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第13話 絶望

 「――おい、入っていいか?」


 ドアがノックされる音と迅斗の声がドア越しに聞こえる。


 俺はできるだけ明るい表情をつくってからドアを開けた。


 「このあとみんなで話し合い――」


 そこまで言ったところで迅斗は言葉を止めた。

 俺の顔を見た瞬間だった。


 「……やっぱりあのときは覚悟できてなかったみたいだな」


 迅斗はそう言うと階段に向かって『俺と風月は不参加で!』って大声で言った。

 そして『中に入るぞ』って俺の部屋に入ってきた。


 ドアを閉めて暗かったけど、迅斗は電気をつけようとしない。


 「お前、多分教官にメールしたんだろ? メールじゃなくても電話とかで。で、言われたんだろ? ボロクソに」

 「……まぁ……」

 「最初のあれはきちんと覚悟できてなかったみたいだな。クリーチャーの恐ろしさ、もうわかっただろ?」


 俺が頷くと迅斗は『ま、本当に恐ろしいのは俺たちを普通に利用する護殺人のトップとかだけどな』ってつぶやいた。


 「お前は一度同意したんだ、『死ぬまで戦う』って。そうしてしまった以上、戦うしかないな。……同意って言ってもほぼ強制的だったと思うけど」

 「…………」

 「大丈夫だ、最初はそう落ち込んでも、だんだん元気出てくるから。俺も最初は食欲とかなくなったり生きる希望見えなかったけどよ、今はなんともないし。それに、時間が経てばお前も強くなる。最初は俺たち複数で戦おうぜ? 一人じゃなくて」


 確かに迅斗の言っていることもわかる。

 一度俺は同意したんだ、教官の言葉に。


 教官は『死ぬまで戦え』って言った。

 しかも『化け物と戦う』とも言った。


 そこからどれだけ危険かは想像できてたはずだ。

 興奮状態でそこまで頭が回らなかったってわけじゃない。


 俺はあのときホノカから精神安定剤を飲ませてもらって、逆に落ち着いてたんだ。


 悪いのは……俺なんだ……。


 「……なんか好きなものあるか? 食い物だけど」

 「え……?」

 「連れてってやるよ。なんか好きなものある?」

 「……甘いもの……」

 「そっか、じゃあ甘いもの食べに行こうぜ、今から」

 「…………」

 「だから元気出せ。お前が元気なくなると、花楓のやつも元気なくなるんだよ」

 「あいつが……?」

 「お前が散歩してるとき、ずっと言ってたからな、『風月遅いなー』って。お前のこと好きなんだよ。……恋愛的な意味じゃないと思うけど」

 「花楓……」

 「あいつのためにも元気出せ。わかったか?」

 「……ああ! よし、じゃあ甘いもの食べに今から行く――」

 「今はどの店も閉まってるよ」


 じゃあ提案すんなよ。

 お前さっき『今から』って言ってたよね?


 「……で、なんかさっき断ってたよな? 『俺は不参加で!』みたいな」

 「話し合いだとよ」

 「この時間から?」

 「かなり大事なやつらしい」


 じゃあ俺たちも参加しなきゃじゃん。

 そう思って下に向かうとしたけど、それより早く迅斗が言った。


 「出る必要ねぇよ。話題が全然シリアスじゃないから」

 「? どういう意味?」

 「グミについて、だって」


 ……は?

 え、グミ?


 グミって、あのグミ?

 お菓子のやつだよね?


 それともグミっていう名前のクリーチャー?


 「花楓がグミ好きだから、それについて話したいんだって」

 「へー、あいつ、グミ好きなんだな」

 「自称『グミマニア』だからな。じゃ、俺は疲れたから寝る」


 そうだね、もう寝る人は寝る時間だね。

 俺も疲れたし寝たいな……。


 でもシャワーとかってどうするの?

 女子と共有?


 なんか使いづらいな……。

 なんかの間違いで『風月が覗き見した!』なんて言われたくないし。


 迅斗はもう帰っていった。


 俺も元気出すか、迅斗の言う通り。


 俺はドアを閉めて電気をつけた。


 さ、スマホでもいじるか。

 ゲームとか入れられるかもしれないし。


 そう思ったらドアがノックされた。


 また迅斗?


 すぐにドアを開ける。

 そこには雨米がいた。


 「雨米?」

 「あ、あの、風月さん……。その……甘いもの……好きですか……?」

 「うん、好きだけど……」

 「なら明日……一緒に駅まで行って甘いもの飲みませんか……? 美味しいところ、知ってるんですよ……」

 「そうなの? じゃあ行こっかな」

 「それと……これが……風月さんに……」


 雨米がポケットから紙を出してきて、それを俺に差し出す。


 「誰かが風月さんに置いていったみたいで……。それじゃ……失礼します……」


 雨米はそう言ってすぐに帰っていった。


 それより手紙かな?


 俺はドアを閉めて、立ちながらその紙に書いてある文字を読んだ。



 『これに()りたらもう一人で戦わないこと。私、せっかく君に期待し始めたのに、死んじゃうなんて嫌だからね? 私もまだ、本気で戦いたくないし』


 ……なにこれ。

 きっと、さっきの手紙を書いた人と同じ人からだ。


 この人……なに言ってるの?

 めっちゃ『自分、強いですよ』感出してるけど。


 こういうのって本当に強いか、めちゃくちゃ弱いかのどっちかなんだよね。


 さらに下に、なにか書いてある。


 『私の予感だけど……動いるのはクリーチャーだけじゃない』


 どういう意味?

 動いているのは……みんなだよ?

 みんな動いてるよ? 生きてるし。


 ま、いっか。


 俺は手紙を机の引き出しの中に入れた。


 それより明日は雨米と駅前、か……。

 緊張するな……。


 女子と行ったことないからな、そういうとこ。


 緊張しすぎて寝れないかも。

 明日みたいな日に精神安定剤が欲しい……。

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