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61. 同一人物かな……人じゃないけど


 ギルマス部屋まで歩く途中でグレームが話しかけてくる。

 

「それにしても、まさかアポなしでギルドマスターと面会できるとはな。どうなってるんだ? そんなに親しくなったのか?」


「そんなことないと思うけど。ちょうど暇だったんじゃない?」


 実際、あの時はソフィを待たせてたからすぐに切り上げて帰ったし。

 そこまでたくさん話したわけでもない。


「いや、それにしたって用件も告げずにいきなりは……」


 そういえば用件言ってなかったね。

 でも、本当にケルトさんがギルド職員にもドラゴンのことを隠してるなら、詳しく説明もできなかったよね。


 そして目的の部屋の前にたどり着く。

 中からの反応は一人だから、ケルトさんで間違いないね。


 ノックして声をかける。


「リコですけど」


「どうぞお入りください」


「失礼します」


 部屋の中に入ると執務机に向かっていたケルトさんがこちらに顔を向けた。


「リコさん。よくいらしてくれました」


「こんにちは」


 ぺこりと頭を下げる。


「こんにちは。では、そちらにおかけください……っと、そちらの方は……」


 私にソファに座るように促したところで、私の後ろにいたグレームに気がついたみたいだ。


「どうも。俺は——」


「グレームさんですね? お久しぶりです」


「……はい。ご無沙汰しています」


 ケルトさんはグレームのことを知っていたみたいだ。

 まぁグレームたちは一応王都を中心に活動してるって言ってたし、知っててもおかしくはないんだろうけど。

 でも王都は広いし冒険者だって多い。ケルトさんといい、マイデルさんといい、さすがギルドマスターだね。

 グレームも覚えられてるとは思ってなかったのか、すごく驚いてるし。


「どうぞ、お二人ともかけてください」


 私とグレームが隣り合ってソファに座る。

 ケルトさんも執務机から移動して私たちの対面に座った。


「えと、いきなりですみませんでした。ちょっと聞きたいことがあって」


「構いませんよ。いつでも来ていただいて構わないと言ったのは私の方ですから。では、ご用件を伺いましょうか。申し訳ないですが、私もそこまで時間はとれないもので」


 ケルトさんが私の方を見る。


 ん? 私が話せばいいのかな?

 チラッとグレームの方を見るが、グレームは黙ったままだ。


 私の名前でケルトさんに面会を求めたんだから、私が話すのが筋ってことかな。

 でも、私もまた聞きなんだけど。


「あの、昨日? またドラゴンが目撃されたって聞いたんですけど、本当ですか?」


「……その話をする前に伺いたいのですが。よろしいでしょうか、リコさん」


「はい?」


「リコさんから見て、グレームさんは信用に足る人物でしょうか」


「……はい?」


 ちょっと何言ってるのか分からないんだけど。

 ドラゴンの話と何の関係が?


 グレームの方を見ると、グレームも困惑の表情を浮かべている。そりゃそうだよ。


「おっと、言葉が足りず失礼いたしました。ドラゴンの話ですが、他言無用なものなのです。できればリコさんにはお話ししたいと思っていたのですが、グレームさんもいるところで話してもいいものかと思いまして」


 ああ、そういうことか。

 私とグレームの付き合いはほんの数日間だけだけど、その中でもグレームの善人っぷりと真面目さは見てきた。

 ギルマスが他言無用ということを無闇に言いふらしたりは絶対にしないと思う。

 それにソフィもグレームのことは信頼していた。私にはそれだけでも十分だし。


 それと、私には話したいと思ってたって言った……? どういうことだろ。


「じゃあ、俺は席を外してますよ」


 私が答える前に、グレームがそう言って腰を浮かせる。


 え、ここまで来て帰るの!?


「いやいやいやいや、ちょっと待ってよ。そもそもギルドにドラゴンのこと聞きにきたのはグレームの方じゃん。私だってグレームからまた聞きしただけだし」


「だがな——」


「ケルトさん、大丈夫です。信用に足ります、信用に足ります。特に、私の信用している人が信用しているので大丈夫です」


 ちょっと言葉がおかしくなりながらも訴えてみる。

 ケルトさんは微笑を浮かべていた。


「そのようですね。不躾な質問をしてしまい、申し訳ございませんでした。グレームさんもどうぞおかけください」


「は、はあ」


 グレームも改めて腰を下ろした。




「それではどこから話しましょうか。リコさんたちはどの程度まで把握されていますか?」


 まず、ケルトさんが口を開く。


「詳しくは全然知らないけど。昨日、ドラゴンが二体同時に目撃されたってことだけ、ついさっきグレームに聞いたところです」


「ああ、俺も知り合いにそれだけ聞いて、ギルドに確認に来たところだった」


 グレームも私の言葉に頷く。


「そうでしたか。いや、実はギルドが持っている情報もほとんどそれで全てなんですよ。強いて追加の情報を出すなら、赤いドラゴン二体だったとか、複数の冒険者が目撃したので信憑性は高そうだとか、そういった細かなことだけですね」


「複数の……信憑性は高い……そうですか」


 グレームは本当にドラゴンが近くにいる可能性が高いということで少し動揺したようだったけど、私は赤いドラゴンだったというところの方がひっかかった。

 そもそも私はドラゴンの存在自体は疑っていない。一回戦ってるしね。


 赤いドラゴンか。私が数日前に戦ったドラゴンも赤かった。

 ……もしかして同じドラゴン?


