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宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~  作者: 出雲大吉
第1章

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第036話 再び、王都へ


 翌朝、エルシィとウェンディを起こすと、朝食を食べてチェックアウトした。

 そして、女将さんに礼を言うと、宿屋を出て、イレナの店に向かう。


「良い宿でしたね」

「ああ。また泊まりたいなって思える宿だった」


 女将さんも良い人だったし、イレナが勧めるだけはあった。


「さて、これからイレナの店に行って王都に向かう。ウェンディ、頼みがあるんだが、これから会う奴が嘘をついたら合図を送ってくれないか?」

「商人対策ですね。お任せください。相手が嘘をついたらエルシィさんの腕を叩きます」


 ウェンディが抱えられているエルシィの腕を叩いた。


「頼む」


 合図を決めると、イレナの店にやってきたのだが、イレナが入口のところで待っていた。


「よう」

「おはよー」


 俺とエルシィがイレナに声をかける。


「おはよう。ポーションの方はどう?」

「ちゃんと150個用意したぞ」


 そう答えてイレナにカバンを見せた。


「魔法のカバンを持っているのね。じゃあ、すぐに取引ができるわけだ」

「ああ。俺達は取引を終えたらまた旅に出るつもりだ」


 だからお前も引き止めるなよ。


「新婚旅行中だもんね。次はどこ?」

「列車で気長に南の方かなって思っている」

「ゲイツ、ターリー方面ね。良いと思うわよ。私もかっこいい旦那を捕まえたら行ってみようかしら?」


 面食いさんらしい。


「先輩はあげませんよー」

「既婚者はいらない」


 そりゃそうだ。


「イレナ、店はいいのか?」

「父が代わりに店番をしてくれるから大丈夫。快く引き受けてくれたわ」


 イレナがそう言うと、ウェンディがエルシィの腕を叩いた。

 どうやら快く引き受けていないらしい。


「そうか。じゃあ、行くか。列車だろ?」

「ええ。10時の便ね。昼に着くから昼食を食べて、まずはクムーラ商会の方。行きましょう」

「ああ」


 俺達はこの場をあとにすると、駅に向かった。

 そして、駅で待っていると、王都行きの列車がやってきたので乗り込み、ボックス席に座る。

 俺とエルシィが並び、対面にイレナが座る形だ。

 なお、ウェンディはやっぱり窓に張り付いており、外にいる駅員がそれを見て、首を傾げていた。


「このところは列車に乗ってばかりな気がするわ……」


 イレナがウェンディを見ながらつぶやく。


「商機だからだろ」

「まあね。何とか1枚噛めないかと思って何度も通ってたのよ。そして、あなた達を見つけた」


 運が良かったな。


「他所の商会はどういう風に動いているんだ?」

「あくまでも噂程度に思ってちょうだい。最初に行くクムーラ商会はゲイツから密輸しているって聞いている」


 危ない橋を渡るなー。

 人を密輸した俺達はあまり人のことは言えないが。


「クムーラはそういう商会か?」

「やり手なのは確かよ。ちょっと強引なところがあるけどね」


 商人は多少の強引さは必要だからな。


「もう1つのラック商会は?」

「ラック商会は老舗で安定した商会ね。でも、去年、商会長さんが代替わりして実績を欲しがっているのが今の若い商会長」


 なるほど。


「それは食い付くな」

「ええ。実際、キュアポーションのおかわりもあったしね。多分、勧誘されるんじゃないかしら? 優遇されるし、良いところよ?」


 だと思うが、それでも宮廷錬金術師だった頃の方が給料は良いだろうな。

 まあ、どっちみち、関係のない話だ。


「俺達は旅人だ。遠慮しておく」

「まあ、そうでしょうね。じゃないと、私みたいな田舎の個人店の店長と組もうとは思わないでしょうから」

「そういうことだ。おっ……」


 列車が揺れると、動き出した。


「これから2時間は暇ね。ねえ、あなた達ってどういう出会いだったの? 奥さんの方が先輩って呼んでいるけど」

「学校の先輩なんですよー。入学してちょっとしたら声をかけられまして、それからの付き合いです」


 合ってるな……


「へー……旦那さん、見かけによらず、手が早いのね」

「それはもう」


 合ってるの?


「良いなー。私もこういうかっこいい旦那が欲しい」

「あげませんってば」

「だからいらないってば」


 『既婚者は』を付けろ。

 暴言になってるぞ。


「イレナ、錬金術師が少ないって話だったが、その錬金術師はどこで働いているんだ? 宮仕えか? それともアトリエでも開いているのか?」

「どっちもかな? アトリエはウチの町みたいにそんなに大きくない町にはほぼないけど、王都くらいの町なら2、3軒はあると思うわ」


 そんなものか。


「資格とかいるか?」

「国に仕える宮廷錬金術師は必要だったと思うけど、個人店は別にないわね。何? アトリエを開きたいの?」


 イレナが首を傾げる。


「最終的にはな。金も必要だし、将来の話だ」

「へー……じゃあ、ウチの町で開いてよ。不動産屋に安くしてもらうように交渉してあげるからさ。田舎っぽい町だけど、穏やかだし、何よりも王都から近いから利便性はすごく良いんだよ」


 イレナが町の良さをアピールしてくる。


「良い町だと思ったし、飯も美味かったから住むのも悪くないなって思ったな。まあ、将来の話だ」

「あなた達は優秀だし、そう遠くない未来のような気がするけどね。お金も簡単に貯めそうだもん」


 そうだと良いな。


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