80. バイバイ、王都。また来るよ
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ベアにまた会いに来ることを約束してお城を後にしたその翌日。
ソフィと話し合った結果、今日、王都を出発することとなっていた。
「じゃあ昨日も言ったけど、私はちょっとやることがあるから。お昼食べたら出発ってことでいいよね?」
宿屋で朝食を食べながらソフィに確認する。
「やることって冒険者ギルドに行ったりでしょう?」
「うん」
「なら、時間もあるし私も付き合うわ」
「そう? 分かった。ありがと」
「それに運が良ければ、護衛依頼とかあるかもしれないし。ま、さすがにそんな都合よくはいかないでしょうけど」
「うん? 護衛? なんで?」
ソフィは何を言っているんだろ。
王都でやるべきことはもう終わったんだよ。今更依頼なんか受けるわけないよ。
「王都に来たときみたいに、ガザアラスまでの護衛依頼でも受けられれば、馬も馬車も用意する必要がなくなるでしょう?」
「……あー、なるほど? えっと……いや、ソフィ。帰りに馬は使わないよ」
「え?」
「ネロに乗って帰るから」
「……え?」
テーブルの上で丸くなって目を瞑っていたネロが自分の名前に反応したのか、私の方に顔を向ける。
そう、私はネロと出会うまで王都からの帰り道をどうするかはずっと悩んでいた。
常識的に考えられる方法は馬車だけど……一週間だよ? この世界の人たちは慣れているかもしれないけど、二日で走破できる私にとっては長すぎるよ。
もうソフィに頼み込んで、ソフィを抱えさせてもらって走って帰ろうかな、とも思っていたほどだ。
でも、ネロがいれば全部解決。
ドラゴンとしては身体は小さいけど、それでも私とソフィの二人なら余裕で乗れるからね。
と、思って、帰りに関しては安心しきってたけど、ソフィに言ってなかったっけ?
……ソフィのこの反応は言ってなかったってことだろうな。
「多分、今日の午後出発しても、明日にはガザアラスに着くよ。ネロがもとの大きさに戻れば、二人くらい乗れるから。大丈夫だよね、ネロ?」
くるるー。
ネロは元気に返事をしてくれる。
そんなネロの頭を撫でていると、ソフィがため息をつくのが聞こえた。
「……はぁ。なんかもう驚きを通り越して呆れるわ……。そういえば、本来の大きさじゃないって言ってたわね。ドラゴンに乗って飛ぶなんて怖いのだけど……。これも慣れていかないとなんでしょうね……」
なにやら諦めが混じった声で呟いている。
なんにしても納得してくれたようでなによりだよ。
宿屋を出て、最初に向かった冒険者ギルドは、冒険者でごった返していた。
ドラゴンの出現と消失の混乱がまだ収まっていないようで、あちこちでドラゴンについての会話が漏れ聞こえてきた。
この時間でこんなに混雑しているとは思ってなかったけど、なんとか受付までたどり着いてギルドマスターに取り次いでもらう。
すぐに対応してくれたケルトさんには、二日前、話の途中でギルドを飛び出してそれっきりだったことを謝った。ただ、今まで何をしていたかは詳しく話せない。公式には、王様が対処したことで、ドラゴンは去ったことになっているからだ。
でも、ケルトさんは何かを疑っているらしく、深くは聞きませんが一つだけ、と言ったあと、リコさんはドラゴンに会ったことはあるか、と聞いてきたので、それは肯定しておいた。
本当にそれ以上は追求されなかったけど、ケルトさんは納得したような表情をしていたよ。
そして、話の流れでこれからガザアラスに戻ることを教えると、改めてガザアラスの冒険者ギルドまでの手紙の配達を頼まれた。これはもののついでなので、快く引き受けることにしたよ。
その後、商業ギルドに寄ってネロに乗るときのために鞍を買ってみた。
ドラゴン用なんてのはなかったので馬用だけど、サイズ的にはちょうどいいと思う。
私はどうとでもなるんだけど、長時間だとソフィにはつらいかもしれないからね。
ついでに、ソフィに防寒着のようなものを持っているか聞いたところ、ローブに魔法がかかっていて温度を調節できるのだそうだ。……そのローブ、そんな便利なものだったの?
