第113話 仕事へ
翌朝。
いつもよりかは早めに起きた俺達は1階で朝食を食べると、2階の部屋に戻って準備をする。
そして、1階の受付で今日も泊まる旨を伝え、宿屋を出た。
「大通りを通って南でしたね」
いつもの髪型に戻ってエルシィが右の方を見る。
「そうだな。わかりやすい大通りを通っていこう」
「れっつごー」
「ごー」
俺達は中央広場の方に向かって歩いていく。
そして、さらに広場から南の大通りに向かっていくと、ギルドの前にやってきた。
「一応、確認しておくぞ。王家などの公的な仕事は受けないし、長期の仕事も受けない」
「はい。明日か明後日にはここを出るということで良いでしょう。イラドの刺客以前に強引な勧誘を受けそうです」
この国の状況から考えてその可能性が高い。
「よし。じゃあ、行くぞ」
俺達は方針を確認すると、ギルドに入る。
いつもより早めに起きたとはいえ、すでに9時を回っていたため、他の冒険者の数は少なく、受付に列もなかった。
「空いてるな」
「まあ、この時間ですしね。一昨日の受付の方もいらっしゃいますし、仕事を聞いてみましょう」
「そうだな」
俺達は一昨日話した美人の受付嬢のもとに向かった。
「おはようございます。昨日は楽しめましたか?」
受付嬢が挨拶と共に聞いてくる。
「ああ。色々と回れたし、良い経験ができた。良い町だな」
「そう言ってもらえると、嬉しいですね」
「やはりお前もここの出身なのか?」
「ええ。基本的にギルド職員はその町の人間です。町のことを知っていないと、仕事になりませんからね」
クラーラもそうだったし、そういうものなんだろうな。
「なるほどな。それで仕事の話なんだが……」
本題に入る。
「ええ。いくつか仕事を見繕ってみました。まず、短期の仕事というのを聞いておりますが、確認です。我が国の国家錬金術師試験を受けませんか? ギルドの方でも推薦いたしますよ?」
いきなり来たよ……
「確認か?」
「ええ。ギルドマスターより、一応、声をかけておけ、という指示がありました。けっして悪い話ではないです。あなた方の腕なら給料も良いですし、かなり好待遇で迎えられるでしょう」
どこに行ってもそうだよ。
「すまんな。俺達には俺達の目的がある。俺達はイラドの宮廷錬金術師を辞めて、ここにいるんだ」
まあ、逃げてきたんだけど。
「イラドの……では、今更、国の錬金術師にはなりませんね」
「そういうことだ。自分達の店を持ちたいんだよ。小さくてもいいから2人でアトリエを開きたいんだ」
そう言うと、エルシィが腕を組んでくる。
「素敵なことだと思います。でしたらご要望通り、短期の仕事を紹介しましょう。ただ、仕事があまりにも膨大にありますのである程度、絞らせてください」
「こちらも選ぶのが大変だからそれでいい」
他所の国のことなんか知らないしな。
「では、まず、仕事の種類です。ご存じのようにこの町の錬金術関係の仕事となりますと、鉱石関係になります。それでよろしいですか? 一応、他にもポーション作りなんかもありますけど」
「鉱石関係でいい」
ポードとは違うし、ポーションを作っても儲からないだろう。
やはりその土地土地の仕事をした方が良い。
「わかりました。次にですが、鉱石の錬成関係でよろしいですか? 一応、教師、指導なんかもありますし、商人からの依頼で鑑定なんかの仕事もあります」
「人にものを教えられるほど偉い人間じゃないし、鑑定は金にならん。やはり錬成が手っ取り早いだろう」
特技を生かしたい。
「では、そっちの仕事にしましょう。依頼主ですが……国は避けた方が良いですか?」
「頼む。勧誘されても断るだけだし、強引に勧誘されて逃げるようにここをあとにしたくない」
もう逃亡は嫌だ。
実は俺、若干、閉所恐怖症になっているし。
「では、職人街の仕事にしましょう。と言ってもまだ多いんですが……」
受付嬢が何枚も重なった紙の束を見せてくる。
「そんなにか?」
「人手不足ですね。昔ながらの製法にこだわる職人が多く、頑固者ばかりなんですよ。当然、若者はそういうところに就職するのを避けます。まあ、どこの業界でもあることですね」
イラドもそんな感じだな。
「そういうところに俺達が行っても大丈夫か? 錬金術師は嫌われるだろ」
職人連中は自分達が時間をかけて一生懸命作るものを一瞬で錬成してしまう錬金術師が嫌いなのだ。
「嫌われるでしょうね……そういうところは避けましょう。となると……精錬所ではなく、アトリエが良いでしょうね。ここなら錬金術師もいますし、装飾関係の仕事がメインです。そのお手伝いとして、鉱石の錬成の依頼が来ているんですよ」
良さそうだな。
「それで頼む」
「かしこまりました。それとですが、エルシィさんも仕事をされるんですよね?」
「そうなるな。エルシィも錬金術師だし」
優秀なんだぞ。
「となると……これかこれかな?」
あれ? 一気に2枚になったぞ。
「エルシィがマズいのか?」
「女性が仕事に介入してくるのを嫌う人がいるんですよ。理由は色々あると思いますが……」
うーむ……まあ、そういうこともあるか。
基本的に職人とやらは男社会なんだろうな。
「ならいい。そういうのは避けた方が良いだろう。トラブルの元だ」
「すみません……実はこの国って騎士社会ですし、鉱山関係の仕事が多かったことからちょっとそういう風習が根強く残っているんです」
わかる、わかる。
この国の仕事って基本的に力仕事が多いし。
「気にするな。仕方がないことだろう。そういうプライドを持っている職人を傷付けるのはマズい。言っておくが、エルシィは貴族社会のイラドで宮廷錬金術師になったほどの腕がある。その辺の連中では足元にも及ばないだろう」
妬み、僻み……
普段、見下している相手なら特にだろう。
逆恨みはごめんだ。
「エルシィさん、頭お花畑ですけど、とんでもなく優秀な才女ですもんね」
「頭お花畑は余計だね」
何とも言えんな。
「では、この2枚をどうぞ。1つは装飾屋さんでもう1つが宝石屋さんです。この2つが大丈夫なのは共にご夫婦でやられているからですね」
なら大丈夫か……
装飾と宝石……どちらでも問題ないが、私的な理由で装飾が良いな。
「エルシィ、装飾の方で良いか?」
「良いと思います」
エルシィも賛成のようだ。
「そういうことだ。装飾屋で頼む」
「かしこまりました。それでは推薦状を書きますので少々、お待ちください。あ、これがその依頼主の店の情報です」
受付嬢が紙を渡してくれると、推薦状とやらを書きだした。
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