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66. ドラゴン社会はブラック?


「ちょっと待ったぁああああ!!」


 思わず叫んでしまった。


 でも待って待って。

 今、このドラゴンに乗ってこいって言ったよね?



 それはヤバいでしょ!



 いや、ドラゴンに乗ること自体は構わないよ。空を飛ぶなんて初めてだし、むしろちょっとわくわくする。

 それはいい。

 それに、場所を説明されて一人で向かうよりも案内がいた方が便利だと思う。

 それもいい。

 というか、日が変わる前には着くって言ってたのはドラゴンの飛ぶスピード換算だったのね。……それって、かなり遠くない?

 まぁそれもいいよ。

 あと、ついさっきまで本気で戦っていた敵に乗って行くってところは多少引っかかるけど。

 竜帝がこのドラゴンにちゃんと説明してくれるなら、それもよしとするよ。


 じゃあなにがヤバいって。


 ドラゴンについて全然詳しくない私の目から見ても、その子、ボロボロなんですけど!

 特に翼あたりを中心に!


 やったの私だけど!!


 その旨を伝えると、


『何も問題はない。傷は負っているが、飛ぶことはできるであろう』


 ……頑張ればいけるとでもいうようなニュアンスに聞こえるんだけど。

 ブラック企業じゃないんだからさ。


 というか、頑張ればなんとか飛べはするよ、みたいなのに乗りたくないよ。普通に怖い。


「私、治癒魔法使えるんだけど。ちょっとでも安全に飛んでもらいたいから治してもいい? ドラゴン相手は初めてだからできるか分からないけど」


『そうしたいならするがいい』


「うん。どこが一番痛むの?」


『翼の骨が折れている』


 おいいぃ!

 それ絶対大丈夫じゃないよね!? それで本当に飛べるの!?


 治療の話を持ち出して本当によかったよ。

 でも、骨折は治せるのかな?


「じゃあやってみるから。私が届くところまで翼を下ろして」


 伏せをするように腹ばいになってくれる。


 竜帝に治すべきポイントを聞きつつ、重症そうな箇所から治していく。


 細胞を活性化させ骨を繋ぐイメージで光魔法を使うことで骨折も治すことができたようだ。竜帝のお墨付きだよ。


 一通り翼を治し終えたところで、もう十全に飛ぶことができると竜帝からの申告があった。

 んー、ブラックの上役だけに完全には信用できないけど、まぁ翼は復活したみたいだし、最悪の事態にはならないかな?


『驚いたぞ。そのように即座に完治する治癒魔法は見たことがない』


「……そうなの?」


 今更だけど、もはやこれは治癒どころか修復魔法とでもいうべきじゃない?

 ソフィが治癒魔法って言ってたから私もずっとそう言ってたけど。

 なんとなく治癒って、ゆっくりと傷口がふさがるとかそんなイメージなんだよね。まぁどっちでもいいけど。


『ああ。魔法が得意な種族、例えば、エルフ族ですらこのようなことは不可能だ』


「そうなんだ。エルフの知り合いはいないから分からないけど」


 エルフが魔法が得意なのはイメージ通りだ。

 もしあるなら、いずれエルフの里とかも行ってみたいね。


『何はともあれ、これならば更に速く飛べるだろう。では、用意はいいか?』


「ちょっと待って。アレは?」


『捨て置け。そのうち目を覚ます』


 未だに目を覚ます気配のないもう一体のドラゴンを指さすと、竜帝はなんとも心無いお言葉だ。

 やっぱりブラックだったか。


 この辺りがいくら人が来なさそうな場所だと言っても、万が一はある。

 あのドラゴンが起きないうちに人が通りかかったら大問題だよ。

 早く起きてどっかいってほしいんだけど。


 でも治癒魔法を使おうにも、外傷じゃないから治療のイメージがつかない。

 というか、顎に衝撃を与えて気絶してるってことは脳震盪とかでしょ? そんなの安静にする以外に手の施しようあるの?


 一応ドラゴンの頭に治療するように光魔法を使ってみるが、やっぱり目は覚まさない。

 これは動かすのは無理そうだね。


「周りに視界を遮るための壁作っていい?」


『好きにするがよい』


 せめて簡単に姿が見えないようにするため、四方に土魔法で壁をつくる。

 屋根はつけないから目が覚めたら飛んでいってね。


 あとはもう特に問題にならないように祈るだけだ。


「これでよし。じゃあ行こっか」


『それでは我は眷属に身体を返すとしよう。郷で待っているぞ』


「うん。それじゃまた」


 ドラゴンは一度瞳を閉じてからゆっくりとまた開く。

 そしてすぐに私のことを見据え、グルルと唸りながら平伏した。

 ちゃんと話は伝わっているみたいだね。


「じゃあ乗るけど。いい?」


 私のことを一瞥して、低く唸る。


 どうやら私の言葉には反応したみたいだけど、竜帝の意識が抜けたためか返事はない。しゃべれるのは竜帝だけなのかな。

 とりあえず唸り声を了解の意思表示と受け取り、ぴょんと背中に乗る。


 ……いや、これどうやって乗ってればいいの?


 背中は鱗で覆われているけど、思ったよりのっぺりとしてる。

 首は太すぎて到底腕を回せない。

 翼は掴んでいられそうだけど飛行の邪魔になるよね。

 唯一掴めそうなところといったら、背中側の首から尻尾にかけて生えているヒレみたいなのだけど、柔らかそうで千切れないか不安だ。


 でも、そんな私の悩みはドラゴンには伝わっていなかったようだ。


 まだ私が座ってすらいないのに、翼を大きく羽ばたかせ始めてしまった。

 とっさにうつ伏せになって鱗のちょっとした出っ張りを指先でなんとか掴む。いや、つまむが正しいね。

 そんな不安の残る体勢のまま一気に上空に飛び立った。


 ……しっかり指に力を込めていればなんとか振り落とされはしなさそうだけど。


 え? 私ずっとこの姿勢でいなきゃいけないの?

 到着って日付が変わるくらい夜遅いんだよね? 今まだ昼過ぎだよ。これなんてsas○ke?


 空を飛ぶなんて初めてのことなのに、感動どころか指先に神経を集中させるので手一杯だよ。

 これなら王都に来たときみたいに走り続けるほうが楽なんだけど。

 どうしてこうなった?


 いや、本当に今日起こった全てに言いたい。


 どうしてこうなった??


 そろそろ王都から帰るから、その支度をしていただけだったはずなのに。


 いつの間にかドラゴンたちの拠点に向かってるんだよ?



「やっぱり異世界は不思議に満ち溢れているんだなぁ」



 やけくそ気味に呟かずにはいられなかった。



リコ「十時間耐久型のクリフハ○ガー状態だよ——って、どんな鬼畜ステージなの! というか今の私なら、sas○ke完全攻略も楽勝だね」


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