第136話 むぐっ ★
「ふむ……イパニーアで内乱とな?」
報告に来た宰相の言葉に少し驚きながらも冷静を保つ。
ここで慌てふためくような者は王にはなれないのだ。
さすがは余。
「はい。少し前に起きた後継者争いの余波です。敗れた第二王子には隠し子がおり、その者が各地の領地貴族を味方にし、挙兵したとのこと」
どこの国も後継者争いで揉めるな……
まあ、我が国はちゃんと王太子を立てているし、あの子もしっかりしているから問題ないと思うが。
「戦況は?」
「イパニーア王はすぐに兵を挙げ、王都付近に陣を敷いたとのこと。数的に見ても優勢なのはやはり王国軍です。ただし、反乱軍もかなりの数ですのでどちらに転ぶのかはわかりません」
長引くかもしれんな。
あそこの国は軍事力が高いし、有能な将も多い。
それが内乱になると逆に災いする。
「周辺国は?」
「ルドガーは静観でしょうな」
まあ、あそこは大人しい国だし、イパニーアとは軍事力が違う。
下手に関わらないだろう。
「ランスは?」
「それが…………問い合わせをしているのですが、返事が来ません」
は?
「返事がない? どういうことだ?」
「そのままです」
うーむ……
「ランスの動きがわからないとこちらは何もできないぞ?」
ランスはイパニーアと隣接している大国だ。
豊富な資源を持つイパニーアを欲しがっているだろうし、軍事力の高いイパニーアを獲るには国が2つに分かれている今しかない。
むろん、このイラドもランスの同盟国でもあるからランスが動くなら支援をするし、動かないならこちらが動く。
何にしてもランスの動きを知り、協議をしないといけない。
「こちらも催促はしているのですが……いかがしますか?」
いかがすると言ってもな……
「ランスが悩んでいるということは?」
「大国であるランスがこんなチャンスをみすみす逃すでしょうか?」
考えにくいな。
ランスはイパニーアを欲しがっているし。
「国内で何かあったか?」
同じように反乱とか……
「その可能性が高いかと……もしくは、ランス王に何かあったか」
ランス王は60歳を超えた高齢だ。
その可能性も十分にある。
ましてや、隣国が後継者争いで揉めているのだから慎重にもなる。
「何にせよ、理由がわからなければどうしようもない。軍を動かせる準備はしつつ、探れ」
「はっ!」
ふむ……
「例の2人は?」
もちろん、レスターとエルシィだ。
「いまだに見つかりません。どうやら完全に隠れたようです」
各国の王都には現れないか。
「ほとぼりが冷めるまで待っているのか、どこか遠くに行ったか……まあいい。各地の密偵にはそのまま調査を続けよと伝えよ」
「はっ! イパニーアから撤退した密偵はどうしましょうか? 現在はルドガーに待機させております」
「そのまま待機だ。ルドガーからイパニーアの戦況を報告させよ」
ルドガーなら情報も集まるだろう。
「かしこまりました。それでは――」
「陛下っ!」
大臣と話していると、急に扉が開き、兵士が部屋に入ってきた。
「貴様! ここが陛下の執務室とわかっているのか!?」
大臣がノックも声かけもしなかった兵士を怒鳴る。
「も、申し訳ございません!」
兵士が焦ったように敬礼をした。
「よい。用件を話せ」
それほどの大事だろう。
もしや、レスターとエルシィが見つかったか?
「はっ! 先ほど、ランスの使者がここを訪れ、一方的に同盟破棄を告げていきました!」
ふむ……は?
◆◇◆
「うーむ……」
俺は気持ちのいい朝に列車から降り、駅の売店で新聞を読んでいた。
「びっくりだよな。内乱だってよ」
売店のおっちゃんが言うように新聞にはイパニーアで内乱が起きたという記事が載っていた。
いくらイパニーア国内で情報規制を敷こうと、他国はそんなもの知ったことじゃないのだからな。
「このランスにも影響があるかねー?」
「さあな。お上の考えることはわからん」
「――せんぱーい。もう出発しますよー」
朝食を買うように頼んでいたエルシィが紙袋を抱え、列車の前で手招きしてきた。
「ああ……これ、くれ」
店員に新聞を見せ、代金を支払う。
「あいよ」
金を受け取った店員が頷いたので列車に向かい、エルシィと共に乗り込んだ。
そして、部屋に戻ると、朝食のパンを食べる。
「クリームパン、美味しい」
「デニッシュブレッド、美味しい」
ウェンディとエルシィが美味しそうにパンを食べている中、ソーセージサンドを食べながら新聞を読む。
「優勢は王国軍か……」
まあ、そうだわな。
「あ、反乱の件ですか?」
エルシィが聞いてくる。
「ああ。もうこっちでは知れ渡っているようだな」
新聞に載るということはそういうことだ。
「無事に出られて良かったですねー」
「ホントにな」
フリオとオフェリアはどうしているだろうか?
「これからどうします? イパニーアが内乱状態ということは隣国であるこの国も少なからず影響があると思いますよ」
あるだろうな。
「ランスは適当に観光したらさっさと抜けるか。ここはイラドの同盟国だし、ここで永住の地探しはないと思う」
「それもそうですね。金貨と金のインゴットはどうします?」
金貨はターリーで手に入れた財宝であり、金のインゴットはオフェリアからもらった報酬だ。
「それを換金するか……となると、大きい町だな。えーっと……」
「どれどれ……」
ランスの地図を開き、エルシィと見る。
「オーレーには行くんだよな?」
「はい。湖でボートです」
そう言ってたな。
まあ、見てみるか。
「オーレーはそんなに発展した町じゃないし……なあ、次はどこに行く? 西のイラドはないとして、北のゲイツか東のターリーになるが……」
「ゲイツで良いんじゃないですか? 王都はパスということで」
まあ、ゲイツの王都はないな。
あそこが一番密偵が多い所だろう。
「となると、このルートか……道中の大きい町だと、このナンスの町だな」
地図上の鉄道の線路を北になぞっていく。
「良いと思います。それでゲイツに行って、避暑地で有名な北のノースランドに行っても良いですし、ポードに戻って別の観光地に行っても良いです」
もう夏に入り始めているし、夏を避暑地で過ごすのも良い。
ポードは王都とミックしか行ってないし、他の観光地を見に行っても良い。
あ、イレナに話を聞きに行くでも良いな。
「よし。じゃあ、まずはゲイツを目指すか」
「はーい。あ、先輩の好きなメンチカツパンも買ってありますよ。はい、あーん」
いや、あーんって……パンですけど?
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