第30話 小学生、護衛 〜1〜
今日が来てしまった。
なんと今日が、小学生の社会科見学の護衛の日。
小学生とかと接する機会があんまりなかったから、正直ものすごく緊張してる。
そのことを迅斗に話したら、『んな緊張するな。あとかわいくないやつらもいるかもだから覚悟しといたほうがいいぞ』って言われた。
詳しく訊くと、『かわいくないやつら』っていうのは『屁理屈ばっか言ったり挑発してくるやつら』らしい。
確かに小学生くらいの子でもそういう子いるよね……。
花楓は相変わらず楽しそう。
天菜もちょっと楽しそう。
雨米はいつも通りって感じ。
その調子で、午前6時くらいに5人で例の小学校まで行った。
校長室に通されて、校長先生に今回の仕事の内容について詳しく説明された。
時程とか。
お昼ご飯のお弁当は学校側が用意してくれるらしい。
そういえば俺の社会科見学はお弁当持参だったな……。
俺は市役所の屋上で食べたけど。
……って感じで自分の過去を思い出してたら、時間になってた。
午前8時に、3年生が校庭に集まった。
朝の集会みたいな感じで。
人数はそこまで多くない。
学年で40人くらい。
最初に校長先生の挨拶をして、その次に学年の代表の子が軽いスピーチしてくれた。
普通にかわいいけどな、今のところは。
さ、スピーチも終わったし、ここから移動かな?
「――ねーねー、その丸いのなに?」
一人の男の子が俺に近づいてきて訊いた。
男の子は俺の腰に掛けてある手榴弾を指差してる。
「あ、これ? お兄さんの武器なんだ」
なるべく声を高くして言う。
こういう言い方、言い慣れてないからちょっと恥ずかしいな……。
「どういう武器?」
「小さい爆弾なの。怖い怖い敵が急に来たら危ないじゃん? そういうときにこれを投げるんだ」
「へー!」
うん、上手く説明できたかな?
天菜はそんな俺を見て微笑んでる。
「お姉ちゃんもこの爆弾使うのー?」
今度は女の子が来て、天菜の手榴弾を指差す。
天菜も満面の笑みを浮かべて優しく言った。
「うん、そうだよ。お姉ちゃんたちはね、みんなを護るために戦うんだ」
「すごい! どうやって戦うの?」
「すっごく速く走ってね、その勢いで悪い敵を倒すんだ」
「カッコいいー!」
天菜はこういうの慣れてそうだな。
気づいたら俺たちは大量の小学生たちに囲まれていた。
小学生たちは俺たちに質問を繰り返している。
そしてそれに答えると、みんな目を輝かせてる。
……こういうのもいいな。
ってか、この子たち、みんな俺たちを怖がってない。
ちゃんと純粋な子どもをしている。
……こういうのがいいな。
「それじゃ、バスが来たので乗りまーす!」
先生が大声で言う。
すると小学校たちはみんな勝手に整列をした。
みんな良い子だな。
うちの小学校だったらこんな綺麗に整列できなかったよ?
確かに校門のところにバスが1台あった。
大きめのバスだから、全員乗れそう。
最初に小学生たちが乗った。
その次には先生たち。
最後に俺たちだった。
俺たちは前の方だ。
で、俺の隣は誰かなー?
微妙だけど、花楓であることを期待してる。
なんでかはわからない。
別に変な下心じゃないよ?
うん、そうなはず。
で、隣は迅斗だった。
……仕方ないか、流れで迅斗が来ちゃっただけだし。
ってか、別に迅斗が嫌なわけじゃないし。
だって寮にいるときは迅斗と一緒の部屋だったんだよ?
……まぁ、女子と一緒でも困るけど。
「――待て」
シートベルトを締めようとした俺を、迅斗は声で制する。
「俺たちはやらなくていいんだ」
「え、なんで?」
「いつでも戦闘態勢になれるように。シートベルトとしてると、席から立ちにくいだろ。それに、俺たちはシートベルトなくても怪我しないし」
確かな。
もしバスが事故に遭ってガラスとかが飛んできたとしても、エネルギーを身体に流してるから無傷で済むし。
少し待ったらバスが出発した。
今見ると、花楓は校長先生の隣に座ってる。
二人とも楽しそうに話してるな……。
「……悪かったな、俺で」
急に迅斗が言う。
俺が花楓をずっと見てるから、なんとなく俺の気持ちを察したんだと思う。
「え、な、なにが!?」
「あいつの隣がよかったんだろ?」
「べべべべ、別に!?」
「ま、俺のことを美女だと思え。そしたらマシだろ」
美女……?
迅斗を美女に?
まず迅斗に口紅を……。
そしてチーク……。
アイラインも描いて……。
……想像するのやめよ、これ以上は。
「どうだ? 俺が美女になったとこ、想像できたか?」
ニヤリと笑いながら迅斗が俺が俺に訊く。
こいつ、わざとだ、俺に想像させたの。
「……で、冗談はさておいて。今日支給される弁当、意外と美味いらしいぞ」
「ちょっと待て、お前そんなキャラだったっけ?」
「俺だって息抜きでキャラを変えたいときもある」
意外なんだけど。
迅斗ってずっとクールキャラだと思ってたのに。
今日の新たな発見だな。




