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57. あり得ないわ(ソフィア視点)


 今回から数話、少し時間を遡ってのソフィア視点となります。

 イリーネの護衛依頼を受けて、ガザアラスを出発するところからです。

 どうぞお楽しみください!


 

 私は今、冒険者ギルドに向かっている。


 ガザアラスの領主、セルジ様に頼まれて依頼を受けることとなった。

 イリーネを王都まで連れて行くという護衛依頼。

 そのパーティメンバーをギルドで探すつもりだ。


 この依頼を受けること自体は恒例のことだから当然なのだけれど。

 パーティメンバーを集めるのが手間なのよね。

 しかも、この前パーティを組んだメンバーが最低の冒険者たちだったから、今は顔見知り以外に声をかけるのはどうしてもためらってしまう。

 今回の依頼は一週間ほどもかかるから余計にね。


 はぁ……ギルドに知り合いでちょうどいい人いないかしらね。


 なんて考えてると、ふと、最近一番よく話す女の子の顔が思い浮かぶ。


 ……いやいや、リコは護衛依頼なんて絶対に受けないでしょう。あの子、めんどくさがりだから。




 そしてギルドに着いたんだけれど。


 結果として、パーティメンバーにふさわしい人が見つかるか、という心配は全くの杞憂に終わったわ。

 ギルド内のおしゃべりが大好きな暇な冒険者たちのコーナーに、なんとグレームのパーティがいたからね。

 タイミングがよすぎるわ。


 グレームたちも二つ返事で同行を申し出てくれた。


 翌日に出発することになり、いったん解散とする。


 いや、本当に運がよかったわね。




 翌朝、朝食中に、リコに王都に行く旨を伝える。


 リコは王都には少しは興味がありそうだったけど、特に大した反応は見せずに私を見送ってくれるようだった。


 リコが一緒に行きたいって言ったら、連れて行こうと思っていたけれど。

 ま、リコはそんなこと言わないわね。


 リコも一緒に行くなら楽しい旅になりそうだと、少しだけ期待していたのだけど。


 とりあえず、私がいない間にどこかに消えないようにだけは強く念押ししておいた。


 リコはフラフラとどこかへ行っちゃいそうだから。

 いつか別れがあるのは仕方のないことかもしれないけど、それならそれでちゃんとお別れしたいわ。






 この護衛依頼は難しい依頼というわけではない。

 王都までの約一週間、たまに出る魔物に警戒しつつ進めばいいだけだから。


 それに、私の場合は特に、イリーネのお世話をするという役割になっていて、馬車の操縦も、馬車での監視も、夜間の見張りも免除されているから本当にお手軽だ。


 もちろん、私がそれらをやりたくないわけではないわよ。

 グレームたちに、頼むから常にイリーネの側にいてやってくれと強く言われているためね。


 確かに、私が御者台にいて、馬車の中に男三人とイリーネという状況はイリーネにとっても、グレームたちにとっても気まずいだろう。


 だから、グレームたちばかり働かせているようで申し訳ないけれど、私はイリーネと一緒にのんびりさせてもらっているわ。




 そして、ガザアラスを出発して四日目。


 この旅の半ばも過ぎた頃に、のんびりムードから一気に展開が変わることになった。



 最初は小さな異変だったわ。



 その日も朝に出発してからしばらくは平和だったのだけど。

 お昼まで数刻というところで、御者台のダルが叫んだ。


「前方に魔物だ!」


「——ダル、止めろ!」


 ダルが馬車を止めたと同時に、グレームとアントン、そして私が馬車から降りる。


 前方に目を凝らすと——


「あれは——ドスホーンモウ?」


「……みたいだな」


「マジかよ! ラッキーだな!」


「ダル、落ち着いてください」


 ダルが喜ぶのも分からないではないわね。


 確かにドスホーンモウは、単独で相手をするのは骨が折れるけれど、パーティで対応できる今なら楽に倒せる。

 しかも、レオの肉とは比べ物にならないくらい美味なため、高値で買い取ってくれる。二重の意味で美味しい相手ね。


「じゃあ、俺たちで狩ってくるから、ソフィアはここで待機していてくれ」


「分かったわ」


「よし、行くぞ。ダルは正面、アントンは周囲警戒とバックアップ。俺は回り込んでとどめをさす」


「おう」


「了解」


 相変わらず私のやることがないけれど、彼らなら心配なさそうね。


 人間の接近に気がついた、ドスホーンモウがこちらの狙い通りダルに向かって突進する。


 それをダルが大型の剣で迎え撃つ。


 剣とドスホーンモウの角が何度か弾かれ合った後、鍔迫り合いのような膠着状態となる。

 そこを——


 いつの間にか背後に回り込んでいたグレームが、渾身の力で剣をドスホーンモウの首に振り下ろした。



 ズパンッ!! ドサッ



 きれいに首が落ちて、身体も横倒しになる。

 見事なものね。


 グレームとダルがハイタッチでお互いをたたえる。



 そこで——アントンが叫んだ。



「——待ってください! もう一体来ます!!」


「なにっ!?」



 え? もう一体?


 よく目を凝らすと、さらに前方で土煙があがっているのが確認できた。


 ——ドスホーンモウ、二体目!?



