第118話 おかしいなぁ?
エルシィがホクホク顔で風呂から上がってきたので俺も風呂に入った。
そして、ゆっくりと浸かり、風呂から上がると、ソファーに腰かけ、エルシィ、ウェンディの3人でワインを飲む。
「相談の前に決めたが、明後日にここを発つってことで良いな?」
一応、確認する。
「はい。その辺りが良いところでしょう。明日もロロン装飾店で仕事をし、明後日にルビアに向かうということで良いと思います。多分、明日の仕事を終えたら他の装飾屋や宝石屋からギルドを通じて指名依頼が来ます。そしたら次は国からの招致です」
そして、有名になり、イラドの密偵に見つかる可能性が高まる。
「俺もそう思う」
「確認ですが、ルビアで良いですよね?」
「ああ。これも何かの縁だろう。あの夫婦にはよくしてもらったし、礼に夕食でも奢ろうじゃないか」
「わかりました。先輩がそう言うならそうしましょう。そうなると、まずは明日ですね。全部やっちゃいましょうよ」
今日で半分の鉱石を錬成し終えることができた。
このペースなら明日にはすべての鉱石を錬成できるだろう。
「魔力は?」
エリクサーがあるが……
「大丈夫です。鉱石の錬成くらいでは尽きることはないですから」
そこから加工なんかが入れば大変だが、錬成するくらいなら大丈夫か。
「じゃあ、明日も頑張るか」
「ええ。今日、2人で80個くらいできましたから明日も同じくらいって考えれば2人で80万ゼルは固いです」
良い儲けだ。
「よし、今日は早めに寝るか」
「ですねー」
俺達はワインを飲み干すと、この日は就寝した。
翌日、昨日より早くに起きた俺達は朝食を食べ、準備をすると、宿屋を出る。
そして、大通りを歩いていき、ロロン装飾店にやってきた。
「おはよう」
「おはようございまーす」
店に入り、挨拶をすると、バシリオさんとダナさんが俺達を見る。
「おはようございます」
「おはようございます。今日は早いですね」
2人は今日も柔和な笑みを浮かべて挨拶を返してくれる。
人当たりが良いというのがよくわかる。
店を開きたい俺としてはこの辺りも学んでいきたい。
「今日が最後だし、残っているのを終わらせようと思ってな」
そう答えて積まれている木箱を見た。
昨日、頑張ったので半分になっている。
「助かります。こんな機会はないのでぜひとも全部やっちゃってください」
「任せておけ」
「頑張りまーす」
俺達は早速、作業デスクにつくと、鉱石を持って錬成を始める。
ロロン夫妻もそれぞれの作業を始めた。
「なあ、接客で大事なことは何だ?」
そう聞くと、バシリオさんがダナさんを見たので俺もそちらを見る。
「お客様の要望に応えることですね。夫は商人なので儲けを中心に考えますが、それではダメです。いや、必要なことではあるのですが、こういった店はオーダーメイドがほとんどですのでいかにお客様の希望に沿ったものを作るかが大事になってくるんです。それでリピーターにもなりますし、口コミでさらにお客さんが増えますから」
ふむ……
「わかるか?」
エルシィに聞く。
「擦り傷でEランク程度のポーションを欲しがっているお客さんに高価なAランクポーションを売ったらその時は儲けが出ますが、店の評判は下がりますよ」
確かにな。
必ずしも良いものを作るのが正義とは限らないんだ。
俺達はその後もロロン夫婦からアドバイスを聞きながら作業を続ける。
この日もお客さんがそこそこ来ていたが、ダナさんがお客さんの要望を聞きながら笑顔で応えていた。
「あれが俺にできるだろうか……」
お客さんが満足そうな顔で店を出ていくと、ぽつりと言葉が漏れる。
ウェンディが言うようにコミュ力アップの能力の方が良かったのかもしれない。
「レスターさんにはエルシィさんがいるから大丈夫ですよ」
「先輩、私に任せてください」
エルシィは上手くやれると思うが……
「レスターさん、ちょっといいですか?」
バシリオさんが声をかけてきた。
「なんだ?」
「確かに接客は大事だと思うけど、こればっかりは本人の資質によりますよ。失礼なことを言いますが、レスターさんが妻のようにしても上手くいかないと思います」
ほう?
確かに失礼だが、大事な意見っぽい。
「すまない。詳しく教えてくれ。必要なことだから遠慮はいらない」
「えーっと、物を作るクリエーターはこだわりが強い人が多いし、そのせいでお客さんと喧嘩になっちゃうケースも多いんですよ。私は前身が客商売の商人でしたからそこまででもないですが、先程、妻が言ったように儲けを重視することがあります。そして、そういう考えはお客さんに伝わってしまうものなんですよ。レスターさんはかなり優秀な錬金術師だと思います。でも、それが態度に出ると、嫌味くさいと思われたり、バカにされているとお客さんに思われてしまう恐れがありますよ」
うーん……
「ウェンディ、どう思う?」
肯定しかしないエルシィではなく、ウェンディに聞く。
「レスターさんは自分に自信がありすぎるところがありますね。別に過信でもないですが、ちょっと態度に出すぎです。エルシィさんのようにそういうのを喜ぶ女性もいますが、客と店員の関係というのは必ずしも対等ではありませんから要注意でしょう」
ふむ……
「いらっしゃいませー……本日はどのような入り用ですか? へー……ケガをしたからポーションですか。でしたらこれくらいが良いと思います……」
超小声で練習してみる。
「エルシィさん」
ウェンディがエルシィに振る。
「いらっしゃいませー……今日はどうされたんですかー? え!? ケガ!? それは大変です! どういったケガですか? ふむふむ……それでしたらこちらのポーションを患部にかけてください。それで大丈夫ですが、今日一日は念のため、休んで様子を見てください。お大事にー」
ふむ……最初の笑顔は可愛らしく、途中で本当に心配そうな顔をしている。
「エルシィの方の店に行きたいな」
「私もそう思います。エルシィさんはこういうのを自然にできるんですよ。一方でレスターさんは得意じゃないでしょう?」
無理。
「俺はエルシィのように上手に嘘がつけそうにない」
「大丈夫ですよ。エルシィさんがいます。エルシィさんはそういうのが上手ですから」
「あれ? 褒められてない気がする?」
そんなことない。
見事なものだと感心している。
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