第32話 小学生、護衛 〜3〜
下水処理場まで戻ると、さっきのところに小学生たちはいなかった。
もう中に入ってるらしい。
「天菜、俺たちどうしよっか」
「外で待ってよっか。もしまたクリーチャーが出たら、私たちが向かえばいいし。そのこと、花楓ちゃんたちに伝えとくね」
天菜はポケットからスマホを出して、花楓にメールを送ろうとしてる。
さっきの技、エネルギー使いすぎてまだ疲労が……。
「風月、すごかったよ。あんな技、よく寮で訓練なしで発動できたね」
「まぁ……ちょっとカッコつけてエネルギーの量を多くしたってのもあったけど……」
「それでもすごいよ! 一気に4体も倒しちゃうなんて。花楓ちゃんに自慢しな?」
「そこまでじゃないと思うけど……。しかも、花楓、俺なんかよりも強いでしょ? 4体くらい一瞬で倒しそうだし」
「花楓ちゃん、アタッカー専門って感じだから、自分の怪我とか考えずに行っちゃうもんね……。寮の訓練だと毎回誰よりも怪我してたし……」
え、そうなの?
確かに花楓、ずんずん進みそうだな……。
迅斗も結構進みそうだけどね……。
「でもよかったよ、風月がこの世界に馴染めそうで」
「まぁ、だいぶ適応してきた気がする」
「うんうん、いいじゃん。ちょっと理不尽だけどね、この世界」
「それは確かにそう思う。……花楓から話聞いただけだけど」
そこからしばらく待って、小学生たちが出てきた。
花楓たちもいる。
次は……裁判所だっけ?
めちゃくちゃいいところ行くじゃん。
今だったら楽しめそう、俺も。
クリーチャーが現れちゃったから下水処理場は行けなかったけど、裁判所はよく観察しよ。
またバスに乗って移動することになった。
隣は迅斗……。
「――で、どうだった? クリーチャー」
前を見ながら迅斗は俺に訊く。
「どうって……普通だったけど?」
「無傷で勝てたみたいだな」
「天菜もいたからな」
「聞いた話だと、お前が4体殺したってことになってるけど」
迅斗にも話したんだ、あのこと。
嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい気もする。
「早いな、こんな短時間でクリーチャー4体殺せるようになるなんて」
「今回はみんなスピード遅かったからね……。俺も、技のエネルギー量、いつもより多くしちゃったし」
「充分強くなったんだな。だったら俺が面倒見る必要ないな」
「え、それは嫌だ。まだ死にたくないもん」
「素直か」
迅斗は苦笑して、俺に顔を見せる。
なんとなくだけど、迅斗の顔見てれば落ち着く気がする。
……あ、別に恋愛的に好きとかそういうわけじゃなくて。
そんな感じ過ごしてたら、いつの間にか裁判所に着いてた。
『天星裁判所』ってところ。
高等裁判所かな?
地方裁判所だっえ?
覚えてないな……。
バスから降りると、早速その建物が見える。
よし、次こそはちゃんと見学してやる――
――って思ったら、ポケットに入れてあるスマホが震えた。
画面を見ると、クリーチャー出現情報が。
しかも2箇所……。
それぞれ3型クリーチャーが1体、2型クリーチャーが2体ずつだ。
「……俺が東の方に行ってくる。誰か反対方向は頼む」
迅斗はスマホをすぐにしまって、そのまま跳躍しようとする。
だけど、誰かが迅斗の名前を言って、迅斗の動きを止めた。
それは天菜だった。
「一人じゃ危険だよ。二人で行ったほうがいい」
「……だけど、ここに誰かいなきゃ……」
「うん、わかってる。迅斗が強いってことも。だけど、万が一ってときのために。それに、二人だと戦闘で消費するエネルギー量も多くないでしょ?」
「……納得した。じゃあ風月、俺と一緒に――」
「ちょーっと待った! 次は私が風月と一緒なの!」
花楓、元気だな……。
ってか、こんな会話してていいの?
クリーチャー、もう出現してるんでしょ?
「じゃあ花楓ちゃんと風月は西の方お願い。で、ここは私が残って――」
「わ、私が残ります!」
天菜の言葉を遮ったのは雨米だった。
いつも通り心配そうな顔してるけど、ちょっと力強いような表情を浮かべてる。
「……そっか、じゃあ雨米ちゃんお願い。行くよ、迅斗」
「よし」
天菜と迅斗は高く跳躍して、クリーチャーのほうに向かった。
「風月、私たちも!」
「うん!」
花楓が先に跳躍した。
俺も脚にエネルギーを込めて、花楓に追いつこうとした。
だけどその前に雨米を見た。
なぜかわからないけど、雨米の顔を見たかった。
もしかたしら俺たちがいない間にクアールとかいう1型クリーチャーが出るかもしれない。
そしたらこいつ一人で大丈夫か?
いや、別に雨米が弱いとかそういうのじゃない。
ただ、迅斗と花楓たちがみんなで戦っても勝てなかった相手に、一人で戦って勝てるわけがない。
「――私は大丈夫だよ」
雨米は言う。
その声も、顔もいつものものじゃなかった。
いつもと比べると、落ち着いてる。
「私のことはいいから、行って」
「…………」
「心配しないで。今だから言えるけど、1型クリーチャーくらい、簡単に殺せるから」
なぜか恐怖した。
『殺せる』って単語を聞いた瞬間、背筋が凍りそうになった。
雨米の、まるで射るような視線に耐えきれず、俺も跳躍してクリーチャーのところへ向かった。




