第17話 教官から電話
せっかく雨米と二人でいい感じだったのに……!
クリーチャーが現れちゃったせいで台無しじゃん……!
まぁ、犠牲者は一人もいないみたいだからよかったけど!
天菜は結構怪我しちゃったけど。
家に帰ってから、腕に包帯巻きながら『大丈夫だよ、このくらい。ちゃんと痛みも感じるし、動かせるし』って笑いながら言ってた。
やっぱり天菜は強いんだなって思わせる。
「……そういえばクリーチャーの死体ってどうするの? 俺たちなんもしてないけど」
「『死体処理班』ってやつもいるから、そいつらが片付けてくれてる」
へー、そんなのあるんだ。
俺もできればそっちがよかったな、戦いたくないし。
そのとき、俺のポケットに入れてあるスマホが突然震えた。
急いで出してみると、教官から電話がかかってきてた。
急に何の用だろう……。
俺はとりあえず電話に出ることにした。
「はい、風月です」
『風月か。急いでスピーカーにしてくれ」
え、スピーカー?
俺と教官の会話、聞かれちゃうの?
ちゃんとみんなこの場にいるし。
だけど言い返す勇気がないから俺は仕方なくスピーカーにして、教官の声がみんなに聞こえるようにした。
『その場に全員いるか?』
教官の声で、みんなが一気に険しい表情になる。
その理由は俺もわからない。
ただこの教官の言い方、笑えるような話じゃないってことはわかる。
「はい、全員います」
『お前ら知ってるか? 最近護殺人の死亡率が著しく高くなってるんだが』
「あの、教官、死亡率というのは……」
ここで天菜が遠慮がちに訊く。
さっきまで座ってたのに、今は立ってる。
『クリーチャーらしきやつに殺されてるってことだ。事故や自殺は含まないで』
「クリーチャー……」
『クリーチャーに殺されてる』。
俺もクリーチャーに殺されそうになったから、なんとなく想像できる。
『ああ、それもきちんと死体は残ってる。だから3型クリーチャーにやられた可能性はないと言っていいほど低い』
「すると……2型クリーチャーですか?」
ここでも質問したのは天菜だった。
他のみんなは教官の言葉を待っている。
『……その質問にはまだ答えない。殺され方だけを言う。全員刀で殺されてた』
「刀……!」
ここで天菜はなにかに気づいたらしく、目を大きくして驚いてる。
迅斗もそうだった。
『ああ、2型クリーチャーは基本的に刀は使わない。つまり――』
「1型クリーチャー……ってわけか……」
今度は迅斗がつぶやく。
1型クリーチャー。
さっき雨米が教えてくれた。
ヒト型のクリーチャーで、知能が高い。
そして、他のどのクリーチャーよりも強い。
知能が高いってことは、武器を操れるかもしれない。
『そうだ。もしかしたらお前らの近くにいるかもしれない。見つけ次第、早急に討伐しろ。もしお前らが死んだら私たち教官が討伐することになるから、絶対に仕留めてくれ』
そして電話は終わった。
俺たちはしばらく無言で、みんなの顔を見つめ合っていた。
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「…………」
無言で電話を切るのは蝶香。
彼女は今、とある部屋の前に立っていた。
その部屋の名前は『教官会議室』。
教官だけが入ることが許される部屋だった。
蝶香は深呼吸をしてから中に入る。
部屋の中央には大きめの円形の机があり、等間隔で重々しい椅子が配置されていた。
その椅子の数は10個。
その中の3つの椅子にはすでに人が座っていた。
蝶香と同じくらいの年齢の男女が一人ずつ、40代半ばの中年の男が一人。
「あれ? まだこんだけしか集まってねぇのか?」
近くにある椅子に座りながらつぶやく蝶香。
「みんな忙しいんだって」
そう答えたのは女だった。
彼女の名前は水沙――第6教官を務めている。
蝶香と同時に教官に就いた者だった。
「はぁ? 忙しいって……会議より忙しいものなんてあるのかよ」
「いやー、俺は誘ったんだよ? でもみんな来ないんだよ。『今川焼食べに行くから無理』とか『ゲーセンで遊んでくるから無理』とか」
そう答えるのは中年の男――第9教官の秋太だった。
「ゲーセンって……。もしかして、会議に参加するの、私たち4人だけ?」
「そうみたいだな、まぁ、大丈夫だろ。もし教官の中の誰かが例の1型クリーチャー討伐に向かっても、どうせすぐ勝てるし」
今度は蝶香と同じくらいの年齢の男――第7教官の智鶴。
「それじゃ、もうどうせ誰も来ないだろうしさっさとやっちゃおうぜ。蝶香、お前が司会役頼む」
「私? そういうの苦手なんだよ……」
「いいだろ? お前が一番番号若いんだから」
「どんな決め方だ。……まぁ、進まなくなるし早くやるぞ」
蝶香は表情を真剣なものにし、座っている3人に向かって言った。
「――これから、1型クリーチャーの討伐についての話し合いを始める――」
「――そしてその後、五神楽苛の行方についての話し合いも行う」




