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79. 嬉しい涙みたいでよかったよ

 

 さて、私の知っていることは全て話したし、私がいない間の王都の状況も説明してもらった。


 こんなところじゃないかな?


 思えばかなりの時間ここにいる気がする。

 長時間王様たちの相手をするのは肩がこるよ。


「ふむ、もういい時間だな。俺は今後の調整がまだあるが、リコからの話はこのくらいでいいだろう」


 王様も切り上げどきと思ったみたいだね。


 よかったよかった。

 じゃあ早く帰ってベッドにダイブだね。


 ……え? もちろん寝るよ?

 夕方まで寝てたのにって、そんなの関係ないよ。

 夜は寝るものなんだよ。


「では、最後に——」


 ……話、終わってなかったの?

 ええ、まだなにかあるの?


「褒美は思いのままだ。なんでも言ってくれ」


「え?」


 褒美?

 なんでも?


 ……そんなこと、いきなり言われても。


 予想外過ぎる王様の言葉にすぐに反応できなかった。


 というか、誰かのために何かをしたつもりはないから、褒美がもらえるなんて全然考えていなかったよ。

 私は、なぜか自分がドラゴンから狙われてたから、単純にそれを解決するために行動してただけだからね。百パーセント自分だけのためだ。


 いや、そう考えると王様からの褒美って受け取っちゃダメじゃない?


 褒美って、言わば報酬でしょ?

 報酬は仕事に対して支払われるものだよね。

 国に所属する騎士とかなら問題ないよ。当然の仕事に当然の報酬だ。

 日本でも古来より続く、ご恩と奉公とかだ。


 だけど、私は?

 別にこの国のために仕事をしたわけじゃない。

 王様から仕事を受けたわけでも、そもそも王様の配下どころかこの国の国民でもない。


 それなのに、もし結果的にドラゴンから国を守ったことについて私が褒美を受け取ったら、褒美を用意すれば仕事を頼んでもいいと思われかねないのでは?

 実質的に雇用関係が生まれるのでは?


 絶対に嫌だ。

 私は自分の思うように、自由に生きたいんだよ。


 そもそも、まず第一に、王様からの褒美って時点で嫌な予感しかしないよ。

 お金ならまだいいよ?

 土地とか爵位とか婚約者とか言われたら最悪だよ。

 そういうのどっかの物語でみたことあるよ。

 全部私の自由を奪うものじゃん。


 と、ここまで考えて、褒美は受け取らない方向で話を進めることに決める。


「ええと、ちなみに何に対しての褒美なんですか?」


「ん? さきほども言ったが、国を守ってくれたことと、ベアを助けてくれたことについてだ」


「それでしたら、その褒美は受け取るわけにはいかないです。私はこの国の人間ではありません。今回は私の個人的な事情で動いたことでたまたまこの国にとっていい結果になったみたいけど、状況が違えばその限りではありません。例えば竜の郷にこの国が手を出したら、私はこの国の敵になると思います」


「おい、出さぬと言っただろう」


「例えばの話です。つまり、今後もこの国を第一に考えて動くことはないと思いますので、王様からの褒美は受け取れません」


「むむむ……?」


 私に何か仕事をさせようとしてもダメだよ、あなたの配下になるつもりはないよ、と暗に伝えたつもりなんだけど。

 うまく説明できた気がしないよ。


 王様も難しい顔で唸っている。


「陛下。つまりリコは、陛下のもとで働く気はないと言いたいんだと思いますよ。陛下から褒美を受け取ることは、陛下の部下となることだとでも思っているのではないでしょうか」


 なぜ分かった!?


 助かったけど、逆に驚きだよ。

 私がそこまで直接的には言えないなと思っていたことをドンピシャで言い当てたし。

 ちょっとソフィが怖いよ。


「む? そんなつもりはないぞ?」


「では、褒美とは具体的に何を想定していらっしゃいましたか?」


「ふむ、これだけの功績だ。爵位くらいは、と考えていた」


 予感的中!

