第123話 仕事?
「ネックレスの修復って言うが、何が壊れているんだ? そんなもん、職人か装飾屋にやらせろよ」
錬金術師を探すよりそっちの方が圧倒的に早い。
「そのネックレスの宝石がルビフレイムなんです」
ルビフレイム……火の属性を持った魔導石だ。
「修理って魔導石か?」
「はい。専門の錬金術師しか無理です」
俺もエルシィも専門ではないが……まあ、できるな。
「料金は?」
「具体的な額はアデリナ様と交渉してください。ただ、貴族ですし、高額なことは確実です。最低でも50万ゼルは堅いんじゃないですかね?」
良い仕事だ。
魔導石の修理なんか1日もかからないし、質にもよるが30万ゼルでやる。
「うーん……」
どうしよ?
貴族っていうのがな……
「話を聞くだけ聞いてみても良いんじゃないですか? こんな仕事は滅多にないですよ」
あるわけないな。
「断ったら打ち首とかないよな?」
「ないですよ……さすがにイラドでもそんなことないでしょ。先ほども言いましたが、アデリナ様は温厚な方ですし、いきなり殴りかかるとかしない限り、そんなことはありませんよ」
いきなり殴りかかるって……暴漢だな。
「エルシィ、どう思う?」
ここは確認だ。
「確かに話ぐらいなら聞いてみてもいいんじゃないでしょうか? 割に合わなかったり、あまり接触したくない人だったら技術的に無理ってことにして、退散すれば良いと思います」
それが落としどころか……
ヤバそうだったらさっさと列車に乗って、この町からおさらばだな。
「わかった……ちょっと話を聞いてみようと思う。どうすればいいんだ?」
エルシィの意見に頷くと、受付嬢に聞く。
「マルドナド伯爵のお屋敷に行ってください。そこにアデリナ様がおられますので」
「あの丘の上か?」
「ええ。あそこです。わかりやすいですよね」
ホントにな。
「じゃあ、ちょっと話を聞いてみるが、断ったら別の仕事を紹介してくれ」
「もちろんですよ」
行ってみるか……
「あ、宿屋も紹介してくれ」
「はい。ここからマルドナド伯爵のお屋敷に行く途中で【赤い屋根】というそのまま赤い屋根の宿屋がおすすめですね。王都で修業したシェフの料理が絶品と評判です。このギルドがある通りをそのまま奥に進んで行けばいいのでわかりやすいと思います」
良さそうだな。
それにギルドの女性職員が勧めるなら問題ないだろう。
「わかった。じゃあ、行ってくる」
「お願いします」
俺達は用件を終えたのでギルドを出た。
そして、来た道とは反対の町の奥の方に歩いていく。
「エルシィ、本当に貴族の依頼を受けても大丈夫と思うか?」
「この国はイラドほどに貴族社会ではないですから多分……」
騎士社会だからな。
「正直、気乗りはしないな」
「私もです。でも、お金儲けを考えた時に貴族が大口であることは間違いないですから」
そうなんだよなー。
「私の意見を良いですか?」
ウェンディが手を挙げる。
「何だ?」
「御二人の話を聞く限り、イラドの貴族はあまり褒められたものではないでしょう。でも、貴族も人です。良い貴族もいれば、悪い貴族もいると思います」
まあ、そうだ。
貴族を悪としても、じゃあ、庶民は善かというとそうでもない。
そんなものは人によるんだ。
「しかし、貴族は権力が強いぞ」
だからこそ、怖いのだ。
「ここは他国ですから知ったことではありません。イラドから逃げたあなた達ならどうとでもなりますよ。それと苦手意識は払しょくした方が良いでしょう。店を開くんですよね? もしかしたら貴族の方が依頼に来る、ということもありますよ」
それもそうだな……
「店を開く町探しをしているが、その町を治める貴族の評判も大事だな」
評判の悪い領主がいる町は嫌だ。
「確かにそうですね」
エルシィも頷いた。
「それも大事でしょう。その判断をギルドなどから仕入れるわけです。そして、この町のギルドはこの町の領主を良く言っていました。なら大丈夫ですよ」
ふむふむ。
ウェンディの言うとおりだ。
「わかった。ちょっと前向きに考えられそうだ」
「頑張ってください」
俺達が話をしながら歩いていると、前方に赤い屋根の建物が見えてきた。
周りがこげ茶色の屋根しかないからものすごく目立っている。
「【赤い屋根】か……」
「受付の人がわかりやすいというわけですね」
ホント、わかりやすいわ。
「チェックインはあとでいいな?」
「ええ。まずはマルドナド伯爵のお屋敷に行って、話を聞いてみましょう」
俺達は宿屋をスルーし、そのまま進んでいく。
そして、途中で曲がると、丘に登る坂道までやってきた。
「勝手に登って良いんだよな?」
丘には舗装された道があり、そのままの上の屋敷まで続いている。
「良いんじゃないですかね? 何か言われてもギルドに言われたから来たわけですし、こっちは悪くないです」
こっちは悪くないのにいちゃもんを付けてくるのが貴族なんだよな。
まあ、これも偏見か。
「じゃあ、行ってみるか。ウェンディ、お前はしゃべるな。貴族に目を付けられて強制的な買取もありうるぞ」
ウェンディはいくら出されても売らないが、それでも欲しいものを手に入れるのが貴族だ。
これも偏見……というか、イラドの貴族だな。
エリクサーを奪っていった部長がいい例。
「わかりました。人形のふりをしています」
「よし、行こう」
俺達は坂を登り始め、上の屋敷を目指した。
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