第18話 技名、考えてもらおう
そこから数週間が経ったけど、教官が言ってた1型クリーチャーと遭う気配はない。
もちろん、クリーチャーは普通に出るけど。
その度に俺たちはみんなで討伐に行った。
俺ももう完全にエネルギーを操れるようになって、もうバンバン技使ってる。
……『バンバン技』って名前じゃないよ?
そういえば技に名前とかつけたほうがいいのかな?
……いや、別にカッコいいからとかじゃないよ?
だけどさ、戦ってるときに『あの技使うからみんな離れろ!』とか言うの面倒くさいじゃん。
だから技名つけて、それを言えばみんな伝わるじゃん?
そのことを迅斗に相談したけど、『俺ネーミングセンスねぇからなー』って却下された。
花楓はノリノリで『うん、やろう! 楽しそう!』って言ってたけど、花楓のネーミングセンスも絶望的だった。
花楓の技に、『周囲に風を起こして、その風圧で敵を倒す』みたいなのがあるんだけど、花楓がその技に名前をつけたら『とにかく風起こしのスペシャル技』とかだった。
天菜は苦笑いしながら『うーん……私はいいと思うんだけど……ネーミングセンスないからなー……』って言ってた。
迅斗と天菜は謙遜しすぎな気がするけど、本当にネーミングセンスなかったら気まずいからなんも言ってない。
雨米は『わ、私が名前つけるなんて……無理ですよ……』って感じ。
『俺は名前つけるけど?』って言ったら、みんな『どうぞお好きに』だった。
悲しいね、なんか。
俺もネーミングセンスには自信がないから、教官に頼もうって思って電話したら『わかった、じゃあまずお前らの技見なきゃな。今度呼ぶから待ってろ』って言われた。
教官が名前つけてくれるらしい。
……マジでつけてくれるんだ、名前。
俺から提案したけど、なんか嫌だな、これ。
「風月ー、部屋入っていいー?」
外から声がする。
迅斗がたまに来るから『今日も迅斗かな?』って思ったけど、今日は違う。
花楓の声だ。
「……あ、別に入らなくて大丈夫! 部屋、あんまり人に見られたくないよね! ちょっと話したいなって」
「いや、別に中に入っても大丈夫だけど……」
見られて困るものはない……多分。
ドアを開けると花楓がいた。
それ以外に人はいない。
「風月はもう行った? 教官のところ」
「教官? いや、行ってないけど……」
「私はさっき行ってきたんだ。『技名つけてやるからさっさと技見せろ』って言われちゃった」
あー、俺のせいじゃん。
「で、見せたの?」
「うん、とりあえずできるやつは全部やったよ。そしたらね――」
花楓が喋ってる最中だった。
突然俺の視界が歪んだ。
視界は一瞬でもとに戻ったけど、景色は変わっていた。
道場みたいな場所。
「よ、急に呼び出して悪いな」
後ろから聞いたことがある声が。
周りを見ながら振り向くと、そこには教官が立っていた。
「お前はここに来るの、初めてだったな。どうだ? ここで訓練してみたかったか?」
ここ……道場……?
確か寮にも『道場』っていう場所はあった気がする。
俺は行かなかったけどね!
「あの……今のって……」
「便利だろ? 名付けて、『どこでも簡単に呼べちゃう技』だ!」
あー……。
「前にお前から相談があったよな。技名のことについて。私が考えてやるから、とにかくできる技はやってみろ」
「え、今ですか?」
「今だ。そのために呼んだんだ。遠慮なくやってくれ」
「こんなとこでやって大丈夫なんですか……? いや、俺の技でこの建物が崩壊するとかはないと思いますけど」
「そのへんは大丈夫だ。試しにやってみろ」
本当かな……?
ま、責任は教官にあるし、大丈夫か。
俺はとりあえずこの前編み出した技を発動させてみた。
指先にエネルギーを込めて、それを弾丸みたいに発射する。
そのエネルギーの小さい塊は道場の壁に当たるけど、壁は無傷。
確かに俺の技なら大丈夫っぽい。
「へー、なんかどこにでもある技だな」
「べ、別にいいじゃないですか!」
「ほら、次もやってみろ」
恥ずかしいな、なんか。
それでも教官に反抗する気になれなかったから、言われるがままにやった。
掌から『風』を放出させたり、周囲に『風』を巻き起こしたり。
身体の一部から『風』を放出させることもできる。
あとは……武器も使ったな。
『風』を使ってナイフを速く、遠くに飛ばしたり、刀でも同じことをした。
ただ、何回も技を連発したから体力的に限界が来てる。
「きょ、教官……! これで……いいですか……!」
「もう終わりか? わかった、私が名前つけてやるよ」
俺はわかる、教官、絶対ネーミングセンスない。
さっきの『どこでも呼び出しなんちゃら』ってやつでわかった。
「――それより、最後に私のやつも見せてやるよ。色々なエネルギー、見てたほうがいいだろ?」
教官の技?
確かにそれは気になる。
教官って言うだけあるし、強いのかな?
教官は床に掌をつける。
すると、一瞬にして床一面が氷と化した。
まるでアイススケート場だ。
「それじゃ、今度メールで届けてやるから楽しみに待っとけよ」
教官は最後にニッコリしながらそう言った。
するとさっきみたいに俺の視界は歪んだ。
また一瞬で戻ったけど、もう道場にはいなかった。
さっきまで俺がいた場所――家だ。
目の前にはさっきと同じように花楓がいる。
「あ、風月! おかえり!」
「た、ただいま……」
「疲れたでしょ? これ、食べる?」
花楓はポケットに手を入れて、そこからなにかを出す。
グミだ。
そういえばこいつ、グミマニアだったな、自称だけど。
俺はお礼を言ってから一粒だけもらった。
うん、美味しい。