 すごくいらない!


「陛下、それはリコをこの国に縛るものではないですか」


「ああ、なるほどな。いや、本当にそういうつもりではなかったが……癖のようなものかもしれないな。優秀な人間は手元に置きたくなるからな。すまなかった」


「いいえ」


「私はリコお姉様が爵位を持たれるのには賛成なのですけれど」


 王様は私に対して軽く謝ってくる。

 そして王女様は余計なことを言っている。


 ……絶対やめてね?

 爵位をもらうということは、私が貴族に? しかも、ご当主様? 煌びやかなドレスに身を包んで、夜な夜な社交界に出席?


 ……うへぇー。


 なんとか先手を打ててよかったよ。

 ソフィもナイスフォローだよ。

 これで無理やり押し付けられたりはしなさそうだね。


 まぁ褒美にほしいものもないし、今回に限ってはもらわない方がお得だよ。

 王族との貸し借り関係なんてめんどくさい。そういうのは無いに越したことはないよ。


「でもリコ、ベア様を助けたのは事実なんでしょう? それは国とか関係ないのだし、なにか受け取るのもいいんじゃない?」


「おお、そうだぞ!」


 ソフィの言葉に王様は強く同意し、王女様は顔を輝かせる。


 ……くっ、そっちがあったか。


 というか、私のことを助けてくれつつ王様の心情にも配慮とか、ソフィは立ち回りが上手いというかなんというか。

 これがコミュ強ってやつだね。


 でも、こっちにも対抗手段がないわけではないよ。


「いや、ベア様を助け——」


「リコお姉様、ベア、と呼んでいただけると——」


「……王女様を助けたのだって、褒美をもらうようなことじゃないよ。だって友達が困ってたら助けるのは当たり前でしょ? まぁ強いて言えば、今の王女様の元気な姿こそが、助けた対価になるかな」


 つい最近まで、二度の人生、友達歴ゼロ人の私が言い放ってやった。


 友達が困っていたら助けるのは当然——なの? 実践経験皆無だよ。

 でも、よく聞くようなセリフだし、間違ってはいないんじゃないかな。

 実際、私も、もしもソフィが困っていたら、絶対に助けてあげたいって思うし。

 まぁそもそも、私と王女様が友達なのかって問題もあるけど。そこは、王女様がいつか私のことを友人だと言っていたのに便乗させてもらったよ。


 ……途中で王女様に口を挟まれたような……?


 ちょっと無理なことを言われた気がしたからスルーしちゃったけど……。


 恐る恐る王女様の顔色を伺う。


 ——と、そこには涙を浮かべる王女様が。


 え!? 私そんなに悪いことした!?


 ……あれ? いや、これは悲しんでるわけではないっぽい??


 軽く動揺しつつ、今度は王様の方を見ると、何かを噛みしめるようにゆっくり深く頷いている。


 ……まさか、私の言葉を噛みしめているわけではないよね?


「ま、リコらしい言い分ね」


 ソフィもなにやら納得した様子なんだけど?

 ……ソフィ、あなた、とんでもなく鋭いときと鈍いときの差が激しすぎるよ。


「だが、お前がベアを友人として助けたというなら、俺も娘を救ってもらったただの親として、娘の友人であるお前に礼がしたい。それもダメか? 無論お前を縛り付けるようなことはせん」


「え? えー、ええと、はい……。そこまで言うなら……」


「おお、そうか! なんでも言ってくれ」


 あ、雰囲気に飲まれて思わず頷いちゃった。

 あああ、王様、なんか期待した目でこっち見てるよ。

 ホントに何もいらないんだけどな。どうしよ。


 んー、爵位、は論外として。

 お金……? なぜか、いつの間にか感動シーンになってるっぽいこの場面で、お金ください? 言えるか!


