第27話 デート……? 〜1〜
「それじゃ、準備できた?」
「う、うん……! バッチリ!」
そう言って自分の頬を叩いたけど、やっぱりまだ緊張してる。
行く前に天菜からは『クリーチャーなら心配しないで! 私たちがすぐに討伐に行くから! だからいっぱい楽しんできてね! 風月からもお土産話、期待してるからね!』って言われた。
雨米からは『か、花楓さんの好きなご飯はパスタなので、お昼ご飯とかはそういう系がいいかもです……! それと、グミもかなり好きなようなので……。ぜひ、参考にしてください!』って言われた。
迅斗からは『無理に緊張すんな。これからずっと過ごすことになるから、仲間意識高めるためのもんだ』って言われた。
……もうちょっと迅斗、なんか言ってほしかったな……。
俺たちは一緒に家を出た。
「そういえば風月ってさ、どんな食べ物が好きなんだっけ? ……あ、えっと、ご飯じゃなくて、お菓子っていうか……」
「あー、甘いのなら基本的に好きだよ?」
「え、本当? グミとかも好き?」
お、早速グミの話だ!
雨米の言った通りだ!
「うん、大好き! ……あ、でもこの世界に来てからグミ食べてない……」
「ここの世界のグミ美味しいよ! 向こうの世界と違って、いろんなグミあるんだ! 今日買いに行こ? グミ専門店があるんだけどさ、そこ行こ?」
「う、うん! めっちゃ楽しみ!」
「やったー! 24時間空いてるんだ! 早速行っていい?」
「うん!」
……花楓がグミ好きって、多分本当だ。
だってグミの話してる時、あいつめっちゃ楽しそうな話してる。
俺もグミ好きだし、いろんな話できそう。
向こうの世界にいたときは1週間に1回は食べてた。
甘いの、本当に好きなんだよね。
甘いのだけじゃなくて、甘酸っぱいものとかも好きだよ?
この世界のグミって、どんなのがあるんだろう……。
「――着いたよ」
花楓の声で前を見る。
そこには白色のオシャレな建物があった。
「ここね、本当にいろいろなグミがあるんだ」
花楓は楽しそうにそう言いながら中に入った。
だから俺もそれに倣う。
中に入って気づいたけど、本当にたくさんのグミがあった。
この世界に来てから何回も見たことがあるやつ、マニアしか知らなさそうなやつ、『え、これ本当に売って大丈夫なやつ?』って怪しく思えるやつもある。
それに驚いてると、花楓はどんどん先に進んでしまう。
だから俺も進んだ。
「ここね、他と比べて値段も安いんだ」
確かに格段に安い。
『これ本当に正規品?』って思うレベルで。
「なんでここだけこんな安いの?」
「……そっか、風月はまだ何も買ったことないもんね、この世界で」
急に声のトーンが低くなる花楓。
だから俺も何も言えなくなった。
それでも花楓は言葉を続ける。
「この世界ね、護殺人が商品の8割を負担してるんだ」
「え、なんで?」
「知ってる? 護殺人が人間とは違う扱いだって。数え方も『人』じゃなくて『体』だし。その理由は私もわかんないけど。多分、エネルギー操作とか技を発動できるのが奇妙に見えるんだよね、人間にとって。『この世界に住ませてやるから、商品の値段くらいは負担しろ』ってことなんでしょ」
「ちょっと待って、理解できない。俺たち護殺人は、人間を襲うクリーチャーを殺して人間を護るのが仕事なんじゃないの? なんでそんな上から目線で――」
「風月はまだ知らなくていいよ」
俺の声を遮る花楓。
その顔は無表情だった。
「人間がどれくらい自分のことしか考えてなくて、世界がどれくらい酷いかって」
今気づいた。
花楓は無表情なんかじゃない。
その目は俺よりも奥を見てる。
「――! ごめんね! さ、早く買いに行こっか!」
花楓はすぐにいつもの顔に戻ってさらに奥に行く。
もしかしたら俺はまだ知らないだけなのかもしれない。
俺はこの世界で、たくさんの複雑な顔を見た。
ホノカ、教官、迅斗、天菜、そして花楓。
早く知らなきゃ。
そんな感じがする。
「風月! 早く!」
奥から聞こえる花楓の声。
「うん! ごめん!」
俺は走ってそこまで行った。
最終的な感想。
買いすぎた。
まじで買いすぎた自信ある。
花楓も俺の荷物を見てびっくりしてる。
俺もびっくりしてる。
エネルギーで腕を強化してるから大丈夫だけど、もし俺が普通の人間だったら耐え切れないかも。
よく袋が切れないな。
「か、風月……大丈夫……?」
「大丈夫……! グミに負けてたまるか……!」
「……あ、ちょっと待ってて!」
なにかを思い出したのか、急いで店の中に戻る花楓。
さてと、俺はどうしよう……。
このままお出かけを続けるわけにもいかないし……。
「――あれ、風月じゃん」
どこからか聞こえる声。
聞き覚えがある。
そこを見ると、一人の女の護殺人がいた。
いや、この人知ってる。
美殊じゃん。
「どうしたの? その荷物」
「お前こそなんでここに? この街担当じゃないだろ?」
「今寮に行ってたとこ。これから帰るところだよ? なんか重そうだね」
「ちょっと買いすぎて……。このあとも出かける用事あるのに……」
「ふーん……。じゃあ私が持ち帰ろっか? 風月たちの家に。場所なら地図にのってるし、私も暇だからいいよ。貸して」
俺、なんも言ってないよ?
それなのに荷物を俺から受け取る美殊。
……美殊、めっちゃいいやつじゃん。
「マジでいいの?」
「マジでいいの」
「……助かる、ありがと」
「同じ仲間ですから。助けなきゃね」
美殊は俺の荷物を持ったまま、走ってどこかに行った。
俺の家の方向だ。
「――? あれ? 荷物は?」
後ろから花楓の声。
振り向いて見てみると、不思議そうな顔をしてる花楓が。
「ここのお店、一旦預けることができるから、それをお願いしてたんだけど……。帰りに取りに行けばいいかなーって」
「あーっと……解決した!」
「そ、そっか……」
うん、意外となんとかなるもんだ。
よし、これからも頑張るぞ!