 元の世界での私の偏った知識によるとドラゴンの色は赤、青、緑、黄、黒あたりがメジャーどころで、それ以外にも多種多様だったと思う。

 ただ、この世界でもその通りかと言われると分からない。でも、図鑑にはドラゴンの色が赤だという記述はなかったはずだ。赤いドラゴンしかいないのなら、体表は赤い鱗で覆われているとか書かれていそうなものだけど。でも、未知のところが多いドラゴンのことだから、そもそも図鑑の内容が通用するかも分からないか。


 だけど、目撃されたドラゴンの色が分かったことで、私が戦ったのと同一個体である可能性が少しは上がったといえる。

 そして、同一個体ならヤツのとっている行動の意味、今後の動きを少しは推測することができる。


 ヤツはあのとき、明らかに私を狙って急降下して攻撃を仕掛けてきた。

 私が小突いたら多少のダメージは与えたようで逃げていったけど、まだ私が標的の可能性はある。

 傷を癒して、今度は仲間を連れて私との再戦を求めて探していると考えると筋は通る。

 と、すると——


「ケルトさん、今回ドラゴンが目撃されたのって王都とガザアラスを繋ぐ街道沿いじゃないですか?」


「? ええ、そうですね」


 やっぱりだ。前に私を襲った場所辺りを探しているんだ! ……と思う。

 ……いや、だって! ドラゴンの思考を正確に測るなんて無理だって!

 ただ、その可能性もあるって考えてた方が、とっさのときに正しい行動がとれるかもしれないでしょ?

 だけど、これで二体のドラゴンが現れたことに説明がついたとしても、そもそもの原因、なんで私がドラゴンに狙われているかは全く分からないよね。


「それにしても、これだけの情報をギルドは秘匿……か。ふむ、公開するにしてもしないにしてもデメリットはあるし、より被害が少ない方を選択するとなると……必要な処置なのかもしれないな」


 グレームがそんなことをつぶやいたのを、ケルトさんは耳ざとく聞きつけた。


「お? 分かっていただけますか、このどちらがマシかを選ぶしかない苦悩が。皆さんの為を思っての選択も、結局どちらを選んだって批判を受けることになるんですよ。ははは、めんどくさいですよね。いやはや、これを理解していただけるならグレームさんは意外とこちら、管理職向きかもしれませんよ? どうですか? 一緒に仕事をしてみませんか?」


 まさかのギルドマスターからの仕事勧誘である。

 でも、その勧誘の仕方でぜひやりたいです、って人はいないと思うよ。自分でめんどくさいとか言っちゃってるし。


 当然グレームもさらっとお断りしている。


「いえ、俺にはギルドマスター程の判断力も忍耐力もありませんよ。今ですら、たった二人のパーティメンバーと息を合わせるので手一杯なんですから」


「そうですか。残念です。ですが、気が向いたときはいつでもお声がけくださいね。優秀なギルド職員は常に募集しておりますから」


 ケルトさんがにっこりとグレームに微笑みかける。

 グレームも余裕の微笑みで受け流している。


 なんかこわいよ、この二人の笑顔。


 って、あれ? なんの話してたんだっけ?


「おっと、話が逸れていましたね。既にお分かりのことと思いますが、ギルドとして冒険者に今回の目撃情報は周知させておりません。理由はいくつかありますが、冒険者の無駄死にを出さないこと、ドラゴンが逆上したことによる王都の被害を出さないことが主なところです」


「でも、それだと万が一王都が襲われたときに素早く動けないんじゃ……?」


 これは私の疑問だ。

 知っておかなければ、いざというときに冒険者はすぐに戦う準備ができないと思う。


 それにグレームが当たり前というように回答する。


「いや、当然衛兵には情報共有しているだろう」


「?」


「そもそも王都が有事の際に動くのは国が管理する衛兵の仕事だろう?」


「……あー、そっか?」


 なるほど。言われてみれば、冒険者は報酬に応じて好きな依頼を受けて仕事をするものだ。戦えるからといって王都を守る理由も義理もない。そもそも王都を拠点としていない冒険者だってごまんといる。

 ではもし王都が魔物に襲われたときは誰が戦うのか。それがグレームの言っている衛兵ってことだね。


「グレームさんのおっしゃる通りです。今回の件については国王様ひいては衛兵団と一部信頼のおける冒険者への周知にとどめています。もちろん、今後の動向によってはギルドから緊急依頼として一定ランク以上の冒険者に協力を求める場合もありますが、現時点ではその予定はないと言ったところです」


 ああ、もしものときはギルドから冒険者への緊急依頼で衛兵に協力させることもできるようになってるんだ。

 たしか緊急依頼は基本的に断れないって言ってたし、協力要請とはいうものの実際は命令だよね。


「なるほど。現状は理解できました。特になにかできるわけではないと思うが、リコのついでとはいえこの話を聞いた以上、気づいたことがあれば報告させてもらいますよ」


「ありがとうございます。とても心強いです」


 これで話は終わりみたいだね。



リコ「グレーム、すごいね。ギルマスから直々にヘッドハントされてたじゃん」

グレーム「いや、使い潰す気満々だぞ、あの笑みは。俺はあんなに恐ろしい笑顔をする奴にはついていけん」

リコ「……グレームの笑顔もこわかったんだけど」

グレーム「ん? なにか言ったか?」

リコ「……なんでもないよ」


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