魚はいるんですけどね」
「本当にいるの? 私はまずそこを疑っている」
「むむっ、レスターさん、次の国に行く際も船を利用しましょう。今度こそ、見つけてみせます」
エルディアにイルカの触れ合いコーナーみたいなものはないのかね?
まあ、おもちゃだと思われたウェンディが連れ去られていく光景しか浮かばないけど。
俺達がそのまま山なんかを見ていると、昼になり、ウェイターが昼食を持ってきてくれたので食べだす。
もちろん、ウェンディの分もあったし、美味しい肉料理で満足のいくものだった。
そして、昼食を終え、食後のコーヒーを飲んでいると、窓の外に町が見えてくる。
「あれがエルディアですか」
「すごい町ですね」
「確かにな……」
エルディアの町は港町のようだが、海のすぐ後ろにある丘の急斜面に沿って階段状に建物が広がっており、要塞のように見えた。
建物は密集して建てられ、丘の斜面下にも工場なんかが見えているし、海には多くの船がある。
「なんであんな感じに町を作っているんですかね? 見る分には綺麗ですけど、坂ばっかりで住みにくくないんでしょうか?」
確かに大変そうだな。
車でもあればいいんだろうが。
「前世でもああいう町はあった。理由の1つは津波や高潮対策だろうな。海が近すぎるからそういう水害が多いんだろう。もう1つはニーナが言っていたように海賊が多いからだ。あの町の作りならどこからでも海が見える。海賊や敵の艦隊が来てもすぐに見つけることができる」
実際のエルディア事情は知らんがな。
ニーナに聞けばいいだろう。
「なるほど。ちゃんと考えられているんですね」
「先輩、かしこーい!」
ありがとよ。
「しかし、すごい町ですね。ポードにはなかった風景です」
「イラドにもなかったよー」
多分、海沿いにもないだろうな。
俺達は窓からエルディアの町を眺めていると、ノックの音が部屋に響く。
『おーい、入ってもいい? ちゅーしてないよねー? それは夕日が沈む光景が見られる宿屋まで取っておいてー』
ニーナだ。
「入っていいよー」
エルシィが華麗にスルーして許可を出すと、カバンを持ったニーナが部屋に入ってきた。
「おっ、町が見えてる感じ?」
ニーナがそう聞きながらこちらにやってくる。
「うん。すごいね。なんであんな段々状の町なの?」
「あー、それね。よく聞かれるわ。夏になると、たまに海面の水位が急上昇することがあるんだよ。そうすると、普通に床上浸水しちゃうんだよね。だから住民は最初から上の方に避難しているんだよ。下にあるのは対策済みの造船場なんかかな。あと、エルディアの西には大農業地帯があって、エルディアはそれをターリーの各地に運ぶ玄関的な町で重要な拠点なんだよ。だから歴史的に敵国や海賊に狙われやすく、要塞化しているんだ。見通しも良いし、大砲で狙いやすいからね」
まあ、そんな感じだろうな。
「「おー……」」
ニーナの説明を聞いたエルシィとウェンディが感心したように俺を見てくる。
「あり? どうしたの?」
2人の反応を見たニーナが首を傾げた。
「レスターさんが同じような説明していたんですよ」
「へー……さすがはレスター先輩ですね。聡明です」
「すごいでしょ?」
何故かエルシィがドヤ顔を浮かべた。
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