第33話 小学生、護衛 〜4〜
花楓についていくと、俺たちの家の近くまで来た。
そこにクリーチャーはいた。
コオロギ型の3型クリーチャーとイノシシ型の2型クリーチャーが2体。
「風月、無理しないでね? さっきの戦いでエネルギー使ったでしょ?」
「まぁ、使ったっちゃ使ったけど……バスで座ってて回復したし大丈夫」
「でも無理はよくないよ? 自分のこともちゃんと考えてね? 何も考えずに突っ込んじゃって怪我したら、嫌だから」
それは……花楓じゃない?
天菜の話聞いた限りでは、花楓がそういうのよくするんじゃないの?
寮とかじゃ誰よりも怪我多かったらしいし。
そう思ったけど敢えて言わないようにした。
「それじゃ、私が行ってくるね」
「いや、俺も行きたい」
「……無理そうだったらすぐ逃げてね?」
「わかってる。無駄に図体デカい3型から倒そうと思ってたんだけど……いいかな?」
「オッケー! それじゃ、いきますか!」
花楓が刀を抜いて3型クリーチャーに斬りかかる。
『風』のエネルギーの質ってこともあってか、花楓の動きが速い気がする。
3型クリーチャーは高く跳躍してその斬撃を躱した。
あんなデカい身体してるのに、あんなに速く、高く跳躍できるなんて……。
2型クリーチャーたちも俺たちの存在に気づいたのか、こっちに向かって突進してくる。
イノシシだからものすごく速い。
……ま、それだけだよね?
イノシシは突進は速いけど、空中だと何ができるの?
蹴る地面なんてないからね、空中には。
花楓は3型クリーチャーを追いかけるために、俺は2型クリーチャーを躱すために跳躍した。
2型クリーチャーも跳躍してくるけど、空中では突進できないみたいだ。
試しに初めての技、使ってみますか。
俺はサバイバルナイフを抜いて、それを空中に投げる。
もちろん、その方向にクリーチャーはいない。
花楓はそんな俺を見てかなり驚いているらしく、身体を3型クリーチャーから俺に向けていた。
ヤバくなりそうだから助けようとしてくれてるのか。
優しいな、花楓。
でも大丈夫。
これが俺の、技だから。
「風操」
俺はそのサバイバルナイフに掌を向ける。
すると、そこから風が複雑な方向に吹いた。
それはサバイバルナイフの軌道を変える。
サバイバルナイフはそのまま3型クリーチャーに切っ先を向け、風に乗って高速でそれに向かった。
サバイバルナイフは3型クリーチャーの目に刺さった。
「花楓! 今!」
「! ありがと!」
花楓は安心した表情を浮かべて、3型クリーチャーに斬りかかる。
そして脚を2本切断して、首筋を軽く斬った。
今回のクリーチャーほ虫型だから、哺乳類とかと比べて硬い。
だから一気に切断とかは厳しいみたいだ。
だったら――
「風投!」
俺は掌を3型クリーチャーに向けて叫ぶ。
もちろん、そこにエネルギーを込めて。
するとそこから空気の塊のようなものが高速で放出された。
これは風弾指発に似た技だけど、それと比べて威力が高い。
その分消費エネルギーも多いけど。
俺の技は3型クリーチャーの首の殻を破った。
内部は外部と比べてかなり脆くなってるはずだ。
花楓もそれは思ったみたいで、腰の手榴弾のピンを抜いて、そのまま手榴弾をそこに向かって投げた。
手榴弾は爆発して、3型クリーチャーはそれで倒れた。
あとは2型クリーチャーが2体……!
見ると、地面で俺たちが落ちてくるのを待ってた。
そしてちょうど、俺たちは降下を始めてた。
仕方ない、上から銃で撃つしかないみたいだ。
「――私に任せて!」
腰からハンドガンを抜こうとしたとき、花楓の声がした。
顔を見ると、なにか考えがあるらしいってことがわかった。
ここは花楓に任せてみよう。
だけど念のためってこともあるから、一応銃は握ったままにしておく。
「風月! 吹き飛ばされないように気をつけてね!」
その言葉、技を発動させるみたいだ。
しかも忠告するってことは、周囲にあるものを巻き込む系……。
「――一世風靡!」
花楓の言葉と同時に、周囲に『風』が巻き起こった。
『風』じゃ済まないかもしれない。
『嵐』って言ったほうが正しい。
その『風』は2型クリーチャーを吹き飛ばした。
『風』が止んだときに、ちょうど俺たちは着地した。
……って、今の技――
「エヘヘー、すごいでしょ?」
微笑みながら俺の隣に着地した花楓が言う。
今の技、知ってる。
知ってるというより、俺も使える。
周囲に大量のエネルギーを放出させて、『風』を巻き起こす。
それが一世風靡って技だ。
だけど、あの技を発動させるにはかなりのエネルギーが必要だ。
俺も1回やったらちょっと疲れる。
それなのに花楓は余裕そうに笑ってる。
まだこんなに差があるんだ……。
「風月がすごい技いっぱい使ったから、私も自慢したくなっちゃった」
「うん、マジですごいと思う。よくあの技使って余裕そうに笑ってられるね……」
「確かにエネルギーの消費量は多いけど、そこまで極端に多いわけじゃないよ? さっきの風月の技と同じくらいかな?」
比べ物になりませんよ。
改めて花楓のすごさに驚いてたら、あることに気づいた。
花楓の後ろから、あの2型クリーチャーがゆっくりと向かってきている。
1体はまだ生きてるみたいだ。
俺はそのクリーチャーを、銃で何発か撃つ。
全弾命中して、クリーチャーは動かなくなった。
花楓は驚いて後ろを見てる。
そしてクリーチャーの死体を見て、目を大きくしてる。
「……アハハ……まだ生きてたんだ……」
「いや、かなり瀕死だったと思う。美味しいとこいただいちゃって、なんかごめんね?」
「ううん、謝らなくていいよ! むしろありがと。あのままだったら私、きっと噛まれちゃってた」
……そうかもね。
ま、俺も花楓の役に立てたみたいでよかった。
「それじゃ、戻ろっか。雨米とかが待ってる」
「うん!」
俺はハンドガンを腰のベルトに掛けて、高く跳躍した。




