第137話 到着
俺達は列車の中で本を読みながら過ごしており、ウェンディは相変わらず、窓に張り付いている。
「ウェンディ、楽しいか?」
「楽しいですよ。ずっと見ていられます」
本当にずっと見ているな。
正直、俺はもう飽きたよ。
「まあ、お前が楽しいならそれで良いわ」
可愛い人形だな。
「レスターさん、オーレーまではあと何日ですか?」
そのウェンディが聞いてくる。
「3日。ちなみに、オーレーはランスの東側の町だな」
良い感じにイラド側の西とは逆だ。
「へー……ランスは何が有名なんですか?」
「王都に観光地が多いな。とはいえ、歴史ある大国だから他の町も色々とある」
「料理は?」
食いしん坊天使か……
「肉料理がメインだな。西に行けば海産物もあると思うが……あとワインが有名」
「ランスならパンとかお菓子が有名だよ。朝に食べてたデニッシュなんかがそう」
エルシィがウェンディが食いつきそうな補足説明をした。
「お菓子! ケーキを食べたいです!」
ほら、食いついた。
「オーレーやナンスで連れていってやるよ」
「「わーい」」
良かったな。
俺達は話をしながら過ごしていき、到着を待つ。
そして、2日目、3日目と過ごしていくと、窓の外から見える風景が平原からのどかな畑に変わった。
「何を育てているんですかね? 木もありますよ?」
うーん……何だろ?
「あれはぶどうだよ。あと小麦かな? ぶどうはワイン、小麦はパンやパスタだねー」
へー……あれがぶどうの木かー。
「エルシィさん、詳しいですね」
「農村の生まれだからねー。もうオーレーに着くと思うけど、こんなに畑があるってことは名産地なんだよ。期待できるよ」
「おー。それは素晴らしいですね。私、ワインもパンもパスタも好きなんですよ」
逆に嫌いなものは何だよ?
イラドの缶詰か?
「確かにそろそろ着きそうだし、準備をするか」
「そうですね。長旅だったんで散らかしすぎました」
俺達は片付けを始め、いつでも降りられるようにする。
そして、片付けを終え、しばらくすると、列車のスピードが徐々に落ち始め、ついには駅に止まった。
「着いたな」
「今日は揺れないベッドで寝られそうです」
列車や船に乗ると、毎回そう思うな。
「よし、行こう」
「はーい」
俺達は個室を出ると、列車から降りる。
駅は田舎の駅っぽく、受付も改札も一つしかない。
それでいて、木造の駅舎にいくつかのベンチがあるだけで他のお客さんも数人しかいない。
「のどかですねー」
「だな。でも、畑がすごいわ」
ここに来るまでも畑だったが、ここから先もずーっと畑が続いている。
「オーレーは大きな町のようですからね。私の出身の農村とは違い、大規模農業なんでしょう」
オーレーはこの辺りでは一番大きな町である。
それでいて、のどかな雰囲気がある町として人気らしいのだ。
実際、周囲は畑の風景がすごいが、改札の先には都会っぽい街並みが見えている。
「行くか」
「ええ。まずは冒険者ギルドですかね?」
「そうなるな。宿の場所も聞きたいし、簡単な仕事なら受けてもいい」
資金集めはしないと言ったが、観光はするし、数日は滞在するだろう。
だったら宿屋で休みながらポーションを作るくらいならできるのだ。
「ですね。じゃあ、ちょっと駅員さんに聞いてきます」
エルシィはウェンディを渡してくると、受付のおばさんのもとに向かった。
「レスターさん、冒険者ギルドは大丈夫ですか?」
ウェンディが聞いてくる。
「この前のルビアの町の件か?」
ギルド職員が情報を漏らしていたし、マルドナド伯爵令嬢の仕事を受けるように誘導していた。
「はい。大丈夫なんですかね?」
「結果的に見れば、俺達は大儲けできたし、反乱に巻き込まれる前にイパニーアを脱出できただろ。それにあの受付嬢に悪意はなかったんだろ?」
「ええ。騙そうとか貶めようという負の感情はなかったですし、普通でした」
それはまあ、罪悪感もなかったってことになるんだがな。
少しは感じてほしいものだ。
「金をもらったか、弱みがあって脅されたかはわからんが、そういう話がマルドナド伯爵家からあったのは確かなんだろう。でも、それが俺達のメリットになると判断したからそうしたわけだ。一言嫌味くらいなら言ってもいいが、その程度だ」
迷惑料300万ゼルに加えて、1000万ゼルに金のインゴットまでもらったからな。
悪くない仕事だった。
「そうですか……」
「まあ、あんなことは滅多にない。でも、これからギルドに向かうが、ちゃんと嘘があるかを見極めてくれよ」
「了解です!」
ウェンディが敬礼をする。
「せんぱーい、ギルドの場所を聞いてきましたよー」
エルシィが戻ってきた。
「悪いな。じゃあ行こう」
「はーい」
俺達は改札を抜けると、駅を出た。
すると、各国の王都ほどじゃないが、普通に栄えている街並みが見えてくる。
華やかさはないが、落ち着いていて、悪くない。
道もちゃんと石造りで舗装されているし、建物も古いながら5階建てくらいのビルが並んでおり、自然と調和した非常に雰囲気の良い街だ。
「良いところですね。街並みを見ただけで良い街ってわかります」
「こういう街は良いな。俺的にはもうちょっと田舎でもいいが」
良い街だが、ちょっと人が多い。
「先輩は静かなところが好きですもんね。まあ、この国で店を出す街を探すことはないですから気楽に楽しみましょうよ」
「それもそうだな」
ランスとゲイツはまずないのだ。
両国はイラドにとって一番仲が良い国と一番仲が悪い国なので俺達には都合が悪い。
「今回の旅は観光です。まずはギルドですねー。あっちです」
エルシィがそう言って、通りの先を指差したので歩き始めた。
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