第1話 異世界転移……?
人間は自分勝手だ。
平等でもないくせに平等と叫び、平和でもないのに平和と謳う。
そんな人間の思考が理解できない、したくもない。
だからコレをつくったのだ。
もし私が死んでも、私と同じ考えの者――コレを継ぐ者はいるはずだ。
さぁ、まずは独りで想像し、創造するか。
人間の滅亡を――。
「じゃ、バイバイ」
そう言って離れていく友達に手を振る。
その友達は俺に背中を向けたまま手を振ってる。
俺の名前は笹川風月、普通の高校2年生。
学力は真ん中くらいで、特に目立ったことはない。
だから自己紹介とかで一番面白くない系のやつ。
やっと学校が終わって、今は帰り。
どうしよ、帰りに牛丼食べてこっかな?
でも最近牛丼高いんだよね、400円とか超えるし。
高校生にとっては痛い値段ですよ……。
それと、意外と甘いものも好きなんだよね。
アイスとか。
でもな……金欠だし……。
よし、今日は真っ直ぐ帰るか。
俺は牛丼屋をスルーして、そのまま歩く。
俺の家は人通りが少ないところにあるから、家に近づく度に人がどんどんいなくなる。
あと50メートルくらいで家に着くってといには、もう誰もいない。
部活帰りで辺りが暗くなってきたときとか怖いんだよね、この辺り。
あと数メートルで家に着く。
安心感溢れるなー、ここまで来ると。
そのとき、後ろに『何か』を感じた。
なんかフワッとしたドロッとした感じ。
振り向くと、そこには緑色の穴があった。
ブラックホールみたいなやつ。
……なにこれ?
……俺疲れてるのかな?
そう思ってブラックホールみたいなのを見てたら、急に強い風が吹いた。
……いや、ただの風じゃない?
これ、俺吸い込まれる系だよね!?
急いで逃げようとするけど、前に進まなくなる。
そして身体が後ろに下がって、ブラックホールにどんどん近づく。
なにこの急展開!
俺なんか悪いことした!?
死んだら天国行けるくらい、悪いことしてないよ!
……いや、悪いことしなければ天国に行けるんだっけ?
って、今はそんなのどうでもいいの!
ヤバい! 足が地面から……!
そのまま俺は、ブラックホールに吸い込まれた。
──────────────────
「――!」
目が覚めた。
最初に見えたのは青色の空。
身体を起き上がらせてみる。
俺はどうやら野原にいるみたいで、草のにおいがする。
……ここ、どこ?
……待って、なんかわかってきた。
ブラックホールに吸い込まれて、起きたら知らない世界……。
これって……『異世界転移』!?
だって、絶対そうだよね!?
ただ、向こうのほうに見えるのはただの街。
都会ではないけど、田舎でもない程度の街。
車とか普通に通ってる。
めちゃくちゃ高いわけじゃないけど、マンションもある。
これがもっと異世界っぽいものだったら『異世界転移』って確信するんだけどな……。
日本のどこかとしか思えない。
転移したのが異世界じゃなくて、どっかの都道府県とか?
それだったら嫌だよ?
とりあえず、あの街に行ってみるか。
ここがどこかもわからないし。
そう思って歩こうとした――
――? あれ? 気のせいかな?
後ろになんかすごい気配感じたんだけど。
ヤバい気しかしないけど、振り向いてみるか。
それで振り向くと、ヤバいやつがいた。
めちゃくちゃ大きいナマケモノみたいなやつ。
俺の3倍くらい高い。
その口は血で汚れてた。
……ちょっ、急展開すぎませんかね?
そのナマケモノ――化け物は大きく口を開ける。
……って、俺のこと食べようとしてる!?
ヤバい、逃げなきゃじゃん!
そう思うけど、脚が動かない。
多分、ものすごい恐怖してるんだと思う。
どうしよう、喰われる――!
「――させるか!」
どこからか女の声がする。
それと同時に、俺の頭上をなにかが通り過ぎた。
それは化け物の頭に刺さって、化け物はそこから血を流しながら怯む。
それはナイフだった。
「まだまだ!」
また声がする。
すると、誰かがまた俺の頭上を過ぎる。
15歳くらいの女子……?
その女子は背中に鞘を掛けていて、手には刀を握っている。
女子はそれで化け物の頭を刺した。
「大丈夫です、こちらへ」
後ろから、今度は違う女の声がする。
振り向くと、背中に鞘を掛けた女子がいた。
この人も15歳くらいかな……?
背中の鞘には刀があるみたいだし。
その女子は俺の手を掴んで走り出した。
……久しぶりに触ったな、女子と。
「心配いりません。私たちは『ゴセツジン』ですから」
……は?
今なんて言った?
日本語には聞こえないようなものが聞こえたんですが?
「とりあえず、安全な場所までお連れします」
あ、それはどうも。
……じゃないよ!
そもそもここどこ!?
「ちょっ、ここどこですか!?」
「『スイルシ』ですが?」
「いやどこだよ!」
俺の大声ツッコミに、女は急に止まる。
そして目を大きくして俺を見ている。
「あなた……まさか、向こうの世界から来たんですか……?」
「え、あ、多分……」
「……そう……ですか……」
いまにも泣きそうな表情になって、女は下を見る。
……俺のせい……じゃないよね?
「……わかりました、目的地を変えます。ここから3キロほど――」
女が喋ってる途中、言葉を止めた。
俺の後ろを見て驚いてるみたいだ。
俺は嫌な予感がして振り向く。
すると、さっきのナマケモノの化け物がいた。
ところどころに血が付着している。
「危ない!」
女が俺を押し飛ばす。
それと同時にナマケモノは口を大きく開けて女をその中に入れた。
地面に叩きつけられながらそれを見てると、ナマケモノの首が動いた。
間違いない、あの女を丸呑みした。
ここになってようやく恐怖が湧いた。
今すぐここから逃げなきゃいけないのに、脚が動かない。
吐き気がしてきた。
ナマケモノは俺に顔を向けた。
さっきの女二人は喰われた、そうに違いない。
ナマケモノは口を開ける。
次は俺が喰われる――。
「――させないよ」
目の前から女の子の声がする。
気がつくと、目の前に10歳くらいの女の子がいた。
背中に鞘が掛かってて、刀は握ってる。
女の子は一瞬で刀を振り上げ、ナマケモノの首を斬る。
そこから血を流して怯むナマケモノだけど、女の子はさらに首に斬撃を入れた。
ナマケモノは首から血を流しながら倒れた。
もう動く気配はない。
女の子は振り向いて、満面の笑みを浮かべて俺に言った。
「ようこそ、新人さん」
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