 と、さっき王女様が口を挟んできたことを思い出す。


『リコお姉様、ベア、と呼んでいただけると——』


 ……もうこれでいっか。


「それでは、一つお願いがあります。私はこの国に来てからまだ少ししか経っていないので、自分でも分かるけど、礼儀がなっていないと思います。ですので、王様やベア様に不敬を働くことがあると思うけど、それについてお目こぼしをしてもらえませんか?」


「ん? それは全く構わんが。そんなのが礼になるのか?」


 王様は不思議そうな顔をしているけど、これは万が一、今後も王族と付き合うことになるとしたらかなり重要だよ。

 この国に不敬罪があるのかは知らないけど、それを見逃してもらえるようになるんだからお礼、褒美としては十分すぎると思う。


 そもそも、王様たちとなるべく関わりたくなかったのは、王族との付き合いは繊細な気遣いをしないといけないから疲れるからなんだよ。……え? 繊細な気遣いしてたよ? 私なりに。

 だからこれが通れば、過剰に関わりを避ける必要はなくなるかな。


 それに王女様にも、王様公認で、イリーネ相手と同じくらいの気安さで接することができるようになる。まぁそれが王女様が望んでいるお姉様としての対応かはさておいて。だいたい、私にお姉様なんて初めから無理な話だからね。


 ……というか、万が一とか言ったけど、ソフィが王族と仲がよいことといい、王女様が私のことをお姉様と呼ぶことといい、もう今後もなにかと付き合いがある気しかしないんだよ。


 じゃあ、一応了解はとったので試してみようかな。


「……こんな感じでも怒らない?」


「怒らぬわ。いや、むしろお前はその方が自然な感じがするな。今後はそのように接するがよい」


「それはしませんけど」


「そうか? ああ、一応、公の場では敬語くらいは使ってくれ。部下には聞き分けのないやつもいるからな。身内だけのときはどんな態度でも構わん」


 それはそうだよね。

 王様のことを尊敬している人が聞いたら、王様が許しても怒っちゃう人もいると思う。

 まぁいくら許しがあるとはいえ、王様相手にそんな無闇に気さくに話そうとも思っていないから問題ない。


 王様に頷いてから、王女様に視線を移す。


 一つ息をついてから、潤んだ目を私にまっすぐ向ける王女様に声をかける。


「私がお姉様にふさわしいとはやっぱり思えないけど。とにかく、これからよろしくね、ベア」


「……はい! リコお姉様!」


 満面の笑みを浮かべたベアが大きな声で返事をして、その目から涙が散った——。



リコ「王都ドラゴン編も終わりかー。王都とかドラゴンの話が出てきたのが31話からだから、50話近くやってたんだね。……そりゃ長く感じるわけだよ」

ソフィア「お疲れ様。大活躍だったじゃない」

リコ「そう? 自分勝手に行動してた気しかしないんだけど」

ソフィア「ふふっ。リコはそのままでいいと思うわ。それじゃ、次話で王都でやり残したことを片付けて、ガザアラスに帰るわよ」

ベア「ええ!? もう帰ってしまわれるのですか!?」

リコ「うわぁ! ……びっくりした。ベア、いきなりどうしたの? というか、ベアもここ登場できるのか……」

ベア「どうされましたか、リコお姉様? と、それよりも、リコお姉様が王都を発ってしまうのでしたら、次の私の出番はいつになってしまうのでしょうか……」

リコ「……」

ソフィア「……」

ベア「……うぅ」

リコ「……だ、大丈夫だよ。またすぐ来るよ。……多分」

ソフィア「……そ、そうですよ。ベア様、元気出してください。すぐですよ。……きっと」

ベア「……うぅ、悲しいですわ」


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― 新着の感想 ―
リコ、警戒心が強い笑 バトルは長引かないしあちこち移動してるから退屈しないし長い気はしませんでしたけど 確かにドラゴンの話が出てから数えるとここまで作品の半分以上かかってるんですね
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