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新たな人生

 昼間から開催されている結婚式。そこには、新郎新婦、新郎新婦の家族や友人、結婚式場のスタッフ、カメラマン。それぞれの役目を果たしていた。

「今日の式はお開きとさせていただきます。本日ご参加して下さった皆様、お疲れ様でした」

 解散したので帰ろうとした彼らを見て、式場にいる全員に突然のカメラマンの一言を発する。

「最後に新郎新婦を中心に皆さんで写真を撮りませんか?新郎さんも新婦さんもどうですか?」

「「ぜひやりたいです!」」

 新郎新婦はお互いの声が重なったことに笑っている。その笑いに全員が笑っている。

 カメラマンの腕によって撮られた写真は和やかな雰囲気を漂わせていた。

 カメラマンは帰ろうと外に出た瞬間、謎の白い光に包まれた。



 ここはどこだろう。三途の川なのだろうか。

 白い世界でどこを歩いても道に迷ってしまいそうになるほど真っ白の世界が広がっている。

「もう、来たのかい。待ってたよ、舷谷良助(げんやりょうすけ)君」

 突然、階段が目の前に現れるとそこから先ほどの声の持ち主らしき人が降りてきた。姿は若い男性で、透き通った肌をしている。

 なぜ俺の名前を知っているのかは分からないが、どこか知っているのような気がする。

「あなたは誰ですか?」

「そうだね。わたしは、ロルトという。君はなぜ私が君の名前を知っているのかというと、この果てしなき世界・オコユタに召喚したからだ。召喚といっても、仮召喚なんだけどね」

 話に追いつけない舷谷に比べて、どこか楽しそうにするロルトは話を続けた。

「君には仕事があったと思うが、召喚して申し訳ない。どこか君がしんどそうに見えたから仮召喚をした。異世界で楽しく生きてもらいたい。ギフトを授ける。さあ、前においで」

 ロルトの指示を真に受けた方がいいのか、それともそうではないのかと悩んでいる舷谷を見て、待ち遠しかったロルトは舷谷の目の前にやってきてつぶやいた。

「舷谷良助!君にこの祝福(ギフト)を授ける」

 舷谷の体は先ほどの謎の白い光にまた包まれた。舷谷は突然のことに気持ちを隠せていない。

「ばいばい、舷谷良助君。また君はここに来ると思うよ」

 その一言は舷谷の耳に届いたのだろうか。



 晴天の空の下に小鳥が鳴いている。そして、空には青緑の竜と思われる生き物が飛んでいる。

「ここはどこだ?」

 先ほどとは違う光景に驚きを隠せない。

「一旦、歩いてみるか」

 立ち上がって周りを見渡すと、オコユタと呼ばれる世界まではあった三脚とレフ板、カメラバックもなくなっている。たった一つの茶袋だけが置かれている。それには日本語で『祝福』と書かれていた。その袋を開けてみると、その袋の説明書と思える紙と先ほどなくしたと思った三脚とレフ板、カメラバック。そして、この袋よりも小さい袋だけが入っている。ちなみに、小さい袋には、銅貨、銀貨がそれそれ10枚入っていた。

 木の根に座って説明書を読み始める。説明書によるとこのように書かれていた。


・アイテム袋と呼ばれる


・太古に錬金術で作られた品物


・容量制限はなし


・限られた人だけが持つ珍品(ちんぴん)


 荷物の整理して、いざ街に赴く。道中、スライムやゴブリンと遭遇したが、剣はなく倒し方も知らなかったので気づかれないようにそっと後にした。

 きれいな馬車が横に停まり、男性が窓から顔を見せた。

「あんた見ない顔だな」

「遠き所から来たので」

「なるほど。では、君はもしかして勇者なのか?」

「勇者ではないですよ!」

 恥ずかしそうに顔が火照る。

「それは残念だ。これも縁だ、うちの馬車に乗っていくといい」

「よろしいのでしょうか?」

「そうかしこまるな。ああ構わない」

 男性に誘われ、馬車に乗ることにした。

「あなたは?」

 馬車内は1人だったので、仲間ができて笑っている。

「わしは、4代目皇帝ウラン・アドリュウ・四世と申す」

「皇帝!?えぇええーーー!」

 奥底からでた叫ぶ声は馬車内にとどまらず、馬をひく者に届いた。

「君、うるさいぞ。わしの耳がちぎれるではないか!」

「すみません。ウラン様」

 頭を下げても許されるとは思わない。だけど、謝罪の意はみせないと。

「頭を上げろ。君は一体どこに向かっていたんだ?」

 頭を上げて、首を傾げた。

「わからないです」

「では、わしの領土に来ないか」

 そのまま馬車で進んでいくこと数分、目の前に金属の門が聳え立つ(そびえたつ)のが見える。

 門番は馬車にむかって敬礼をし始めた。門をくぐると、そこはテレビでみた欧州風の建物が建っている。馬車が街道を通過していくたび国民は大盛り上がりをみせた。皇帝が見えなくなるまで手を振る者までいる。

 ドアにつけられたカーテンを開け、国民に手を振る。

「皇帝が帰ってきたぞ」

「皇帝さま~」

「おひとついかがですか?」

「こら、皇帝さまがひとつで堪能できるわけないだろ。あと、庶民の食べ物を口にするか」

「それもそうだな」

 皇帝は国民に愛されているのだな。

「そろそろ王宮に着きます」

 馬車をひく人は後ろみて、皇帝にそれを伝える。

「今日も助かった。では、君も参ろうか」

 王宮はこの街のどの建物よりの広大でインパクトがあった。もし、ここで暮らすことになったら迷いそうだ。

 目の前のドアが開く音がした。

 メイドさんや執事さん、シェフがお辞儀をして待っていた。

「我が陛下、お帰りなさいませ」

「わしは、この者を部屋に招き入れる。あと、食事の用意を頼む」

「かしこまりました」

 指示を受けた彼らは急いで自分の持ち場に戻っていく。

 彼らの中には皇帝の後ろを歩く俺を凝視する者もいる。陰で何を言われるのだろうか。恐怖と不安を背負って、皇帝の後ろを歩いて行った。

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