異世界チートが配られなかったので、図書館で無限の知を盗むことにした
「……え? スキル、もらえないってどういう……?」
白い空間、目の前にはやたら爽やかな顔の神様が困ったように頭をかいている。
「いやぁ、手違いでね。魂の処理ミスしちゃって。で、スキルが付与されてないみたいなんだ」
「……は?」
状況がわからない。というか、普通そういうの確認してから送り出さない!?
「まぁ、がんばってね!」
「ちょ、ま——っ」
言い終える前に、俺の意識は闇に包まれた。
*
気づけば、俺は王都の裏通りにいた。装備も金もスキルも無し。
食うにも困り、拾われたのが……
「君、働き口を探しているのかい? この図書館でなら寝泊まりもできるよ」
――朽ちかけた、ボロ図書館だった。
*
最初は掃除と本の整理だけだった。
けれど、ある日、地下へ続く隠し階段を見つける。
その先にあったのは、無数の本が漂う空間だった。
空間魔法で拡張された“書の迷宮”――かつて神が知識を封じた場所。
「これは……魔術書? いや、構造式もある……これ、スキルの理論じゃないか?」
スキルは才能じゃない。
構造と理論を理解すれば、再現可能な“術式”だった。
そして俺は、“読むだけ”でスキルを会得する異常者だったのだ。
*
その日から、昼は図書館員、夜は知識の盗人。
俺は書を喰らい、世界を喰らう。
魔法、剣術、錬金、召喚、空間操作……
読み、記録し、再現し、圧倒する。
「スキルが欲しい? ならまず、読むことだな」
気づけば、世界最強の魔王でさえも俺を恐れるようになっていた——。
【終わり】
異世界定食屋『星降る夜』が順位入りしました✨
誠にありがとうございます!
今後もよろしくお願いします