高高度の飛行はかなり寒いと思って聞いてみたけど大丈夫そうだね。
そして、これが王都での最後の用事だ。
王都初日に連れてきてもらった魔法屋さんに到着した。
……正直、もうこのお店には来ることはないと思っていたよ。私には魔法グッズは必要ないしね。
でも、今回は正真正銘、私の用事で来ている。
今回もカウンターのお姉さんに店主を呼んでもらう。
ソフィが店主のことを名前で呼んだのを聞いて思い出した。そうだ、ゲーレンさんだったね。
「お? 嬢ちゃんか。この前来たばっかじゃねえか。今日はどうした?」
「こんにちは。今日は私じゃなくて、この子の用事で来たんですよ」
「そっちの小さい嬢ちゃんの? なんだ?」
「ちょっと相談したいことがあるんですけど」
私は『収納箱』から歪な形の小さな赤い宝石を取り出してゲーレンさんに見せる。
これは結界石の欠片だ。
昨日の別れ際、王様に許可をもらって一欠片だけもらってきたんだよ。
「この石を使ってペンダント?みたいなアクセサリーを作ることってできる?」
「うん? きれいな石だが……魔力水晶じゃねえよな? 魔法媒体にも見えねえんだが」
「あー、うん。違うかもしれないけど。できない?」
もとが結界石だから、魔力を通さないってことはないと思うんだけど。
でも、魔法媒体についてはどんなものか詳しくないから黙っておく。
それに、今回のお願いについては魔法媒体かどうかはどっちでもいいしね。
「ま、できないことはないけどよ。普通の石なら持っていく店を間違えてないか?」
「ええと、ごめんなさい。このお店に飾ってあったアクセサリーがどれもすごくきれいだったから、ゲーレンさんに作ってもらいたいなと思って」
それに、他にどこに持っていけばいいのか分からなかったし。
「お? ……おお! そうかそうか、分かるか! ははは、嬢ちゃんは見る目があるな! そうだな、そこまで言われちゃあ断るわけにはいかねえな」
「いいの?」
「任せておけ。とびっきりのを作ってやるからよ」
ゲーレンさんは上機嫌で頷く。
よかった。
展示品を褒めたのが正解だったみたいだ。
もちろん、本当に思ったことを言っただけだけど。
私には装飾品なんておしゃれなものには遠く縁がないけど、きれいだと思う感性くらいはあるよ。
この店で売っているのは全部ゲーレンさんが作ったのかな?
仕上がりは早くても何日かはかかるということだったので、支払いだけは済ませておいて、また王都に来た時に受け取ることにした。
ネロがいれば王都の行き来もそこまでの手間ではなさそうだし、それに、出来上がったものを渡す相手は常に王都にいるから何も問題はないね。
「リコがアクセサリーに興味があったのは意外だったわねー。結界石の欠片なんて、昨日もらってきてたの?」
魔法店から出たところで、ソフィが本当に意外そうな顔で呟く。
……私だって一応女の子だよ、失礼じゃない? と、思うところはあるものの、実際のところは、意外もなにも、当然アクセサリーに興味なんてあるわけないから、なにも言い返せない。
「私のじゃないよ。ベアにあげようと思って」
「あら、そうなの?」
「うん。昨日話してた時、砕けた結界石の欠片を大切そうにしてたから。まぁ本当はどう思ってるかなんて分からないから、喜んでくれるかも分からないけど」
「喜ぶに決まっているでしょう? ……へー、リコ、嫌がってたわりにちゃんとお姉様してるじゃない」
「別にこれはお姉様とかは関係ないけどね」
ベアが結界石を握りしめている様子が、なんとなく寂しそうに見えて、たまたまふと思いついただけだ。
ベアにはこの結界石に強い思い入れがあるんじゃないかな。
「まぁ王女様なら高価な装飾品なんていくらでも持ってるだろうし、いらなかったら捨ててくれればいいよ。小さいものだから処分にも困らないでしょ」
別にソフィに言ったつもりはなかったけど、考えてたことが口から漏れてしまったみたいだ。
「……リコ? ゼ・ッ・タ・イ・に! ベア様にそんなこと言っちゃダメだからね。泣かせる気?」
「う、うん。分かったよ」
すごい剣幕で注意された。
こ、これは本当に言っちゃダメなやつなんだな。気をつけよう。
私の初めての王都観光はここまでだね。
王都に滞在したのは一週間そこそこかな? 短いようで長かったよ。
というか、私は観光で来ただけのつもりだったのに、色んなことがありすぎたよ。疲れたよ。
ガザアラスに戻ったら、しばらくはゆっくりしたいな。
——私、この旅のことは絶対に忘れないんだろうな。
イリーネ、グレームたち、ケルトさん、王様、色々な人と関わった。
ドラゴンの家族ができた。私をお姉様と慕う妹分?もできた。
私に初めて——友達ができた。
他人と関わることを放棄していた私には、まだ戸惑うことばかりだけど。
こんな異世界の歩き方も悪くない——
今はそう思ってるよ。
くぅ〜疲れましたwこれにて完結…ではありません!
しかし、先日の後書きにも記載しましたが、毎日投稿できるのは本日までとなります…。
作者としては続けたいのは山々なのですが、この先の原稿用紙が…まるで明るい未来を暗示するかのように真っ白のままキラキラと輝いているのです…。
そして、本日まで毎日投稿していたのも、作者が楽しくてやっていることとはいえ、若干無理をしていたようで、疲労がたまっているのも事実です…。
ということで、二週間ほどはお休みさせてもらおうかと考えております。
その後は週一くらいで更新できたら…と思っておりますが、それも今はお約束できません。もしかしたら不定期更新になるかも…。
そのあたりの進捗状況や更新予告、それから作品の裏話的なものも、今後はXにてポストしていくつもりです。
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今までまともに働いていなかったX君に、ようやく仕事をしてもらうときがきました…!
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作者に元気を与えてやっていただけると嬉しいです…!
よろしくお願いします!
さて、名残惜しいですが、このまま続けて後書きが本編よりも長くなるわけにはいきませんので、この辺りで一旦お別れとさせていただきます!
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!
またお会いできたら嬉しいです…!!
作者X → https://x.com/doubloom0415




