第127話 俺でもエルシィのためって言う
個室は以前ターリーに行く時に乗った寝台列車と同じく、2段ベッドがあり、窓際にはテーブル付きの2人がけのシートもあった。
「今回は5日の旅ですから楽ですね」
早速、定位置である窓に張り付いたウェンディが言う。
「5日で行けるのはサラスカの町だ。そこから1日以上はかかるだろうな」
具体的な日程はこれから詰めていくことになるだろう。
「そうですか……まあ、ゆっくりしましょう」
ウェンディがそう言うと、エルシィがシートに座ったので俺は2段ベッドの下の段に腰かける。
「エルシィ、上が良いか?」
「上が良いでーす」
「私もー」
俺は上がるのが面倒なだけだと思うんだがな……
まあ、2人が良いなら良いか。
「エルシィ、これから先は単独行動を避けよう」
「そうですね。平和な国でしたが、これから先はわかりません」
多分、騎士が町中にいるだろうから暴動なんかは起きないだろうが、その騎士も疑心暗鬼になっていることもありうる。
「そもそも単独行動自体をあまりしていないが、それでも念入りにしよう」
「わかりました」
エルシィが頷くと、列車が動き出した。
そして、そのまま待っていると、ノックの音が部屋に響く。
「どうぞ」
そう答えると、扉が開き、オフェリアとフリオが部屋に入ってきた。
「あ、すまん。座るところがないな」
「あ、どうぞ」
エルシィが立ち上がる。
「いえ、大丈夫です」
エルシィが席を譲ろうとすると、オフェリアがそれを制した。
すると、後ろにいたフリオが前に出てくる。
そして、カバンから椅子を取り出すと、オフェリアが座り、フリオがその後ろに控えた。
服装は庶民だが、どう見てもお姫様とそれに仕える騎士だ。
「魔法のカバンを持ってんじゃん。ペインの町からの依頼は何だったんだ?」
「これは先程、アデリナ様から餞別でいただいたものです」
気前の良いことで……
魔法のカバンってものすごく高いんだぞ。
「そうかい……さて、先程はあまり詳しく聞けなかったが、事情くらいは話してくれるんだろ?」
「聞きたいですか? あまり良い話ではないですけど」
オフェリアが確認してくる。
「ここまで込み入った依頼なら聞いておきたい。いざとなった時の行動の指針にもなる」
こいつらを信用できるか、見捨てるか……
色々な選択肢が出てくる。
「では、お話ししましょう。何が聞きたいですか?」
「政変のことや反乱のことだ」
「それですか……第一王子と第二王子が次の王位を巡って争っていたことは?」
「王都のギルドで聞いたな。第二王子の方が優秀だったんだろ?」
あの有能そうな受付嬢がそう言っていた。
「そうですね。自分の父を褒めるわけではないですが、頭が良く、優秀だったそうです。一方で第一王子はバカというわけではないですが、普通といった感じですね」
悪くはないが、良くもなかったわけだな。
ただ、弟は優秀だったわけだ。
恨まれそうだな。
「第一王子は第二王子のことが嫌いだったのか?」
「ええ。目の上のたんこぶだったんでしょうね。子供の頃から辛く当たっていたそうです。それが祖父である先代の王の耳に入っており、余計に第二王子に肩入れしていったそうです」
負の連鎖か……
「なあ、単純な疑問なんだが、長男が王太子じゃないのか? なんとなくそんなイメージがあるんだが……」
「大抵は長男でしょうね。だから普通に行けば第一王子です。第一王子は別に愚か者ではないですから。ただ、第二王子の優秀さや子供の頃からの対応で流れが徐々に変わっていったわけです」
自らが墓穴を掘ったわけだ。
本当に普通か?
ちょっと頭が悪くないかな?
「それで王が死に、後継者争いか……王は指名しなかったのか?」
「第一王子を指名したそうです。第一王子はそう宣言しています」
第一王子が言っているわけね。
信用ゼロだ。
「実際のところは?」
「わかりません。さすがにそこまでは貴族も把握していないでしょう。私の情報はすべてマルドナド伯爵から聞いた情報ですので」
父である第二王子からの情報ではないわけか。
「父親には会っていないのか?」
「ほぼ会ってないです。たまに王都に行った時にこっそりと会うくらいですね。なので貴族の中には私を第二王子の愛人と思っている者もいます」
親父なのにな。
「すまん……お母さんは?」
「すでに亡くなっています。もう5年になりますかね? 身体が弱い人だったんです」
やっぱり死んでいたか……
話の流れ的にそうじゃないかと思っていた。
そして何より、この逃亡についてきていない。
「すまん」
「いえ、大丈夫です。話を続けますが、第一王子が遺言に従い、王位を継ぐことを宣言しましたが、第二王子側は当然、不当だと主張し、争いが起きました」
「戦争っていうわけじゃないんだろ?」
国内がそこまで乱れたとは聞いていない。
「ええ。どちらも王都から離れられませんし、騎士を始めとした軍部が静観しましたから。結果として、第二王子が敗れ、第一王子が王位に就き、今日に至ります」
ふむ……
「粛清は?」
「第二王子、正室、側室、その子供は皆、処刑されました。さらには近しい側近も処刑、その家族は幽閉です」
そこまでやるわけだ。
まあ、これに関してはスルーしよう。
「庶子であるお前達は逃れたわけだな?」
「ええ」
「実際のところ、庶子って何人いるんだ?」
「わかりません。ただ、兄がいて、その者が反乱を起こすということをマルドナド伯爵から聞いただけです。どこにいるのかも、どういう人なのかも聞いていません」
国家の行く末を左右する人間だから隠すか。
それにオフェリアからしたら良い印象はないだろう。
「一応、確認だ。一緒に戦おうとは?」
「思いません。私にそんな度胸はありませんし、そもそも王族という意識すらありません。私はマルドナド伯爵のことを父と思っていますし、アデリナを姉と思っています。それだけ良くしてくださったのです」
なるほど……
「国を離れる理由はマルドナド伯爵に言われたからか?」
「ええ。反乱が成功しても失敗しても私に良いことなんてないと言われました」
「反乱が成功してもオフェリアの兄はオフェリアを邪魔としか思いません。失敗したら二度目がないようにと庶子探しに力を入れます。そうすればオフェリアが見つかるのも時間の問題なのです」
フリオが答えた。
「そうだろうな……オフェリア、国に戻る気はないんだな?」
「ええ。長い年月が経ったらもしかしたら戻れるかもなって思っている程度です」
何十年後の話か。
「レンジェに着いたらどうするんだ?」
「協力者である家に滞在させてもらうことになっています。ですが、すぐに出て、別の国に行く予定です」
そこがどこかは聞かない方が良いな。
「フリオは?」
「私もお供します。私はマルドナド伯爵の支援で騎士になることができましたし、恩があります。そのマルドナド伯爵に頼まれましたので……」
うーん……
「良かった。俺以下がいた」
お前ら、恋仲じゃないのか?
「ないわー」
「ないですね」
エルシィとウェンディも呆れた。
「フリオ……そこは私のためと言いなさい」
オフェリアがちょっと傷付いている。
「すみません……もちろん、オフェリアのことを第一に考えております。ただ、騎士なもので……」
よくわからんが、こいつ、バカだな。
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