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第22話 危機

 一瞬だけ、男が消えたような気がした。

 また自分の姿を煙にしたかと思ったけど、そうじゃなかった。


 ただ高速で俺に斬り掛かってきてただけだった。


 男の刀は、俺のすぐ目の前まで迫ってきていた。

 ちょうど俺の首を狙っている。


 俺は咄嗟に首にエネルギーを込めたけど、やっぱり無傷では済まなかった。

 俺の首が軽く切れて、そこに鋭い痛みが走る。


 男は刀を引いて、今度は俺の頭を刺そうとしてる。


 エネルギーで『風』を出して、それで男を遠下げようと思ったけど、それはできなさそう。

 首に集中してエネルギーを流してるから、その分に使うエネルギーが少なすぎる。


 刀の切っ先がどんどんこっちに向かってくる。


 少しだけ身体をずらして、致命傷だけは避けたい――!


 そう思ってたら、男の動きが一瞬だけ止まった。


 花楓が男の背中をナイフで刺していたからだ。


 「――風鎖廻刃(ふうさかいじん)


 刹那――目の前に血が舞った。


 その血の正体を見る前に俺は男から離れて、首にある切り傷を手で押さえる。

 血の温度が伝わってくる。


 男を見ると、服の背中の部分に血が付着していた。

 少量じゃなくて、まるで重症を負ったみたいに。


 ナイフによる傷?

 いや、その程度じゃあんな量の出血はしない。


 「そこだ!」


 理来が片手に手榴弾を持ちながら男に向かう。

 迅斗は地面に手を付けて、男を睨んでる。


 花楓を見ると、手に握っているナイフはボロボロに崩れていた。


 「風月! 大丈夫?」


 使い物にならないナイフを捨てて、花楓がこっちに来る。


 「……ちょっと……やられちゃった……」

 「首……!」


 花楓は何かをさがすように辺りを見渡す。


 「……病院の場所、わかる?」

 「……わかるけど……」

 「ごめんだけど、一人でそこまで行って。首にエネルギーを流したままにするのを絶対に忘れないで」


 花楓は自分のスカートの裾を破って、それを俺の首に当てる。

 そしてすぐに男のところに向かった。


 男は背中から血を垂らしながら、理来に斬り掛かっている。

 理来はそれを躱していて、男にあまり近づけていない。


 病院に行けって言われたけど、多分一人じゃ行けない。

 なぜだか知らないけど、身体が動かないから。


 首の大事な脈とか切れて、身体を動かせなくなった……?

 それとも、首にエネルギーを流しすぎてるせいで、脚を動かすエネルギーも足りないのな……?


 どっちにしろヤバい。


 ……そうだ、電話で……!


 俺は震える手をなんとか動かして、ポケットからスマホを出す。

 そして雨米に電話をかけた。


 しばらく待ってから、雨米につながった。


 『――どうしましたか?』

 「雨米……! 聞こえるか……?」

 『はい……、一応……』

 「1型クリーチャーが……出現した……! 俺たちだけじゃヤバいかもしれない……! だから……もしよかったら……お前も――!」

 『……1体の1型クリーチャーと、数十体の2、3型クリーチャーの群れ、どちらを優先したほうがいいと思います?』


 え……?


 『私は後者だと思います。気づいてますか? 大量のクリーチャーがこの街に向かっていることに』

 「それは……天菜が……!」

 『サポートの天菜さんだけじゃとても追いつきませんよ。私は天菜さんを手伝います』

 「…………」

 『安心してください。教官に連絡して、これからもっとたくさんの殺護人が来ることになっています。それまで耐えてください。風月さんならできるはずです』


 ここで電話は切れた。


 雨米がこっちに来てくれないことよりも、2型クリーチャーの群れが来てるってことに驚いてる。


 1体だけならまだなんとかなる。

 でも大量に来られると、こっちも負ける気がする。


 この1型クリーチャーを倒しても、大量の2型クリーチャーが来たら俺たちは簡単にやられる。


 とりあえず……、助けが来るまで待つしかない……。


 「――図に乗るな!」


 聞こえる男の叫び声。

 視線をそこにうつすと、脇腹が赤く染まってる花楓と、俺と同じように首から血を流してる迅斗がいた。


 理来と美殊は一切動いてない。


 多分、男の『煙』の能力で動きを制されてるんだ。

 さっきの俺みたいに。


 よく見ると理来がさっき持ってた手榴弾が消えていた。

 もう投げたのか……?


 「無駄に集まりやがって!」


 近くに誰かがいるわけでもないのに、男は刀を振り回す。


 すると、辺り一面が『煙』に包まれた。

 数メートル先も見えない。


 急に現れた霧のようなものに戸惑い続けて、やっと気づいた。


 刀の切っ先が、俺の頭に向かって伸びてきているということに――。

 数刻前。


 雨米はポケットからスマホを出し、画面を少し操作してそれを耳に近づける。

 風月から電話がかかってきたのだ。


 「――どうしましたか?」

 『雨米……! 聞こえるか……?』

 「はい……、一応……」

 『1型クリーチャーが……出現した……! 俺たちだけじゃヤバいかもしれない……! だから……もしよかったら……お前も――!』

 「……1体の1型クリーチャーと、数十体の2、3型クリーチャーの群れ、どちらを優先したほうがいいと思います? 私は後者だと思います。気づいてますか? 大量のクリーチャーがこの街に向かっていることに」

 『それは……天菜が……!』

 「サポートの天菜さんだけじゃとても追いつきませんよ。私は天菜さんを手伝います」

 『…………』

 「安心してください。教官に連絡して、これからもっとたくさんの殺護人が来ることになっています。それまで耐えてください。風月さんならできるはずです」


 そこで雨米は電話を切った。


 「――あーあ……」


 雨米はポケットにスマホをしまい、目の前に散らかっているものを見る。

 それは大量の2、3型クリーチャーの死体だった。


 「東、北、西のザコは全滅完了っと……」


 雨米は死体を踏みながら、ゆっくりと歩いた。


 「ごめんね――」


 「――まだみんなに、『私』を見せるわけにはいかないの……」

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