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第15話 小学校へ

 なんとか飲み終えて、急いで雨米について行った。


 雨米は意外と速くて、俺が脚にエネルギーを流しても全然追いつかない。


 俺たちはとある小学校まで行った。


 「ここのどこにクリーチャーがいるんだ……?」

 「……2階の右から10番目の窓が一番近いです」


 2階……右から10番目……。

 俺はすぐに数えて、その窓の場所を確認する。


 「よし、行くぞ」

 「……ごめんなさい……」


 ? なんで謝るの?


 「私……まだ勇気が出なくて……。クリーチャーと戦うの……怖いです……。負けそうで……」


 え、じゃあどうするの!?

 俺だって一人じゃ戦えないよ!?


 「なぁ、雨米! 俺の隣にいてくれるだけでいいから! 戦わなくていい! だからついてきてくれるか?」


 雨米の目を見つめながらそう言う。

 でも雨米は俺から目を逸らした。


 「頼む! じゃなきゃ俺もいけない! お前がいるだけでだいぶ変わるんだ!」

 「……それ、どういう意味?」


 雨米……?


 口調もそうだけど、雨米の『なにか』が変わっていた。


 「私がいれば、クリーチャーは標的が二つに増え、自分が狙われる可能性が減るから? それとも、私を(おとり)にするつもりだった?」


 間違いない、雨米がいつもと違う。

 いつもはオドオドしてるというか、でも優しい目をしている。


 だけど今は違う。

 俺に見ている目は、俺を射貫(いぬ)きそうなほど鋭かった。


 「いや……そんなわけじゃ……」

 「じゃあなんでなの?」

 「……一人じゃ……無理なんだ……」

 「……無理なんだ。今回のクリーチャーは1匹。2型クリーチャーだね。確かに、3型クリーチャーとの戦いで死にそうになってる君だとかなり苦しい戦いになるかもしれない。だから放棄するの? 自分の仕事、運命を」

 「違う!」


 俺は雨米に向かって思いっきり叫んだ。

 それでも雨米は驚いた様子を見せない。


 「俺一人だと無駄死にする可能性がかなり高いんだ! 俺は普通に死にたくないし、クリーチャーはただ俺を喰って、さらに一般人も喰うかもしれない! もし俺がやられても、お前がいればそれを止められるかもしれない! 時間稼ぎでもいいんだ! その間に――」

 「良かったです」


 雨米が俺の声を遮る。


 今の雨米はいつも通りだった。

 口元に笑みを浮かべて、優しい目で俺を見ている。


 「『かっこいいから』とかいう下らない理由でただ進むのではなくて、きちんと自分の命、そして他人の命も考えられるようになって、本当に良かったです」

 「雨米……?」

 「さ、行きましょう。私も行く気になりました」


 雨米の力強い言葉に押されて、俺も行く気になった。


 俺は雨米が教えてくれた窓に向かって跳躍する。

 雨米もそれについてきた。


 俺は窓を突き破って中に入る。

 身体にエネルギーを流してたから痛みは感じない。

 もちろん、強化されてるから怪我もしてない。


 中は教室になってて、一人の男子生徒がカッターナイフを持ちながら、目の前にいるオオカミ型のクリーチャーを怯えた目で見ている。


 俺は空中にある、飛び散った窓ガラスの破片を掴んでそれをクリーチャーに向けて投げる。

 それはクリーチャーに刺さって、クリーチャーは一瞬だけ怯んだ。


 その隙に俺はサバイバルナイフを腰から抜いて、それをクリーチャーに刺し、蹴り飛ばした。


 脚にエネルギーを込めてたから俺の脚力は上がって、クリーチャーは壁に強く打ち付けられてた。


 「もう大丈夫です。ほら、乗ってください」


 雨米が男子生徒に背中を見せてしゃがむ。

 『背中に乗れ』って伝えてるんだ。


 男子生徒は今にも泣きそうな顔で、雨米に乗る。


 雨米はそのまま立ち上がって、俺が破ってきた窓から外に出る。


 なるほど、雨米は戦闘が苦手だから避難に回ったのか……。

 賢い判断だと思うけど、それじゃ俺が一人になる。


 さっき『一人じゃ戦えない』って言ったんだけどなー……、そんなこと言ってる場合じゃないけど。


 俺は刀を抜いて、クリーチャーにかまえる。

 クリーチャーは起き上がってて、警戒するような目で俺を見ている。


 ……これが『2型クリーチャー』か。

 確かに前に戦ったやつより身体が小さい。

 小さいっていっても、普通のオオカミと同じくらいのサイズだ。


 これは速そうで厄介だな……。


 でも俺はもうエネルギーの扱い方に慣れてる。

 さっきだってほぼ無意識にエネルギー流してたし。


 雨米もあの男の子を避難させたあと、俺のところに来てくれるはずだ。

 ……来てくれるよね……?


 それまでは俺がここで耐えるんだ。

 勝たなくていい、時間を稼げば大丈夫。


 そのうちにあいつらが来るから――


 「――お待たせ!」


 そう言って、俺と同じように窓を突き破って来たのは花楓だった。

 

 「花楓!」

 「俺もいるっつーの!」


 今度は迅斗も中には入ってくる。


 新しく現れた敵を警戒して、クリーチャーは唸る。


 「! 2型クリーチャー……!」


 刀を抜きながら迅斗がつぶやく。

 よく見ると花楓も目を大きくして驚いてる。


 この感じ、『2型クリーチャーは強い』って思ってるに違いない。


 こいつらでさえ2型クリーチャーを恐れる、か……。

 3型クリーチャーのときは表情を変えないですぐ立ち向かったのに。


 やっぱお前らが来てくれて助かったわ。

 じゃなきゃ俺、また死ぬ思いするところだった。

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