第16話 2型クリーチャー
「……やっぱちょうどいいな」
迅斗がつぶやく。
俺は敵を警戒しながら、その言葉の意味を考えた。
でも俺が答えを見つける前に、迅斗はその答えを口にする。
「花楓、ここからは俺たちの見せどころだ」
「え……?」
「風月に教えてやるんだよ、戦い方をな。風月はできる限り協力しろ! そして花楓! 俺たちの目的はこいつの討伐と――」
迅斗が少しだけ腰を低くする。
「風月のボディーガードだ!」
突然迅斗がクリーチャーを目掛けて走り出す。
脚に全力でエネルギーを込めていたのか、ものすごく速い。
クリーチャーもそれに負けなかった。
高速で向かってくる迅斗を躱して、そのまま噛みつこうとする。
「ちょっ、私も行く!」
花楓も同じようにクリーチャーに向かう。
「巻き込まれんなよ!」
迅斗が叫ぶと同時に、周囲に電流が流れたような音がした。
俺のところまでは来なかったけど、クリーチャーはそれを喰らって痺れてるっぽい。
その隙に迅斗は刀でクリーチャーの首を刺す。
すると、クリーチャーの全身から触手のようなものが一気に生えた。
「なッ……! なんだよこれ……!」
触手が迅斗に絡む。
触手はまるで一本一本が生きているかのように、不規則に動いている。
迅斗に絡んでる触手は花楓が刀で切断して、その勢いでクリーチャーも切断しようとした。
だけど触手が花楓を叩きつける。
ヤバい……花楓が……!
俺は親指と人差し指だけを伸ばして、手を拳銃のような形にして、クリーチャーに人差し指を向ける。
そして指先だけにエネルギーを込めて、そのまま放出した。
するとそこから、まるで本物の銃みたいに空気の塊が放出された。
それはクリーチャーの身体に当たって、クリーチャーは怯む。
クリーチャーの身体に、銃創のようなものができてる。
今の俺のやつだ。
「風月ナイス!」
花楓が触手を数本掴んでそれを引きちぎる。
するとクリーチャーは苦痛に満ちた唸り声をあげた。
と思ったら、今度は俺に触手を伸ばしてきた。
ヤバい……間に合わない……!
本当に多少のダメージを覚悟したとき、迅斗が俺の前まで来て、その触手を切断した。
「さっきは助かった」
「いや、これ……ありがと……」
「来るぞ」
え、もう!?
気づいたら敵は俺に噛みつこうと、走って向かってきていた。
鋭い牙が見えて、こんなので噛まれたらひとたまりもないってのはすぐにわかった。
俺はそれを咄嗟に避ける。
反対側に回り込むと、クリーチャーもそれについてきた。
今は刀で戦うしかない。
そう思ったていると、誰かが窓を突き破って中に入ってきた。
天菜だった。
天菜は空中にいるままクリーチャーを蹴り飛ばした。
「風月! 大丈夫?」
「ああ……」
「天菜ちゃん、ナイスタイミング!」
「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」
「そんな呑気な話してる場合じゃねぇぞ!」
迅斗の叫び声で現実に戻る。
クリーチャーは体勢を立て直して、天菜に走って向かっていった。
ある程度近づくと、天菜の顔を目掛けて飛んだ。
急なことで追いつかなかったのか、天菜は咄嗟に左腕を顔の前に出す。
クリーチャーはそのまま天菜の腕に噛み付いた。
そのときの勢いで天菜は外に落ちる。
俺たちもすぐに外に出た。
天菜は今、空中にいる状態だ。
最初に動いたのは花楓だった。
花楓はそこから落ちて、刀でクリーチャーの首を削ぎ落とそうとする。
けれどクリーチャーの首に刃が食い込んだ瞬間、クリーチャーの触手が花楓の腹に刺さった。
花楓はそのせいで刀を放してしまう。
まだ刀はクリーチャーに刺さったままだ。
まずい、今やらなきゃもっとやられる。
俺は花楓と同じように落ちる。
そして花楓が放した刀を俺が掴んだ。
と思ったら、迅斗も俺と同じことをしていた。
……よし、このまま二人でいけば――!
俺たちは同時に力とエネルギーを込めて、刀を押す。
するとクリーチャーの全身から『衝撃波』が放出された。
それになんの対処もできなくて、俺たちは吹き飛ぶ。
顔面に思いっきり喰らったから、そこが――特に鼻が痛い。
俺たちはそのまま地面に打ちつけられる。
ギリギリエネルギーを流してたから怪我はしてないと思う。
だけど痛いのは変わらない。
天菜とクリーチャーも地面に落ちていた。
天菜はサバイバルナイフをクリーチャーの口に押し当てて必死に噛まれないようにしてる。
『助けなきゃ』。
そう思った瞬間、クリーチャーは口からナイフを放し、天菜の右肩を噛みつく。
天菜は一瞬だけ苦痛の声を漏らした。
俺はさっきみたいに指からエネルギーを放出しようとした。
でも痛みのせいで狙いが定まらない。
間違えて天菜に攻撃が当たったら大変だ。
狙いを定めるために観察していると、天菜は片腕で急にクリーチャーを抱きしめた。
もちろん、強く。
「終わりだよ」
天菜は額から汗を流しながら腰からハンドガンを抜く。
そしてクリーチャーの頭を射抜いた。
1発だけじゃない。
何発も頭を撃ってる。
するとクリーチャーは倒れて動かなくなった。
「天菜ちゃん……怪我……」
天菜が起き上がると同時に花楓が天菜に近づく。
二人とも服に血がついてる。
「ちょっとやられちゃったね……。まぁ、家帰って治療すれば大丈夫だよ」
天菜はニッコリ笑った。
無理して笑ってるようにしか見えないけど。
それより俺、めっちゃ情けないな……。
「……護殺人……また増えた……」
屋上から天菜たちを見てそうつぶやくのは、右目に眼帯をつけている一人の男。
彼の右手には刀が握られていた。
「排除しなければ……」
男は再びつぶやく。
すると、男の姿がまるで煙のように消えた。
「――私、やっぱ来なくてよかったかも」
男がいた場所に歩み寄り、その場に立つのは雨米。
「ちょっと強いやつがいるかなーって思ったら、どうやら今は戦う気はないみたいだし。ってか今のやつ、エネルギーの質は『煙』か――」
「――私の『炎』にどれだけ耐えられるかは興味があるけど……、みんなに譲ってあげるか」




