第7話 エネルギーの流し方
誠に残念であります。
理由は簡単、服が来ないからだよ!
前に蝶香さん言ってたよね!?
『服は用意するから』って。
もうこの世界に来て3日目ですよ!?
風呂は部屋についてし、一応この制服も部屋の中にある洗濯機で選択してくれたけど、なんか嫌じゃん!
どうしよう、花楓たちに『いつも同じ服着てる……。絶対汚いじゃん』とか思われたら!
「どうした? 変な顔して」
食堂で頼んだ焼き魚定食見ながらそう考えてたら、隣に座ってた迅斗がそう訊いてきた。
「いや、なんでもない……」
「ふーん」
迅斗は食べることを再開した。
俺もそれに倣って、味噌汁を飲む。
さっきも言ったけど、俺がこの世界に来てから3日目になった。
昨日はあのあと、花楓たちからエネルギーの流し方について教えてもらって、その後少しだけその練習した。
『エネルギーはね、イメージが大事なんだよ』
花楓はそう言って、俺の胸を指差した。
『風月の胸の中心に、液体の塊があるって想像して?』
俺は目を閉じて、俺の体内――胸の中心に液体の塊があることを想像した。
『それじゃ、それを体内を伝ってエネルギーの流したいところに……今回は右手にしよっか。そこに流すイメージして?』
言われた通り、胸の中心から液体が右腕に流れることをイメージした。
『できたら、そこに力を入れて?』
言われた通りに力を入れる。
すると、右手に力が漲ってきた感じがした。
『そのままこれ、握りつぶしてみて?』
花楓がどこからか直径5センチくらいの丸い石を出してきた。
どこからそんなもん持ってきたんだよって思ったけど、敢えて何も言わないでそれを受け取った。
最初は左手で握りつぶそうとしたけど、もちろんびくともしない。
今度は右手――エネルギーを込めてる手で握ろうとした。
すると、石は簡単に砕けた。
『すごいじゃん! これを脚に込めれば速く走れたりジャンプ力上がるよ! それと、物体に流すこともできるんだ! そうすればその物体が硬くなったりするの! ま、その物体に触れてることが条件だけど』
エネルギーを流すのは簡単だ。
ただ問題は、咄嗟にこれができるかって話だ。
そのへんはもっと練習しとかなきゃな。
「なんだ、考え事か?」
迅斗の言葉で、我に返る。
迅斗はもう完食してた。
「え、もう食べ終わったの!?」
「お前もな」
え?
俺も自分の食器を見てみる。
確かに、綺麗に完食してた。
考え事するとなんも感じなくなるんだな……。
「それじゃ、食器片付けたら急いでいくぞ」
「どこに?」
「今日からもう外に出てクリーチャー討伐するんだよ、その班で顔合わせるの」
そう言いながら迅斗は先に行く。
俺は急いでそれについて行った。
「俺、何班か知らないんだけど」
「俺と一緒だ。教官にそう言われた。お前はこの世界に来たばっかだからな。わかんないこと多いだろうから、俺についていけばわかる」
「はい……」
迅斗は俺に顔を合わせないままどこかに向かう。
どこに行くかくらい教えてくれてもいいのに……。
迅斗はどこかの扉を開けてやっと止まった。
俺は中を覗いて、やっとどこだかわかった。
昨日授業受けたところだ。
「おい迅斗、遅いぞ」
中から教官の声が聞こえる。
迅斗が奥に入ったから俺も中に入った。
中には4人の人がいた。
教官、花楓、天菜、それから知らない女の人。
でもどこかで見たことあるような……。
「時間までには間に合ってますよ」
迅斗はその4人に近づく。
俺もそうした。
「あ、風月! 風月も同じ班なんだ! いやー、せっかく仲良くなったのに違う班だったらどうしようと思ったよ! あ、そうだ、今度――」
「花楓ちゃん、今は教官のお言葉を待たなきゃいけないよ」
やっぱ面白いな、こいつら。
「よし、全員揃ったし、説明を始める」
教官が咳払いをしてから言った。
「今日からお前らは『テンセイシ』という場所でクリーチャー討伐をしてもらう。クリーチャーの出現場所はあとで配るスマホに送るから、それを確認しといてくれ。じゃあ、最初にざっと自己紹介するか。私のことはいいよな? 第4教官の蝶花だ。次は……風月、お前がやれ」
「なッ、俺っすか!?」
「ああ、お前だ。まず全員に名刺配って」
なんでよりによって俺から……。
しぶしぶ教官以外の3人に例の名刺を配る。
「口頭でもなんか言え――って言いたいとこだけど、お前、自己紹介の能力皆無だもんな」
「そうなんですよ……」
「だったらエネルギーの質とか言ったらどうだ? みんな興味あるだろ」
教官の言葉に、みんなが俺の顔を見る。
やめてよ、見ないでよ。
仕方ない、エネルギーの質を――
――って、俺、エネルギーの質何だっけ?
そもそも知らないよね?
「わ、わかりません……」
「はぁ? そんなんじゃ殺せるもんも殺せないぞ?」
「いや、だって……試してないし……」
「一応訊く。エネルギーの流し方はわかるな?」
「それならわかります!」
「当たり前のことでドヤ顔するな。あとでみんなから教えてもらえ」
なんか俺が悪いみたいになってる?
俺が悪いのかな……?
※そろそろバトルシーン来ます!