「ダル!」


「おう!」



 グレームとダルが阿吽の呼吸で素早く離れ、体勢を整える。


 突進してきた二体目のドスホーンモウは、今度はグレームに狙いをつけたみたいね。


 そこからは一体目と同じ展開となった。

 グレームが突進をいなした隙に、ダルが首を落とす。


 さすが、Cランクパーティだわ。

 ドスホーンモウ一体ずつならなんてことないわね。


 ただ、一体ずつだったとはいえ、ドスホーンモウと連戦なんて……。



「ソフィア、ちょっと来てくれ!」



 私が違和感に思いを巡らせていると、グレームの呼ぶ声が聞こえた。


 馬車の中のイリーネに一言断ってから、グレームたちのもとへと向かう。


「悪い、ソフィア、このドスホーンモウ一体、『収納箱』にしまえないか?」


「すみません。僕では二体収納することができませんでした」


 どうやら獲物の収納係として呼ばれたらしいわね。


「いいわよ。王都に着いたら返すわね」


「いや、お前の取り分でいいぞ?」


「どうしてよ。あなたたちが狩った獲物でしょう」


「馬車を守ってもらうために、俺たちがお前を戦闘に参加させなかっただけだ。参加していたら、お前ならドスホーンモウを狩るくらい軽いもんだろう」


 ……ホントに生真面目というか、お人好しなんだから。


 グレームに関しては、ここで遠慮しあっていても話が進まないのは過去の経験から学んでいるので、素直に受け取っておくことにする。


「はぁ、分かったわ。もらっておくわね」


「ああ。……それにしても、少しおかしくないか?」


 グレームが不思議そうな顔をして疑問を呈する。


「なにがだよ?」


 ダルがそれに反応する。

 ダルはピンときていないようだけれど、私も疑問に思っていることがある。



「「ドスホーンモウと連戦はおかしい(わ)」」



 私とグレームの声が被った。


「ああ、ソフィアもそう思っていたか。ダル、ドスホーンモウは同種同士の縄張り意識が高くて、単独行動するはずの魔物だろう? それが、連戦になったってことはかなり近くにいたってことだ。そんなことあり得るのか?」


 私が感じていたことをグレームがまとめてくれた。


「たしかにそうですね。一緒にいたわけではないとはいえ、これは異常と言えるかもしれません」


 アントンも同意する。


「そんなこともあるんじゃねぇのか? ま、なんにしろ美味かったじゃねぇか。今回はそれでよしとしておこうぜ」


 ダルは楽観的な発言をする。


 ……ただ、ダルの言うことももっともね。

 考えても分からなさそうだし、美味しい魔物が二体も狩れて幸運だったと思っておきましょう。


「……そうだな。少しは警戒した方がいいだろうが、とりあえずは先を進むか」


 グレームがそう締めて、私たちは馬車へと戻っていくことにした。


 ……本当にこれだけの異変で終わってくれたらよかったんだけど。






「背後からドスホーンモウ! よ、四体の群れです!!」



 さきほどのドスホーンモウとの会敵から、再び馬車で進み始めてしばらく。

 監視をしていたアントンが焦ったように叫んだ。



「「「なっ!?」」」



 ド、ドスホーンモウの、群れ!? あ、あり得ない!!



 急いで私とグレームも馬車から身を乗り出して後方を確認する。



 まだ遠いけど、たしかにドスホーンモウらしき魔物が土煙をあげて走っているわ。数は四。

 ……そして、明らかにこの馬車を狙っているようね。



「——お、おい! グレーム! どうする!?」



 御者台のダルがグレームの指示を仰ぐ。


 グレームは口に手をやり一瞬だけ目を瞑って考えた後、すぐに大きな声をあげる。


「四体同時に相手をするのはキツい! どうにか振り切るぞ! ダル、なるべくとばせ!」


「おうよ!」



 グレームの判断は間違っていないと思う。

 私たち四人でドスホーンモウ四体を同時に相手するのは難しい。


 なによりイリーネを危険にさらしてしまうわ。

 絶対に勝てないとは思わないけれど、厳しい戦いになる以上、イリーネを守り切れない可能性がある。



 数秒して、ぐんと馬車のスピードが上がる。


 馬車は基本的に速い移動には適さないが、馬に無理をさせれば一時的にこのくらいの速度は出る。


 だけど、この速度でも——


「ちっ、このままでは追いつかれる、か」


 グレームが悔しそうに舌打ちする。


「でも、馬車は止められないわよ。近づいてきたら、私が魔法で牽制するわ」


「……すまないが、頼む。アントン、ソフィアのサポートをしてやってくれ! 俺は馬が暴れないようにダルを手伝ってくる」


「了解です!」


「そっちは頼んだわよ」


「ああ。キツそうだったら教えてくれ」


 そう言うと、グレームは御者台へと向かう。


 アントンと私は杖を構えていつでも魔法を撃てるように態勢を整える。


「アントンはとにかく馬車に近づけないように牽制してくれると助かるわ。私も牽制しつつ、倒せそうなやつがいたら『風の刃』で倒していくから」


「……そうですね。僕はそのくらいしか力になれなさそうです。数を減らすのはソフィアに任せます」


 アントンの得意な属性は土。

 水よりは戦闘向きの属性だけれど、Dランクのアントンだと、土魔法でドスホーンモウに致命傷を与えるのは難しいわね。


 ……そういえば、リコはほとんどの魔物を水魔法で倒しているらしいのよね。相変わらずめちゃくちゃというか、なんというか。


 それはともかく、私とアントン、二人で牽制しつつ、タイミングがあれば私が数を減らす。

 ……これでどうにかなってくれるといいけど。



 ——と、私の服の裾が後ろに引っ張られる。



「…ソフィお姉ちゃん…」



 振り返ると、怯えるようにイリーネが私の服をつまんでいた。


「大丈夫よ、イリーネ。あなたは私が守るから」


「…うん……ソフィお姉ちゃん…気をつけて…」


「ありがとう。イリーネは安心して座っていてね」


 イリーネはまだ不安そうな顔をしているものの、私の邪魔にならないように裾を離して席についてくれた。

 本当に賢い子ね、イリーネは。


 ……この子だけは私の命に代えても守るわ。





ソフィア「なにが起こっているのよ……。なんにしてもイリーネだけは守らないといけないわね」


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